問題講評【化学I】
1.総評
- 【2014年度センター試験の特徴】
-
・例年と同様に、化学Iの全範囲から幅広く出題され、小問形式で問われた。
・無機物質の分野で、酸化数に関する問題や、有機化合物に関連する問題が出題された。
・大問数は昨年と同様に4大問であり、解答数も昨年と変わらず33個であった。昨年と同様に、4大問構成であり、小問形式で問われた。解答数も昨年と変わらず33個であった。数値選択問題が7問出題され、語句選択問題が2問増加(13→15)した。組合せ問題は1問増加(3→4)した。例年同様、特定の分野に偏ることなく幅広く出題された。無機物質の分野で、酸化数に関する問題や、芳香族アゾ化合物といった有機化合物に関連する問題などの出題がみられた。有機化合物の分野で、実験を題材にした問題や考察を要する問題が出題されたが、全体として素直な問題が多く、昨年より易化した。
2.全体概況
【大問数・解答数】 | 大問数は昨年と同様に4大問。解答数も昨年と変わらず33個。 |
---|---|
【出題形式】 | 例年と同様に、小問形式で出題された。文章選択問題が減少(11→10)し、語句選択問題が増加(13→15)した。また、組合せ問題が増加(3→4)した。 |
【出題分野】 | 特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。 |
【問題量】 | 4択の問題が増加(2→3)し、8択の問題が解答数として3個増加(0→3)した。また、ページ数は昨年に比べて1ページ増加(21→22)したが、設問数は2問減少(27→25)し,問題量は昨年並。 |
【難易】 | 昨年より易化。 |
3.大問構成
第1問 | |||
---|---|---|---|
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
物質の構成 | 25点 | やや易 | |
第2問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
物質の変化 | 25点 | やや易 | |
第3問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
無機物質 | 25点 | 標準 | |
第4問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
有機化合物 | 25点 | 標準 |
4.大問別分析
第1問「物質の構成」
● 分子の数、放射性同位体の原子核を構成する陽子の数と中性子の数の比、周期表、イオン、身のまわりの事柄などについて出題された。計算問題は2問で、質量パーセント濃度とモル濃度の変換、混合気体の反応の量的関係について問われた。
● 問1aは、同じ質量中に含まれる分子の数を比較する問題であり、同じ質量では、分子量が大きいほど物質量は小さいことを理解していれば計算をしなくても解答できる問題であった。bは、放射性同位体の原子核を構成する陽子の数と中性子の数の比を求める問題であった。
● 問2は、周期表中の指定された場所における元素からなる化合物について、組成式を考える正誤問題であった。それぞれの元素を具体的に当てはめて考えるとわかりやすい。
● 問3は、イオンに関連する記述についての正誤問題であった。迷う記述もあるが、正答は容易にみつけられると思われる。
● 問4は、質量パーセント濃度からモル濃度に変換する問題であり、計算しやすい数値が与えられていた。
● 問5は、混合気体の燃焼と反応する空気の体積の量的関係についての計算問題であった。「空気」の体積を求める問題であるが、「酸素」と間違えた受験生がいたかもしれない。
● 問6は、身のまわりの事柄に関する化学用語についての問題であった。事柄の例は身近なことを扱っており、化学的な関心を高める問題であった。
第2問「物質の変化」
● 解答数は昨年と比べて1個増加し、8個となった。昨年と同様に、熱化学、酸と塩基、酸化と還元の分野から偏りなく出題された。物質量から発生する気体を特定させ、電解質を判断する目新しい出題もみられたが、全体として素直で、端的に問うている問題が多く、解答に迷うものが少なかった。
● 問1は、燃焼熱から生成熱を求める式を選ぶ問題であり、熱化学方程式の書き方を理解できていると易しい。
● 問2は、混合気体の燃焼熱と発熱量から、物質量の比を求める問題であった。
● 問3は、中和滴定曲線を題材とした問題であった。aは、酸と塩基の組合せを選ぶ4択の問題であり、中和点が塩基性であることに気がつけば易しい。bは、適当な指示薬を選ぶ問題であり、メチルオレンジとフェノールフタレインの変色域を正しくおさえているかがポイントである。
● 問4は、五つの反応式中の下線で示した原子のうち、還元されているものを選ぶ問題であった。酸化数の変化を考える典型的な問題である。
● 問5は、電気分解の両極で発生した気体の物質量から気体を特定し、電解液に含まれる物質を二つ選ぶ問題であった。演習が不足していた受験生にとっては、正答を求めるために考える方法、順序がわかりにくかった可能性がある。
● 問6は、放電におけるダニエル電池の銅版の質量変化に関する問題であった。銅が2価の陽イオンになることに注意が必要であった。
第3問「無機物質」
● 解答数は昨年と比べて2個減少し、7個となった。全体的に選択肢の記述が短く、簡潔であった。酸化数に関する問題や、有機化合物に関連する記述のある問題がみられた。金属イオンの分離に関する問題は硫化物の沈殿が含まれ、やや難しい。
● 問1は、身のまわりの金属のもつ性質に関する正誤問題であった。電気伝導性が最大の金属が銀であることがわからなければ間違えたと思われる。
● 問2は、過マンガン酸カリウムと過酸化水素の反応に関する正誤問題であり、酸化数に関する理解も問われた。過酸化水素中の酸素原子の酸化数を知っていれば解答できたと思われる。
● 問3は、窒素に関する正誤問題であった。芳香族アゾ化合物についての記述があり、有機化合物の知識も問われた。
● 問4は、亜鉛とアルミニウムの反応性の違いを問う問題であった。「どちらか一方のみ」に当てはまる記述を選ぶ点が目新しい。
● 問5は、濃硫酸の反応と関連する性質について、正しい組合せを選択する典型的な問題であった。
● 問6は、水和物の質量と沈殿の質量から、含まれる水和物の数を求める計算問題であった。教科書では、硫酸銅(II)五水和物の記載があるため、計算しないで、n=5とした受験生もいたと思われる。
● 問7は、3種類の未知の金属イオンを分離する操作から、分離された金属イオンの組合せを選ぶ問題であった。一つずつ当てはめて考えていくと、時間を要したと思われる。銀イオンと鉛(II)イオンはいずれも、操作Iで沈殿することに気がつけば、解答を絞り込める。
第4問「有機化合物」
● 解答数は昨年と比べて1個増加し、11個となった。ビタミンCやハッカの香味成分など、見慣れない構造の化合物を題材にした出題が目立った。また、昨年と同じ形式で官能基の名称が問われた。有機化合物の水溶性や濃硫酸とエタノールの反応に関する実験・考察を題材とした問題が出題された。
● 問1は、昨年と同様に官能基の名称を答える問題であった。ビタミンCは、エステル結合が環状となっているため、戸惑った受験生がいたかもしれない。また、扱っている化合物はビタミンC、ハッカの香味成分、爆薬の一種であり、見慣れない構造も出題されていたが、官能基自体は基本的であった。
● 問2は、構造異性体に関する正誤問題であった。扱われている物質はよくみられるものであるが、異性体を実際に書いていくと時間を要したと思われる。
● 問3aは、水溶性と分離、弱酸の遊離反応に関する問題であり、やや難しい。bは、不飽和結合への付加反応に関する問題であった。臭素と付加反応するのは、炭素原子間に二重結合をもつシクロヘキセンであり、シクロヘキサンと間違えないように注意が必要であった。
● 問4は、フェノールを出発点として、サリチル酸メチルを合成するときに反応させる物質を選択する典型的な問題であった。
● 問5aは、実験に関する問題であり、濃硫酸とエタノールから得られる気体の性質と、実験方法について出題された。bは、aと同じ方法で低い温度で得られる物質の性質に関する問題であり、生成物がジエチルエーテルであるとわかれば易しい。
● 問6は、解熱鎮痛薬の合成反応に関する問題であり、目新しい。過不足のある反応の量的関係に関する計算問題であった。
● 分子の数、放射性同位体の原子核を構成する陽子の数と中性子の数の比、周期表、イオン、身のまわりの事柄などについて出題された。計算問題は2問で、質量パーセント濃度とモル濃度の変換、混合気体の反応の量的関係について問われた。
● 問1aは、同じ質量中に含まれる分子の数を比較する問題であり、同じ質量では、分子量が大きいほど物質量は小さいことを理解していれば計算をしなくても解答できる問題であった。bは、放射性同位体の原子核を構成する陽子の数と中性子の数の比を求める問題であった。
● 問2は、周期表中の指定された場所における元素からなる化合物について、組成式を考える正誤問題であった。それぞれの元素を具体的に当てはめて考えるとわかりやすい。
● 問3は、イオンに関連する記述についての正誤問題であった。迷う記述もあるが、正答は容易にみつけられると思われる。
● 問4は、質量パーセント濃度からモル濃度に変換する問題であり、計算しやすい数値が与えられていた。
● 問5は、混合気体の燃焼と反応する空気の体積の量的関係についての計算問題であった。「空気」の体積を求める問題であるが、「酸素」と間違えた受験生がいたかもしれない。
● 問6は、身のまわりの事柄に関する化学用語についての問題であった。事柄の例は身近なことを扱っており、化学的な関心を高める問題であった。
● 解答数は昨年と比べて1個増加し、8個となった。昨年と同様に、熱化学、酸と塩基、酸化と還元の分野から偏りなく出題された。物質量から発生する気体を特定させ、電解質を判断する目新しい出題もみられたが、全体として素直で、端的に問うている問題が多く、解答に迷うものが少なかった。
● 問1は、燃焼熱から生成熱を求める式を選ぶ問題であり、熱化学方程式の書き方を理解できていると易しい。
● 問2は、混合気体の燃焼熱と発熱量から、物質量の比を求める問題であった。
● 問3は、中和滴定曲線を題材とした問題であった。aは、酸と塩基の組合せを選ぶ4択の問題であり、中和点が塩基性であることに気がつけば易しい。bは、適当な指示薬を選ぶ問題であり、メチルオレンジとフェノールフタレインの変色域を正しくおさえているかがポイントである。
● 問4は、五つの反応式中の下線で示した原子のうち、還元されているものを選ぶ問題であった。酸化数の変化を考える典型的な問題である。
● 問5は、電気分解の両極で発生した気体の物質量から気体を特定し、電解液に含まれる物質を二つ選ぶ問題であった。演習が不足していた受験生にとっては、正答を求めるために考える方法、順序がわかりにくかった可能性がある。
● 問6は、放電におけるダニエル電池の銅版の質量変化に関する問題であった。銅が2価の陽イオンになることに注意が必要であった。
第3問「無機物質」
● 解答数は昨年と比べて2個減少し、7個となった。全体的に選択肢の記述が短く、簡潔であった。酸化数に関する問題や、有機化合物に関連する記述のある問題がみられた。金属イオンの分離に関する問題は硫化物の沈殿が含まれ、やや難しい。
● 問1は、身のまわりの金属のもつ性質に関する正誤問題であった。電気伝導性が最大の金属が銀であることがわからなければ間違えたと思われる。
● 問2は、過マンガン酸カリウムと過酸化水素の反応に関する正誤問題であり、酸化数に関する理解も問われた。過酸化水素中の酸素原子の酸化数を知っていれば解答できたと思われる。
● 問3は、窒素に関する正誤問題であった。芳香族アゾ化合物についての記述があり、有機化合物の知識も問われた。
● 問4は、亜鉛とアルミニウムの反応性の違いを問う問題であった。「どちらか一方のみ」に当てはまる記述を選ぶ点が目新しい。
● 問5は、濃硫酸の反応と関連する性質について、正しい組合せを選択する典型的な問題であった。
● 問6は、水和物の質量と沈殿の質量から、含まれる水和物の数を求める計算問題であった。教科書では、硫酸銅(II)五水和物の記載があるため、計算しないで、n=5とした受験生もいたと思われる。
● 問7は、3種類の未知の金属イオンを分離する操作から、分離された金属イオンの組合せを選ぶ問題であった。一つずつ当てはめて考えていくと、時間を要したと思われる。銀イオンと鉛(II)イオンはいずれも、操作Iで沈殿することに気がつけば、解答を絞り込める。
第4問「有機化合物」
● 解答数は昨年と比べて1個増加し、11個となった。ビタミンCやハッカの香味成分など、見慣れない構造の化合物を題材にした出題が目立った。また、昨年と同じ形式で官能基の名称が問われた。有機化合物の水溶性や濃硫酸とエタノールの反応に関する実験・考察を題材とした問題が出題された。
● 問1は、昨年と同様に官能基の名称を答える問題であった。ビタミンCは、エステル結合が環状となっているため、戸惑った受験生がいたかもしれない。また、扱っている化合物はビタミンC、ハッカの香味成分、爆薬の一種であり、見慣れない構造も出題されていたが、官能基自体は基本的であった。
● 問2は、構造異性体に関する正誤問題であった。扱われている物質はよくみられるものであるが、異性体を実際に書いていくと時間を要したと思われる。
● 問3aは、水溶性と分離、弱酸の遊離反応に関する問題であり、やや難しい。bは、不飽和結合への付加反応に関する問題であった。臭素と付加反応するのは、炭素原子間に二重結合をもつシクロヘキセンであり、シクロヘキサンと間違えないように注意が必要であった。
● 問4は、フェノールを出発点として、サリチル酸メチルを合成するときに反応させる物質を選択する典型的な問題であった。
● 問5aは、実験に関する問題であり、濃硫酸とエタノールから得られる気体の性質と、実験方法について出題された。bは、aと同じ方法で低い温度で得られる物質の性質に関する問題であり、生成物がジエチルエーテルであるとわかれば易しい。
● 問6は、解熱鎮痛薬の合成反応に関する問題であり、目新しい。過不足のある反応の量的関係に関する計算問題であった。
● 解答数は昨年と比べて2個減少し、7個となった。全体的に選択肢の記述が短く、簡潔であった。酸化数に関する問題や、有機化合物に関連する記述のある問題がみられた。金属イオンの分離に関する問題は硫化物の沈殿が含まれ、やや難しい。
● 問1は、身のまわりの金属のもつ性質に関する正誤問題であった。電気伝導性が最大の金属が銀であることがわからなければ間違えたと思われる。
● 問2は、過マンガン酸カリウムと過酸化水素の反応に関する正誤問題であり、酸化数に関する理解も問われた。過酸化水素中の酸素原子の酸化数を知っていれば解答できたと思われる。
● 問3は、窒素に関する正誤問題であった。芳香族アゾ化合物についての記述があり、有機化合物の知識も問われた。
● 問4は、亜鉛とアルミニウムの反応性の違いを問う問題であった。「どちらか一方のみ」に当てはまる記述を選ぶ点が目新しい。
● 問5は、濃硫酸の反応と関連する性質について、正しい組合せを選択する典型的な問題であった。
● 問6は、水和物の質量と沈殿の質量から、含まれる水和物の数を求める計算問題であった。教科書では、硫酸銅(II)五水和物の記載があるため、計算しないで、n=5とした受験生もいたと思われる。
● 問7は、3種類の未知の金属イオンを分離する操作から、分離された金属イオンの組合せを選ぶ問題であった。一つずつ当てはめて考えていくと、時間を要したと思われる。銀イオンと鉛(II)イオンはいずれも、操作Iで沈殿することに気がつけば、解答を絞り込める。
● 解答数は昨年と比べて1個増加し、11個となった。ビタミンCやハッカの香味成分など、見慣れない構造の化合物を題材にした出題が目立った。また、昨年と同じ形式で官能基の名称が問われた。有機化合物の水溶性や濃硫酸とエタノールの反応に関する実験・考察を題材とした問題が出題された。
● 問1は、昨年と同様に官能基の名称を答える問題であった。ビタミンCは、エステル結合が環状となっているため、戸惑った受験生がいたかもしれない。また、扱っている化合物はビタミンC、ハッカの香味成分、爆薬の一種であり、見慣れない構造も出題されていたが、官能基自体は基本的であった。
● 問2は、構造異性体に関する正誤問題であった。扱われている物質はよくみられるものであるが、異性体を実際に書いていくと時間を要したと思われる。
● 問3aは、水溶性と分離、弱酸の遊離反応に関する問題であり、やや難しい。bは、不飽和結合への付加反応に関する問題であった。臭素と付加反応するのは、炭素原子間に二重結合をもつシクロヘキセンであり、シクロヘキサンと間違えないように注意が必要であった。
● 問4は、フェノールを出発点として、サリチル酸メチルを合成するときに反応させる物質を選択する典型的な問題であった。
● 問5aは、実験に関する問題であり、濃硫酸とエタノールから得られる気体の性質と、実験方法について出題された。bは、aと同じ方法で低い温度で得られる物質の性質に関する問題であり、生成物がジエチルエーテルであるとわかれば易しい。
● 問6は、解熱鎮痛薬の合成反応に関する問題であり、目新しい。過不足のある反応の量的関係に関する計算問題であった。
5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 | 2009 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 63.67 | 65.13 | 56.57 | 53.79 | 69.54 |
6.2015年度センター試験攻略のポイント
● 2015年度センター試験からは、新教育課程の「化学基礎」と「化学」が出題される。
● 【化学基礎】
● 無機物質、有機化合物が「化学基礎」の範囲ではないため、物質の構成、物質の変化(酸・塩基、酸化と還元)といった理論分野の基本的な項目の出題が中心になると予想される。教科書に記載されている内容は確実に理解しておきたい。
● 日常生活における化学的事象を題材とした問題(身のまわりの事柄)、実験や探究活動に関連した問題などが出題される可能性がある。
● 【化学】
● 気体の法則、溶液、反応速度、化学平衡など、これまで化学IIで扱われていた内容が出題されることにより、幅広い分野から網羅的に出題されると予想される。2014年度センター本試験 第3問 問2、問3のように選択肢などにいろいろな分野が融合的に含まれる可能性があり、苦手分野をつくらないようにまんべんなく学習しておきたい。
● 実験を題材とした考察問題など化学的に探究する力を問うような出題が予想される。
データネット実行委員会 駿台予備学校/ベネッセコーポレーション