問題講評【理科総合A】
1.総評
- 【2014年度センター試験の特徴】
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・昨年と同様に4大問構成で、化学分野と物理分野からそれぞれ2大問ずつ出題された。
・計算力を必要とする出題は減少したが、グラフや図についての読解力を要する問題が多く出題された。
・化学分野では幅広い知識が問われ、物理分野では文章で説明された物理現象について定性的な理解を問う問題が出題された。昨年と同様に4大問構成であったが、昨年みられた分野融合的な出題は、今年はなかった。化学分野と物理分野からそれぞれ2大問が出題され、全体を通して特定の分野に偏らない幅広い出題であった。出題形式では、数値選択の問題が減少(6→3)し、計算力を必要とする問題が減少した。また、昨年は多く出題された組合せ選択の問題も減少(11→6)した。一方で、図・グラフ選択の問題が増加(1→5)して、グラフの読解力が求められた。化学分野では小問集合形式で出題され、社会との関連を意識させる問題を含めて幅広い知識が問われた。物理分野では物理現象の説明を設問文から読み取って定性的に考える力が求められた。難易は昨年より易化。
2.全体概況
【大問数・解答数】 | 大問数4は昨年から変更なし。設問数は昨年と同じ22問であったが、解答数は昨年の26個から1個減少して25個となった。 |
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【出題形式】 | 化学分野の大問では小問集合が出題された。A、Bのパート分けによる中問構成がなくなった。数値選択の問題が減少(6→3)し、図・グラフ選択の問題が増加(1→5)した。 |
【出題分野】 | 特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。 |
【問題量】 | 昨年並。 |
【難易】 | 昨年より易化。 |
3.大問構成
第1問 | |||
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出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
身のまわりの物質の性質と利用 | 28点 | 標準 | バイオマスエネルギー、ガラス、リサイクルなど |
第2問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
バンジージャンプにおける物理的考察 | 24点 | やや難 | バンジージャンプにおける力学的エネルギー |
第3問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
二酸化炭素に関する総合問題 | 24点 | 標準 | 二酸化炭素の構成や関連する反応 |
第4問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
電球と抵抗を含む回路 | 24点 | やや難 | 電球と抵抗の接続条件を変えた場合の電流や消費電力 |
4.大問別分析
第1問「身のまわりの物質の性質と利用」
● 小問集合形式で、酸化銅(II)の還元反応、バイオマス、鉄の製錬、金属の性質、ガラス、リサイクルと物質の性質など、身のまわりの物質の反応や性質について総合的に問われた。
● 問1は、黒鉛(C)による酸化銅(II)の還元反応についての問題であった。反応式がわかれば、混合物に含まれる物質の変化がわかる。
● 問2では、デンプンとセルロースに関する知識について問われた。セルロースの単量体がわからなくても、誤答選択肢が基本的な内容なので消去法で判断できる。
● 問3では、バイオマスエネルギーに関する知識について問われた。バイオマスエネルギーの理解と「再生可能な非蓄積型」という言葉を結びつけて考えられるかどうかがポイントである。
● 問4は、鉄の製錬に関する量的関係を問う計算問題であった。反応式などの知識は必要なく、設問文から鉄と有機化合物の量的関係を把握することができるかどうかがポイントである。
● 問5は、金属に関する基本的な知識を問う問題であった。水銀についての知識があれば即答できる。
● 問6は、ソーダガラスと石英ガラスについて、材料、用途、構造などの詳細な知識を問うやや難しい問題であった。
● 問7は、リサイクルの分離や分別に関する問題であった。発泡ポリスチレンとペットボトルの原料が異なるという知識が求められた。正答以外の選択肢では教科書だけでなく一般常識的な知識も必要とされた。
第2問「バンジージャンプにおける物理的考察」
● バンジージャンプを題材として、運動する対象(人)にはたらく力や力学的エネルギーの保存についての理解を問う問題が出題された。
● 問1では、ばね定数の理解について問われた。フックの法則の式から張力とばねの伸びの関係を表すグラフを用いて、定性的な理解を問うているところが目新しい出題である。
● 問2は、バンジージャンプをする人にはたらく力の理解を問う問題であった。各状態において、人にはたらく力を正確に把握して、張力と重力のつり合いの位置を見極められるかどうかがポイントである。
● 問3aは、力学的エネルギー保存の法則の理解を問う問題であった。図2の状態(a)〜(g)における各エネルギーの関係について説明があるが、これを読解しなくても解答できる。最下点においては、人の運動エネルギーが0になるので、E=Ug+Ueであることを見極められれば判断できるが、与えられたグラフが複雑で読解力を必要とするため、難しい。bは、バンジージャンプにおける人の位置と運動エネルギーの変化の関係をグラフで問う問題であった。人の位置y0はばねの自然長であるが、y0通過後も重力と張力の大小関係から人が加速すること、つまり、y0の位置が人の運動エネルギーの最大値とならないことがわかれば正答を選べる。定性的な理解も必要となり、難しい。
● 問4 aは、人にはたらく力のつり合いの位置を問う問題であった。問2と同じ状態について異なる切り口で問われた。bは、フックの法則による計算問題であった。自然長+ばねの伸びを求めるので、選択肢の数値から正答が絞りやすい問題であった。
第3問「二酸化炭素に関する総合問題」
● 二酸化炭素に関して、物質の構成、生成反応、石灰水との反応、燃焼、発酵など、多岐にわたって出題された。
● 問1は、二酸化炭素に関する基本的な知識を問う問題であった。空気の組成やオゾン層を破壊する主な原因物質など幅広い内容が問われた。
● 問2では、二酸化炭素分子を構成する炭素原子と酸素原子についての知識について問われた。分子中の電子配置は理科総合Aとしては細かい内容でやや難しい。
● 問3は、二酸化炭素の生成反応の量的関係をグラフ選択で問う問題であった。反応における質量の関係が設問文で示されているため、物質量を考えなくても炭酸カルシウムが可不足なく反応するときの塩化水素の質量を計算できる。
● 問4は、BTB溶液を加えた石灰水と二酸化炭素との中和反応についての理解を問う問題であった。二酸化炭素の固体(ドライアイス)を使っているところは目新しい。
● 問5は、設問文で示された消火の原理と共通の状況を問う出題であった。選択肢の具体例から酸素の供給を止めるものを見極められるかどうかがポイントであった。設問文で示された具体例と原理が同じ状況を選択肢の具体例で答えるところが目新しい。
● 問6は、アルコール発酵と同様の反応を具体例で問う問題であった。発酵が微生物によるものであるという知識をもとに、選択肢の具体例を判断することがポイントであった。問5と同様に、設問文で示された具体例と共通の反応を答えるところが目新しい。
第4問「電球と抵抗を含む回路」
● 電球と抵抗の回路を題材として、電流、抵抗値、消費電力などを問う問題が出題された。
● 問1aは、回路X〜Zにおいて電球1に流れる電流の大小関係を問う問題であった。それぞれの回路において、抵抗の直列接続、並列接続における電流についての理解が問われた。bでは、回路YとZにおいて、電球1が切れた場合の電球3に流れる電流の変化について定性的に問われた。抵抗の接続、オームの法則を理解していれば平易である。
● 問2では、回路Xに抵抗を加えた場合の電流と抵抗値について、定性的に問われた。「電球1の明るさは他の電球とほとんど同じであった」などの設問文の説明や現象が理解できたかどうかがポイントである。回路の条件を変えて、変化や状態を定性的に問うところは目新しい。
● 問3では、状態Aから電球が切れた状態Bへ変化した場合の抵抗体の消費電力と温度変化について定性的に問われた。設問文の説明から流れる電流の変化について理解できたかどうかがポイントである。
● 問4では、状態B から抵抗体の抵抗値が変化した状態Cにおいて、抵抗体に流れる電流と抵抗値について定性的に問われた。問3と同様に、設問文の説明から電流と抵抗値の変化について理解できたかどうかがポイントである。
● 問5は、三つの抵抗体の温度と抵抗値の関係を示すグラフから抵抗体の性質を読み取って、流れる電流や抵抗値、消費電力と抵抗体の性質との関係について考察する問題であった。グラフから読み取れる性質と選択肢の内容を結びつけて考える思考力を必要とする問題であり、やや難しい。
● 小問集合形式で、酸化銅(II)の還元反応、バイオマス、鉄の製錬、金属の性質、ガラス、リサイクルと物質の性質など、身のまわりの物質の反応や性質について総合的に問われた。
● 問1は、黒鉛(C)による酸化銅(II)の還元反応についての問題であった。反応式がわかれば、混合物に含まれる物質の変化がわかる。
● 問2では、デンプンとセルロースに関する知識について問われた。セルロースの単量体がわからなくても、誤答選択肢が基本的な内容なので消去法で判断できる。
● 問3では、バイオマスエネルギーに関する知識について問われた。バイオマスエネルギーの理解と「再生可能な非蓄積型」という言葉を結びつけて考えられるかどうかがポイントである。
● 問4は、鉄の製錬に関する量的関係を問う計算問題であった。反応式などの知識は必要なく、設問文から鉄と有機化合物の量的関係を把握することができるかどうかがポイントである。
● 問5は、金属に関する基本的な知識を問う問題であった。水銀についての知識があれば即答できる。
● 問6は、ソーダガラスと石英ガラスについて、材料、用途、構造などの詳細な知識を問うやや難しい問題であった。
● 問7は、リサイクルの分離や分別に関する問題であった。発泡ポリスチレンとペットボトルの原料が異なるという知識が求められた。正答以外の選択肢では教科書だけでなく一般常識的な知識も必要とされた。
● バンジージャンプを題材として、運動する対象(人)にはたらく力や力学的エネルギーの保存についての理解を問う問題が出題された。
● 問1では、ばね定数の理解について問われた。フックの法則の式から張力とばねの伸びの関係を表すグラフを用いて、定性的な理解を問うているところが目新しい出題である。
● 問2は、バンジージャンプをする人にはたらく力の理解を問う問題であった。各状態において、人にはたらく力を正確に把握して、張力と重力のつり合いの位置を見極められるかどうかがポイントである。
● 問3aは、力学的エネルギー保存の法則の理解を問う問題であった。図2の状態(a)〜(g)における各エネルギーの関係について説明があるが、これを読解しなくても解答できる。最下点においては、人の運動エネルギーが0になるので、E=Ug+Ueであることを見極められれば判断できるが、与えられたグラフが複雑で読解力を必要とするため、難しい。bは、バンジージャンプにおける人の位置と運動エネルギーの変化の関係をグラフで問う問題であった。人の位置y0はばねの自然長であるが、y0通過後も重力と張力の大小関係から人が加速すること、つまり、y0の位置が人の運動エネルギーの最大値とならないことがわかれば正答を選べる。定性的な理解も必要となり、難しい。
● 問4 aは、人にはたらく力のつり合いの位置を問う問題であった。問2と同じ状態について異なる切り口で問われた。bは、フックの法則による計算問題であった。自然長+ばねの伸びを求めるので、選択肢の数値から正答が絞りやすい問題であった。
第3問「二酸化炭素に関する総合問題」
● 二酸化炭素に関して、物質の構成、生成反応、石灰水との反応、燃焼、発酵など、多岐にわたって出題された。
● 問1は、二酸化炭素に関する基本的な知識を問う問題であった。空気の組成やオゾン層を破壊する主な原因物質など幅広い内容が問われた。
● 問2では、二酸化炭素分子を構成する炭素原子と酸素原子についての知識について問われた。分子中の電子配置は理科総合Aとしては細かい内容でやや難しい。
● 問3は、二酸化炭素の生成反応の量的関係をグラフ選択で問う問題であった。反応における質量の関係が設問文で示されているため、物質量を考えなくても炭酸カルシウムが可不足なく反応するときの塩化水素の質量を計算できる。
● 問4は、BTB溶液を加えた石灰水と二酸化炭素との中和反応についての理解を問う問題であった。二酸化炭素の固体(ドライアイス)を使っているところは目新しい。
● 問5は、設問文で示された消火の原理と共通の状況を問う出題であった。選択肢の具体例から酸素の供給を止めるものを見極められるかどうかがポイントであった。設問文で示された具体例と原理が同じ状況を選択肢の具体例で答えるところが目新しい。
● 問6は、アルコール発酵と同様の反応を具体例で問う問題であった。発酵が微生物によるものであるという知識をもとに、選択肢の具体例を判断することがポイントであった。問5と同様に、設問文で示された具体例と共通の反応を答えるところが目新しい。
第4問「電球と抵抗を含む回路」
● 電球と抵抗の回路を題材として、電流、抵抗値、消費電力などを問う問題が出題された。
● 問1aは、回路X〜Zにおいて電球1に流れる電流の大小関係を問う問題であった。それぞれの回路において、抵抗の直列接続、並列接続における電流についての理解が問われた。bでは、回路YとZにおいて、電球1が切れた場合の電球3に流れる電流の変化について定性的に問われた。抵抗の接続、オームの法則を理解していれば平易である。
● 問2では、回路Xに抵抗を加えた場合の電流と抵抗値について、定性的に問われた。「電球1の明るさは他の電球とほとんど同じであった」などの設問文の説明や現象が理解できたかどうかがポイントである。回路の条件を変えて、変化や状態を定性的に問うところは目新しい。
● 問3では、状態Aから電球が切れた状態Bへ変化した場合の抵抗体の消費電力と温度変化について定性的に問われた。設問文の説明から流れる電流の変化について理解できたかどうかがポイントである。
● 問4では、状態B から抵抗体の抵抗値が変化した状態Cにおいて、抵抗体に流れる電流と抵抗値について定性的に問われた。問3と同様に、設問文の説明から電流と抵抗値の変化について理解できたかどうかがポイントである。
● 問5は、三つの抵抗体の温度と抵抗値の関係を示すグラフから抵抗体の性質を読み取って、流れる電流や抵抗値、消費電力と抵抗体の性質との関係について考察する問題であった。グラフから読み取れる性質と選択肢の内容を結びつけて考える思考力を必要とする問題であり、やや難しい。
● 二酸化炭素に関して、物質の構成、生成反応、石灰水との反応、燃焼、発酵など、多岐にわたって出題された。
● 問1は、二酸化炭素に関する基本的な知識を問う問題であった。空気の組成やオゾン層を破壊する主な原因物質など幅広い内容が問われた。
● 問2では、二酸化炭素分子を構成する炭素原子と酸素原子についての知識について問われた。分子中の電子配置は理科総合Aとしては細かい内容でやや難しい。
● 問3は、二酸化炭素の生成反応の量的関係をグラフ選択で問う問題であった。反応における質量の関係が設問文で示されているため、物質量を考えなくても炭酸カルシウムが可不足なく反応するときの塩化水素の質量を計算できる。
● 問4は、BTB溶液を加えた石灰水と二酸化炭素との中和反応についての理解を問う問題であった。二酸化炭素の固体(ドライアイス)を使っているところは目新しい。
● 問5は、設問文で示された消火の原理と共通の状況を問う出題であった。選択肢の具体例から酸素の供給を止めるものを見極められるかどうかがポイントであった。設問文で示された具体例と原理が同じ状況を選択肢の具体例で答えるところが目新しい。
● 問6は、アルコール発酵と同様の反応を具体例で問う問題であった。発酵が微生物によるものであるという知識をもとに、選択肢の具体例を判断することがポイントであった。問5と同様に、設問文で示された具体例と共通の反応を答えるところが目新しい。
● 電球と抵抗の回路を題材として、電流、抵抗値、消費電力などを問う問題が出題された。
● 問1aは、回路X〜Zにおいて電球1に流れる電流の大小関係を問う問題であった。それぞれの回路において、抵抗の直列接続、並列接続における電流についての理解が問われた。bでは、回路YとZにおいて、電球1が切れた場合の電球3に流れる電流の変化について定性的に問われた。抵抗の接続、オームの法則を理解していれば平易である。
● 問2では、回路Xに抵抗を加えた場合の電流と抵抗値について、定性的に問われた。「電球1の明るさは他の電球とほとんど同じであった」などの設問文の説明や現象が理解できたかどうかがポイントである。回路の条件を変えて、変化や状態を定性的に問うところは目新しい。
● 問3では、状態Aから電球が切れた状態Bへ変化した場合の抵抗体の消費電力と温度変化について定性的に問われた。設問文の説明から流れる電流の変化について理解できたかどうかがポイントである。
● 問4では、状態B から抵抗体の抵抗値が変化した状態Cにおいて、抵抗体に流れる電流と抵抗値について定性的に問われた。問3と同様に、設問文の説明から電流と抵抗値の変化について理解できたかどうかがポイントである。
● 問5は、三つの抵抗体の温度と抵抗値の関係を示すグラフから抵抗体の性質を読み取って、流れる電流や抵抗値、消費電力と抵抗体の性質との関係について考察する問題であった。グラフから読み取れる性質と選択肢の内容を結びつけて考える思考力を必要とする問題であり、やや難しい。
5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 | 2009 |
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平均点 | 44.75 | 67.92 | 55.63 | 63.38 | 56.59 |
データネット実行委員会 駿台予備学校/ベネッセコーポレーション