問題講評【数学II・B】
1.総評
- 【2015年度センター試験の特徴】
-
微分法・積分法では2次関数が題材とされた。目新しい問題が多く、昨年より難化
第1問と第2問が必答で、第3問〜第5問から2問選択であった。第1問では2年間出題のなかった三角関数が出題された。第1問の三角関数、第2問の微分法・積分法、第3問の数列などで素材が目新しく、導入部分から難しい問題が多く出題されたこと、全体として計算量がやや増加したことより、昨年よりも難化した。
2.全体概況
【大問数・解答数】 | 大問数は5。第1問、第2問が必答で、第3問〜第5問から2問選択。第1問、第2問は数学II、旧数学II・Bと共通問題、第3問、第4問は旧数学II・Bと共通問題。 |
---|---|
【出題形式】 | 昨年から変更なし。 |
【出題分野】 | 昨年通り、数学IIの分野が60点分、数学Bの分野が40点分の出題。第1問では2年間出題のなかった三角関数が出題された。 |
【問題量】 | 昨年並。 |
【難易】 | 昨年より難化。 |
3.大問構成
第1問 | |||
---|---|---|---|
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
三角関数、指数関数、式と証明 | 30点 | 難 | 〔1〕座標平面上の三角関数で表された2つの点の位置関係 〔2〕指数の連立方程式と相加平均・相乗平均の大小関係 |
第2問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
微分法・積分法 | 30点 | 標準 | 微分係数の定義、2次関数の接線、法線、放物線と接線で囲まれた部分の面積 |
第3問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
数列 | 20点 | 難 | 2のn乗の一の位で定義された数列、漸化式で定義された数列の和や積 |
第4問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
ベクトル | 20点 | やや難 | ひし形を素材とした平面ベクトル |
第5問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
確率分布と統計的な推測 | 20点 | 標準 | 期待値、分散、正規分布表、母平均の推定 |
4.大問別分析
第1問〔1〕「三角関数」
●座標平面上における三角関数で表された2つの点の位置関係について考察する問題。センター試験では見慣れないテーマであり、慣れていない受験生にとっては解きづらかったと思われる。
●(1)は三角関数の計算と最大値を求める問題であるが、加法定理の逆を用いて式変形をする必要がある。日ごろからこのような式変形を練習できていたかどうかで差がついたと考えられる。
●(2)は3点O、P、Qが一直線上に並ぶ条件を考える問題である。前半はOPの傾きから直線の式を求め、その式に点Qの座標を代入すること、後半は(1)と同じ加法定理の逆を用いた式変形をすることに気づけたかどうかがポイントであった。
●(3)は条件を整理して∠OQPが直角である図をかくと、(1)で求めた線分の長さを利用してOQの長さを求めることができる。その後(1)で求めた式にOQを代入して解き進めればよい。
●問題量、計算量は昨年並であるが、誘導に従って三角関数を変形していく部分が難しく、昨年よりも難化した。
●(1)は三角関数の計算と最大値を求める問題であるが、加法定理の逆を用いて式変形をする必要がある。日ごろからこのような式変形を練習できていたかどうかで差がついたと考えられる。
●(2)は3点O、P、Qが一直線上に並ぶ条件を考える問題である。前半はOPの傾きから直線の式を求め、その式に点Qの座標を代入すること、後半は(1)と同じ加法定理の逆を用いた式変形をすることに気づけたかどうかがポイントであった。
●(3)は条件を整理して∠OQPが直角である図をかくと、(1)で求めた線分の長さを利用してOQの長さを求めることができる。その後(1)で求めた式にOQを代入して解き進めればよい。
●問題量、計算量は昨年並であるが、誘導に従って三角関数を変形していく部分が難しく、昨年よりも難化した。
第1問〔2〕「指数関数、式と証明」
●指数法則を用いてx、yについての連立方程式を解き、相加平均・相乗平均の大小関係からx+yの最小値を求める問題。
●指数をテーマにした連立方程式の出題は目新しい。問題の誘導に従いながら計算をしていくが、指数法則の正確な理解と計算力が求められた。
●両辺を2乗、3乗するなどして根号をはずす形に式変形をし、(1)の計算を確実に行えたかどうかがポイントであった。
●問題量は昨年並であるが、計算量が多く、複雑であったため、昨年よりも難化した。
●指数をテーマにした連立方程式の出題は目新しい。問題の誘導に従いながら計算をしていくが、指数法則の正確な理解と計算力が求められた。
●両辺を2乗、3乗するなどして根号をはずす形に式変形をし、(1)の計算を確実に行えたかどうかがポイントであった。
●問題量は昨年並であるが、計算量が多く、複雑であったため、昨年よりも難化した。
第2問「微分法・積分法」
●(1)は定義に従って微分係数を求める目新しい問題であった。定義を正しく理解できていたかがポイントであった。
●(2)の前半は、曲線上の点Pにおける接線lと、接線とx軸との交点Qを通り、lと垂直な直線mの方程式が問われたが、微分法の基本的な知識が定着していれば取り組みやすかったであろう。
●(2)の後半は、指示された三角形の面積Sと曲線、線分およびy軸で囲まれた図形の面積Tを求め、最後はS-Tの最小値を求める問題。Sを求めるとき、辺の長さを求めると煩雑になるので、台形から三角形の面積を引いて考えるとよい。図を丁寧にかき、図形の位置関係を正確に把握して計算できたかどうかがポイントであった。
●微分係数の定義を問う部分は目新しかったが、全体としては標準的な問題であった。文字を含んだまま計算をするので正確な計算が求められた。
●問題量、計算量はやや昨年より増加したが、難易は昨年並であった。
●(2)の前半は、曲線上の点Pにおける接線lと、接線とx軸との交点Qを通り、lと垂直な直線mの方程式が問われたが、微分法の基本的な知識が定着していれば取り組みやすかったであろう。
●(2)の後半は、指示された三角形の面積Sと曲線、線分およびy軸で囲まれた図形の面積Tを求め、最後はS-Tの最小値を求める問題。Sを求めるとき、辺の長さを求めると煩雑になるので、台形から三角形の面積を引いて考えるとよい。図を丁寧にかき、図形の位置関係を正確に把握して計算できたかどうかがポイントであった。
●微分係数の定義を問う部分は目新しかったが、全体としては標準的な問題であった。文字を含んだまま計算をするので正確な計算が求められた。
●問題量、計算量はやや昨年より増加したが、難易は昨年並であった。
第3問「数列」
●2のn乗の一の位で定義された数列の項を列挙し周期を求め、その数列を含む漸化式で定義された数列の和や積を求める問題。
●(1)は第2項から第5項が具体的に問われていて、数列を苦手としている受験生でも取り組みやすかったであろう。
●(2)は誘導に従って漸化式を変形し、4の剰余によって場合が分けられた数列の一般項を求める問題。実際に値を代入するなどして、誘導に従うことができたかどうかがポイントであった。
●(3)、(4)は、数列の和や積に関する問題であったが、4項ずつの組として考え、誘導に従って求めればよい。誘導に乗って考える力、指数を含む計算を正しく行う計算力が求められた。
●数列の基本事項をおさえるだけでなく、うまく誘導に従う力や、実験をして数列がどのように変化しているかを考察する力が求められた。
●(1)は第2項から第5項が具体的に問われていて、数列を苦手としている受験生でも取り組みやすかったであろう。
●(2)は誘導に従って漸化式を変形し、4の剰余によって場合が分けられた数列の一般項を求める問題。実際に値を代入するなどして、誘導に従うことができたかどうかがポイントであった。
●(3)、(4)は、数列の和や積に関する問題であったが、4項ずつの組として考え、誘導に従って求めればよい。誘導に乗って考える力、指数を含む計算を正しく行う計算力が求められた。
●数列の基本事項をおさえるだけでなく、うまく誘導に従う力や、実験をして数列がどのように変化しているかを考察する力が求められた。
第4問「ベクトル」
●1辺の長さと角度が与えられたひし形と4つの点を素材にした平面ベクトルの問題。 基準となるベクトルの1つが対角線であったため取り組みにくかった。
●前半は、内分点の位置ベクトル、内積、垂直条件やベクトルの大きさなどのベクトルの基本的な内容が出題された。点Qが線分BCの外分点であることは図を正確にかけばわかるが、それに気付かず戸惑った受験生もいたと思われる。
●後半は、一次独立を用いて、定点の位置ベクトルを求め、三角形の面積比を求める。誘導に従って、ベクトルOTを2通りの方法で表して係数を比較すればよい。図をかくなどして、求めた条件を整理すれば容易に求めらるので、煩雑な計算をいかに正確にできたかどうかがポイントであった。
●内分点の位置ベクトル、ベクトルの大きさ、内積計算などの基本事項を確実に理解したうえで、やや複雑な設定の問題であってもそれらを活用し、正確に計算しきる力が求められた。
●問題量、計算量は昨年並であった。
●前半は、内分点の位置ベクトル、内積、垂直条件やベクトルの大きさなどのベクトルの基本的な内容が出題された。点Qが線分BCの外分点であることは図を正確にかけばわかるが、それに気付かず戸惑った受験生もいたと思われる。
●後半は、一次独立を用いて、定点の位置ベクトルを求め、三角形の面積比を求める。誘導に従って、ベクトルOTを2通りの方法で表して係数を比較すればよい。図をかくなどして、求めた条件を整理すれば容易に求めらるので、煩雑な計算をいかに正確にできたかどうかがポイントであった。
●内分点の位置ベクトル、ベクトルの大きさ、内積計算などの基本事項を確実に理解したうえで、やや複雑な設定の問題であってもそれらを活用し、正確に計算しきる力が求められた。
●問題量、計算量は昨年並であった。
第5問「確率分布と統計的推測」
●前半は白球4個、赤球3個の計7個から3個の球を取り出すときの白球の個数Wについての確率分布およびその期待値(平均)、分散を求める問題。基本的な知識を用いた数値計算なので確実に得点すべき問題であった。
●後半は、母平均を推定する際、信頼度の違いによる信頼区間の幅の比、標本の大きさの違いによる信頼区間の幅の比を求める問題。母平均を推定する公式をしっかりとおさえていたかどうかで差がついたであろう。
●計算量は少なく、基本的な内容をおさえていた受験生にとっては取り組みやすかったであろう。
●後半は、母平均を推定する際、信頼度の違いによる信頼区間の幅の比、標本の大きさの違いによる信頼区間の幅の比を求める問題。母平均を推定する公式をしっかりとおさえていたかどうかで差がついたであろう。
●計算量は少なく、基本的な内容をおさえていた受験生にとっては取り組みやすかったであろう。
5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 53.94 | 55.64 | 51.16 | 52.46 | 57.12 |
6.センター試験攻略のポイント
●今年から新課程となったが、数学IIは数学I・Aから移行される項目が複数あるものの出題範囲の大きな変更はなかった。また、数学Bからの出題は「統計とコンピュータ」、「数値計算とコンピュータ」がなくなり、「数列」「ベクトル」「確率分布と統計的な推測」の3分野からの選択問題になった。今後もこの形式で幅広い分野から出題されると考えられるが、数学I・Aの内容が出題の基礎となることに変わりはない。数学I、数学A、数学II、数学Bのそれぞれの分野の基礎基本をしっかりと定着させることが重要である。●まずは教科書に載っている定理・公式・解法をひととおりおさえておくことが重要。各分野の中で、幅広く出題される場合もあれば、ある項目が重点的に出題される場合もあるので、苦手な項目はなくしておくべきである。
●例年、時間の割に問題量・計算量が多く、限られた時間の中ではやく正確な処理が求められる。日頃から解答時間を意識した演習を積んでおくことと、複数の解法を身につけて効率よく解ける力をつけておくことが大切である。また、数値だけでなく、文字の計算も多いので、文字処理力も強化しておきたい。
●試験時間中は、時間配分を考慮し、分からない箇所があればその部分にあまり時間をかけすぎないで、分かるところから取りかかるようにするとよいだろう。
●与えられた条件や前の設問をうまく使うことを意識して、問題に取り組む必要がある。うまく誘導にのることで、計算や処理の量を減らすことができる場合も少なくない。値を代入してどうなるかを試行錯誤することも重要である。
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