問題講評【地学I】

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1.総評

【2014年度センター試験の特徴】

・文章量の増加、目新しい出題などにより、難易は昨年より難化した。
・例年と同様に、地学Iの全範囲から、幅広く正確な知識が要求された。大問数は5、解答数は30個で、昨年より変更はなかった。
・例年と同様に、図を扱った問題と文章選択問題を中心とした出題であったが、7択以上の問題数が増加(8→14)した。

 大問数5、解答数30個と、昨年と同様の形式で出題された。図を扱った問題と文章選択問題を中心とした出題であった点は例年と同様であったが、7択以上の問題が増加し、14問出題された。文章選択の5択問題が2問、語句と数値や数式が組み合わされた選択肢の問題が4問出題され、また、正誤の判断に時間のかかる選択肢が多かった。地球内部の温度・圧力と深さの関係(第1問問3)、天球(第5問問3)など、近年あまり出題されなかった内容の出題もみられた。難易は昨年より難化した。プルームに関する知識を問うなど、新課程で扱いの大きくなる内容の出題もみられた。

2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数5、解答数30個は昨年より変更なし。
【出題形式】 昨年と同様に、図を扱った問題と文章選択問題を中心とした出題であった。7択以上の問題が増加(8→14)した。
【出題分野】 特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。
【問題量】 選択肢数の増加、問題の文章量の増加など、昨年に比べて増加した。
【難易】 昨年より難化。

3.大問構成

第1問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
固体地球 20点 やや難 A 地球内部の熱とプレート
B 地球の大きさと重力
第2問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
岩石・鉱物 20点 A 岩石・鉱物・マグマ
B マグマの発生と火山の分布
第3問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
地質・地史 20点 A 地層
B 地層と化石
第4問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
大気・海洋 20点 やや難 A 山を越える気流と雲
B 太平洋赤道域の海洋と大気
第5問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
天文 20点 やや難 A 太陽系
B 宇宙と銀河

4.大問別分析

第1問「固体地球」

● Aは、地球内部の熱とプレートに関する出題であり、地球内部構造の形成過程と現状、地球内部と太陽からの熱量、プレートの性質と運動、他の天体での火山、プルームについての基礎的な知識が問われた。

● 問1は、地球内部構造の形成過程と、太陽からの熱と地球内部からの熱の比較に関する、空欄補充の組合せ問題であった。地殻熱流量と太陽放射を比較させるのはめずらしく、昨年に引き続き、分野をまたぐ出題であった。

● 問2は、プレートの性質、プレート運動の速さの測定、海洋プレートと大陸プレートについての問題であった。海洋プレートの厚さが次第に厚くなることを問うのはめずらしい。

● 問3は、地球内部の温度・圧力と深さの関係についてのグラフを選択する問題であった。温度のグラフについては、教科書によって描き方に違いがある。

● 問4は、プルーム、地球内部の熱源、他の天体に存在する火山についての、正誤の組合せ問題であった。プルームに関する知識を問う出題はセンター試験では初めてであった。bは2012年度本試験の第1問問3でもほぼ同様の内容が問われている。

● Bは、地球の大きさと重力に関する出題であり、地球の形、大きさの測定方法、重力に関する基礎知識が問われた。

● 問5は、地球の大きさを測る方法に関する問題であった。2007年度本試験の第1問問1でも、ほぼ同じ内容が出題されている。

● 問6は、地球の形、重力と引力、遠心力との関係、地殻の厚さについての問題であった。

第2問「岩石・鉱物」

● Aは、変成岩の変成作用に関する出題であり、図とグラフからの情報を組み合わせて思考しなければならず、難しい。

● 問1は、花こう岩に関する三つの文についての正誤問題であった。a、bは地表付近の岩石について、cは火成岩の組成(結晶分化作用)についての記述であった。

● 問2は、Al2SiO5組成の鉱物の再結晶の条件を、長い問題文および図とグラフから読み取って思考する問題であり、難しい。図とグラフを組み合わせて考える問題は2012年度の第2問Aにも出題されていたが、解答に時間がかかった受験生が多かったと思われる。

● 問3は、年代やその評価法についての問題であり、典型的な内容であった。「評価法について述べた文」という問い方は見なれない。問題の素材となっている地域についての総合的な考察を必要とする問題である。

● 問4は、問題の素材となっている地域の岩石の説明に関する出題であった。問3と同様に、この地域についての総合的な考察が必要である。

● Bは、マグマの発生に関する基本問題であり、よく出題される、かんらん岩の溶融曲線と地下の温度と圧力との関係のグラフが扱われた。

● 問5は、マグマの発生の条件と、形成された岩石についての典型的な問題であった。

● 問6は、火山の分布と、その形成されたメカニズムについての、典型的な問題であった。発散する境界で、中央海嶺以外(地溝帯)が問われるのはめずらしい。また、文章選択問題での5択は、近年みられなかった出題である。

第3問「地質・地史」

● Aは、立体的に組み合わされた断面図に関する出題であり、与えられた図から地層の広がりを空間的にとらえることが求められた。

● 問1は、切り通しの両側面と底面という三つの断面から層序を求める、目新しい問題であった。層序と厚さの両方を読み取らなければならず、難しい。次の問2で与えられる図2が傾斜のヒントになっていた。

● 問2は、傾斜した鍵層の露頭線を考察させる問題であった。傾斜角が45°以外での出題はめずらしく、解答するのに時間を要したかもしれない。図1から傾斜が60°であることを読み取れている必要もあり、難しい。

● 問3は、堆積環境を推定する方法に関する問題であった。「どのような証拠が見つかれば、この仮説が正しいことを確かめられるか」という問い方は目新しいが、斜交葉理は級化層理とならんで頻出であり、正答することは比較的容易である。

● 問4は、堆積岩の形成過程に関する問題であった。誤答選択肢は比較的容易に判断できるため、消去法で正解できた受験生もいたかもしれない。

● Bは、示準化石を用いて地層の対比を行う問題であり、三つの図を適切に用いて対比と年代決定を行う必要があり、難しい。注意深い図の読み取りと、考察力が求められる出題であった。

● 問5は、4種の示準化石をもとに地層の対比を行い、地層の堆積年代を考察する問題であった。2010年度本試験、2011年度本試験、2012年度本試験でも同傾向の問題が出題されているが、高度な思考が必要であり、難しい。すべての選択肢について吟味する必要があり、解答に時間を要したと思われる。

● 問6は、原生代の地史、示相化石、傾斜不整合に関する知識を問う基本的な問題であった。

第4問「大気・海洋」

● Aは、気流と雲に関する出題であった。雲粒の大きさを問う出題はめずらしい。また、問2の大気の安定性に関する出題は思考力を要する問題であり、難しい。

● 問1は、雲粒と湿潤断熱減率に関する基本的な知識を問う問題であった。雲粒の大きさを問うこと、また、空気塊の下降中の温度変化について問うことはめずらしい。

● 問2は、気流の上下の波動を大気の安定性だけで判断する、教科書レベルの理解では正解が難しい考察問題であった。与えられた条件をもとに考察する必要があり、もう少しヒントが与えられていないと、受験生にとっては解答が厳しかったのではないかと思われる。

● 問3は、太平洋側に冷たく乾いた風が吹き下りるときと、フェーン現象の発生時の天気図を選ぶ、基本的な出題であった。

● 問4は、雲粒に関する基本的な知識を問う問題であるが、過冷却、氷晶説、暖かい雨、雲の赤外画像についての正しい知識がなければ正答することは難しい。選択肢番号3および4は、教科書によって記述の詳しさに違いがある内容である。

● Bは、太平洋赤道域における海洋と大気の相互作用に関する基本的な知識を問う問題であり、エルニーニョ現象、台風、環流に関する知識が問われた。

● 問5は、大気の大循環、エルニーニョ現象時の海水温分布に関する知識を問う問題であった。

● 問6は、台風の発生場所、南半球での環流、海洋と大気の間のエネルギー収支に関する基本的な知識を問う問題であった。

第5問「天文」

● Aは、太陽系に関する出題であり、地球からの惑星およびその他の天体の見え方、ケプラーの法則(計算問題を含む)についての理解が問われた。

● 問1は、火星が逆行中かつ金星が西方最大離角のときの位置関係を示す図を選択する問題であった。近年あまり出題されなかった内容である。

● 問2は、ケプラーの第二法則、第三法則を用いて、小惑星の運動を考える、計算を含む問題であった。

● 問3は、地球の自転・公転と、天体の見かけの運動に関する知識を問う問題であった。選択肢番号1の天球に関する知識の出題はめずらしい。

● Bは、宇宙と銀河に関する出題であり、宇宙の誕生と進化についての知識と、ハッブルの法則を用いた、距離の異なる銀河の明るさについての計算力が問われた。

● 問4は、ハッブルの法則から導かれる、宇宙誕生についての知識を問う問題であった。

● 問5は、ハッブルの法則を利用して二つの銀河の距離の比を求め、両者の実際の明るさの比を求める計算問題であった。2段階の計算が必要であり、解法を思いつくのが難しかったかもしれない。

● 問6は、宇宙の進化や構造に関する知識を問う問題であった。宇宙における元素の生成や宇宙の果てに関する知識は重要であるので、しっかり身につけておきたい。

5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

年度 2013 2012 2011 2010 2009
平均点 68.68 69.48 64.30 66.76 51.85

6.2015年度センター試験攻略のポイント

● 2015年度センター試験からは、新教育課程の「地学基礎」と「地学」が出題される。

● 【地学基礎】

● 地学基礎の幅広い範囲から、各分野の知識をバランスよく問う問題が出題されると予想される。教科書に記載されている基本的な知識を正しく理解しておくことが大切である。

● 実験や観察を扱う問題、これまで理科総合Bで出題されたような科学的リテラシーを問う問題などが出題される可能性がある。探究活動などを通じて、必要な力を身につけておきたい。

● 地球環境問題や自然現象などと、学習した内容を結びつけて考える力が、これまで以上に求められると思われる。日ごろから気象や災害に関する報道などにも関心をもつようにしておきたい。

● 【地学】

● 地学の幅広い範囲から、各分野の知識をバランスよく問う問題が出題されると予想される。また、これまでの地学IIで扱われていた内容が出題されることにより、地学Iでの出題よりも幅広い知識と深い理解が求められる可能性がある。苦手分野をつくらない学習を心がけたい。

● 実験や観察を通じて探究する力、地学の基本的な概念や原理・法則の理解などを問う問題が出題される可能性がある。知識を単に暗記するだけでなく、他の学習項目とのつながりや因果関係も含めて理解するように意識することが大切である。

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