問題講評【倫理】
1.総評
- 【2014年度センター試験の特徴】
-
・昨年の形式を踏襲し、基本事項が網羅的に出題され、正確な知識が幅広く問われた。
・組合せ問題が昨年より増加し、正誤の組合せ問題が昨年同様3問出題された。
・難易は昨年並。大問数は昨年同様4大問で、大問構成や出題分野などは変更がなかったが、解答数は昨年より1個減少した。細かい知識を問う問題が減少し、基本事項が網羅的に出題され、正確な知識が幅広く問われた。また、組合せ問題は昨年より増加し、正誤の組合せ問題も昨年同様3問出題された。現代の諸課題分野では、昨年に引き続きリード文で会話文が用いられた。問題難易は昨年並。
2.全体概況
【大問数・解答数】 | 大問数4は昨年から変更なし。解答数は37個で昨年から1個減少した。すべての大問で「倫理、政治・経済」との共通の小問が出題された。 |
---|---|
【出題形式】 | 文章資料の読み取り問題が増加(3→4)した。組合せ問題は昨年よりさらに増加(10→11)し、うち6問は8択、1問は9択で出題された。文章選択問題で、5択のものが1問出題された。 |
【出題分野】 | 昨年同様、現代の諸課題分野が青年期分野と合わせて第1問で出題された。特定の分野に偏ることなく、幅広く出題され、現代の思想家では、ロールズ、センなどが出題された。 |
【問題量】 | 昨年並。 |
【難易】 | 昨年並。 |
3.大問構成
第1問 | |||
---|---|---|---|
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
経済活動と公正 | 28点 | 標準 | 青年期、現代の諸課題 |
第2問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
欲望への囚われ | 24点 | 標準 | 源流思想 |
第3問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
日本の自然観 | 24点 | 標準 | 日本思想 |
第4問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
想像力の働きと思想・芸術活動 | 24点 | 標準 | 西洋思想 |
4.大問別分析
第1問「経済活動と公正」(青年期・現代の諸課題)
● 以下【共通】とあるものは、「倫理、政治・経済」との共通問題であることを示す。
● 「フェアトレード」をテーマとした会話文から、青年期分野が2問、現代の諸課題分野が3問、ロールズなどの思想が2問、分野融合問題が1問、統計資料問題が1問、リード文の趣旨問題が1問出題された。現代の諸課題分野では、環境問題や異文化理解、人類の福祉について問われた。
● 【共通】問1は、苦しむ人々に対する支援という一つのテーマについて、分野を横断した5択の選択肢から選ぶ問題。正答の片山潜が、キリスト教に基づく人道主義の立場であると理解していれば判断できる。
● 問2は、資料と「各プランを選択した人数の割合と納得度の平均点数」のグラフを読み取らせる問題。2ページにわたる問題で分量が多く時間がかかるが、落ち着いて図を読み取っていけば解答できる。
● 【共通】問3は、オルポート、マズロー、エリクソンの思想を具体的事例に当てはめて考えさせる問題。イの事例がオルポートの「成熟した人格の特徴」に該当すると判断するのが難しいが、エリクソン、マズローの順に確定していけば解答できる。
● 【共通】問4は、センの「グローバル化をどう考えるか」の資料読み取り問題。資料後半をしっかり読解することが求められたが、センの基本的知識があれば、消去法でも解答できる。
● 問5は、ロールズの思想を選ぶ問題。「基本的な財の配分の正義」の部分でロールズが選べる。誤答選択肢はアリストテレス、ベンサム、ロックであることが明らかなため、正誤判断は容易である。
● 【共通】問6は、社会主義思想についての組合せ問題。空欄aとbが「空想的社会主義」のことだとわかれば易しい。
● 問7は、環境問題についての組合せ問題。イとウの選択肢はキーワードで判別できるが、アの選択肢の「先進国だけに」の部分で迷った受験生もいただろう。
● 【共通】問8は、葛藤状況について、レヴィン、シュプランガー、防衛機制、ヤマアラシのジレンマについて問う問題。「ヤマアラシのジレンマ」についておさえられているかどうかがポイントであった。
● 問9は、異文化理解についての問題。キーワードの知識を問われており、平易であった。
● 問10は、リード文の趣旨を問う問題。リード文中の登場人物AとBのそれぞれの発言を丁寧に読み取っていけば正答できる。
第2問「欲望への囚われ」(源流思想)
● 「欲望への囚われ」をテーマとしたリード文から、源流思想について基本的な事項を中心に網羅的に出題された。
● 問1は、欲望に関するアリストテレスについての問題。正答選択肢にはキーワードがなく、「性格の形成」が理解できていたかどうかがポイント。
● 【共通】問2は、ストア派についての基本的な問題。迷わず正答を選びたい。
● 問3は、イスラーム教についての問題。ムハンマドが「最後で最大の預言者」と理解できていれば、正答が選べる。
● 問4は、荘子の思想を問う問題。誤答選択肢に荘子の「心斎坐忘」「逍遙遊」が入っているが、「万物斉同」の意味を理解できていれば判断できる。
● 【共通】問5は、他者との関係性について、荀子、イスラーム教、仏教、エンペドクレスの思想を判断する問題。基本的な知識を問われており、容易に正答を選べる。
● 【共通】問6は、欲望について、パウロ、アウグスティヌス、イエスの考え方を問う組合せ問題。パウロの「救済は福音への信仰によるほかにない」の判断に迷った受験生もいただろう。キリスト教思想の正確な理解が求められた。
● 問7は、「八正道」についての正しい知識が求められた。八正道の詳細な内容までおさえられていたかどうかがポイント。
● 問8は、『金剛般若経』の資料読み取り問題。資料中の「観念が生ずる」という意味を理解できるかどうかがポイントであった。資料文の読み取りと合わせて、大乗仏教の「無自性」や「菩薩」などの思想の理解を結びつけて考える必要があった。
● 問9は、リード文の趣旨を問う問題。正答の選択肢はリード文の要約となっており、リード文を順を追って読み取っていけば解答できる。
第3問「日本の自然観」(日本思想)
● 「日本の自然観」をテーマに、日本思想が網羅的に出題された。
● 問1は、仏教伝来後の神の捉え方の変化についての組合せ問題。空欄aは「神仏習合」で行われるようになったこと、bは「権現思想」の意味を正しく理解できているかどうかがポイントであった。
● 【共通】問2は、源信の思想を問う問題。誤答選択肢が空也、慶滋保胤、一遍と明確なので、消去法で解答できる。
● 問3は、吉田兼好、世阿弥、千利休の思想の組合せ問題。それぞれの思想家が考える美について、キーワードが入っているが、深い理解が問われており、受験生は判断に苦しんだのではないか。吉田兼好と「あはれ」が結びつかなかった受験生もいただろう。
● 【共通】問4は、賀茂真淵の著作を選ぶ問題。『万葉代匠記』で迷った受験生もいたのではないか。
● 【共通】問5は、二宮尊徳の思想を問う問題。正答にキーワードがなく、「推譲」「天道」「人道」の正確な理解が求められた。
● 問6は、人間として望ましい行いについて説いた思想家について書かれた3つの文章が、それぞれ誰をさしているのかを判断させる組合せ問題。鈴木正三については、学習が及んでいない受験生もいたと思われるが、ウを石田梅岩、イを熊沢蕃山と確定していけば、正答にたどりつける。
● 【共通】問7は、南方熊楠の思想を問う問題。誤答選択肢が柳田国男、折口信夫、田中正造と明確であり、平易であった。
● 問8は、『風土』の資料読み取り問題。資料文より、和辻哲郎の「間柄的存在」の内容を踏まえて正答を判断する必要があった。
● 【共通】問9は、リード文の趣旨を問う問題。リード文の内容から判断は容易であった。
第4問「想像力の働きと思想・芸術活動」(西洋思想)
● 「西洋近現代思想や芸術活動のなかの想像力」をテーマに、西洋思想のトマス・モア、パスカル、カント、マルクスとエンゲルスなどについて出題された。
● 問1は、レオナルド・ダ・ヴィンチに代表されるルネサンス時代の理想の人間像を選ぶ基本問題。迷わず正答を選びたい。
● 【共通】問2は、トマス・モアの『ユートピア』の内容を選ぶ問題。誤答選択肢がアダム・スミス、マキャヴェリ、ホッブズであるとわかるため、平易であった。
● 問3は、パスカルの思想を選ぶ問題。正答のパスカルにはキーワードがないが、誤答選択肢がデカルト、ベーコン、ピコ・デラ・ミランドラと判断でき、消去法で解答できる。
● 【共通】問4は、カントの著作についての問題。bの『判断力批判』はカントの著作として受験生にはなじみがなかったのではないかと思われる。
● 【共通】問5は、ゲーテの資料読み取り問題。ゲーテについての知識がなくても、資料文を丁寧に読み取れば解答できる。
● 問6は、マルクスとエンゲルスの思想を問う問題。マルクスの思想の「上部構造」「下部構造」の理解があれば解答できる。
● 【共通】問7は、ルソー、キルケゴール、デューイの思想を問う組合せ問題。「所有権も貧富の差も存在しない自然状態を理想」からルソー、「単独者」からキルケゴール、「知性を創造的なものとみなす」「民主主義社会」などからデューイと判断できる。
● 問8は、サルトルとカミュの作品と思想についての組合せ問題。bのサルトルの「本質に先立つ実存」は、落ち着いて判断する必要があった。cのカミュについては戸惑った受験生がいたかもしれない。
● 【共通】問9は、リード文の趣旨をふまえて結論を問う問題。リード文を順を追って読み取っていけば、正答にたどり着ける。
● 以下【共通】とあるものは、「倫理、政治・経済」との共通問題であることを示す。
● 「フェアトレード」をテーマとした会話文から、青年期分野が2問、現代の諸課題分野が3問、ロールズなどの思想が2問、分野融合問題が1問、統計資料問題が1問、リード文の趣旨問題が1問出題された。現代の諸課題分野では、環境問題や異文化理解、人類の福祉について問われた。
● 【共通】問1は、苦しむ人々に対する支援という一つのテーマについて、分野を横断した5択の選択肢から選ぶ問題。正答の片山潜が、キリスト教に基づく人道主義の立場であると理解していれば判断できる。
● 問2は、資料と「各プランを選択した人数の割合と納得度の平均点数」のグラフを読み取らせる問題。2ページにわたる問題で分量が多く時間がかかるが、落ち着いて図を読み取っていけば解答できる。
● 【共通】問3は、オルポート、マズロー、エリクソンの思想を具体的事例に当てはめて考えさせる問題。イの事例がオルポートの「成熟した人格の特徴」に該当すると判断するのが難しいが、エリクソン、マズローの順に確定していけば解答できる。
● 【共通】問4は、センの「グローバル化をどう考えるか」の資料読み取り問題。資料後半をしっかり読解することが求められたが、センの基本的知識があれば、消去法でも解答できる。
● 問5は、ロールズの思想を選ぶ問題。「基本的な財の配分の正義」の部分でロールズが選べる。誤答選択肢はアリストテレス、ベンサム、ロックであることが明らかなため、正誤判断は容易である。
● 【共通】問6は、社会主義思想についての組合せ問題。空欄aとbが「空想的社会主義」のことだとわかれば易しい。
● 問7は、環境問題についての組合せ問題。イとウの選択肢はキーワードで判別できるが、アの選択肢の「先進国だけに」の部分で迷った受験生もいただろう。
● 【共通】問8は、葛藤状況について、レヴィン、シュプランガー、防衛機制、ヤマアラシのジレンマについて問う問題。「ヤマアラシのジレンマ」についておさえられているかどうかがポイントであった。
● 問9は、異文化理解についての問題。キーワードの知識を問われており、平易であった。
● 問10は、リード文の趣旨を問う問題。リード文中の登場人物AとBのそれぞれの発言を丁寧に読み取っていけば正答できる。
● 「欲望への囚われ」をテーマとしたリード文から、源流思想について基本的な事項を中心に網羅的に出題された。
● 問1は、欲望に関するアリストテレスについての問題。正答選択肢にはキーワードがなく、「性格の形成」が理解できていたかどうかがポイント。
● 【共通】問2は、ストア派についての基本的な問題。迷わず正答を選びたい。
● 問3は、イスラーム教についての問題。ムハンマドが「最後で最大の預言者」と理解できていれば、正答が選べる。
● 問4は、荘子の思想を問う問題。誤答選択肢に荘子の「心斎坐忘」「逍遙遊」が入っているが、「万物斉同」の意味を理解できていれば判断できる。
● 【共通】問5は、他者との関係性について、荀子、イスラーム教、仏教、エンペドクレスの思想を判断する問題。基本的な知識を問われており、容易に正答を選べる。
● 【共通】問6は、欲望について、パウロ、アウグスティヌス、イエスの考え方を問う組合せ問題。パウロの「救済は福音への信仰によるほかにない」の判断に迷った受験生もいただろう。キリスト教思想の正確な理解が求められた。
● 問7は、「八正道」についての正しい知識が求められた。八正道の詳細な内容までおさえられていたかどうかがポイント。
● 問8は、『金剛般若経』の資料読み取り問題。資料中の「観念が生ずる」という意味を理解できるかどうかがポイントであった。資料文の読み取りと合わせて、大乗仏教の「無自性」や「菩薩」などの思想の理解を結びつけて考える必要があった。
● 問9は、リード文の趣旨を問う問題。正答の選択肢はリード文の要約となっており、リード文を順を追って読み取っていけば解答できる。
第3問「日本の自然観」(日本思想)
● 「日本の自然観」をテーマに、日本思想が網羅的に出題された。
● 問1は、仏教伝来後の神の捉え方の変化についての組合せ問題。空欄aは「神仏習合」で行われるようになったこと、bは「権現思想」の意味を正しく理解できているかどうかがポイントであった。
● 【共通】問2は、源信の思想を問う問題。誤答選択肢が空也、慶滋保胤、一遍と明確なので、消去法で解答できる。
● 問3は、吉田兼好、世阿弥、千利休の思想の組合せ問題。それぞれの思想家が考える美について、キーワードが入っているが、深い理解が問われており、受験生は判断に苦しんだのではないか。吉田兼好と「あはれ」が結びつかなかった受験生もいただろう。
● 【共通】問4は、賀茂真淵の著作を選ぶ問題。『万葉代匠記』で迷った受験生もいたのではないか。
● 【共通】問5は、二宮尊徳の思想を問う問題。正答にキーワードがなく、「推譲」「天道」「人道」の正確な理解が求められた。
● 問6は、人間として望ましい行いについて説いた思想家について書かれた3つの文章が、それぞれ誰をさしているのかを判断させる組合せ問題。鈴木正三については、学習が及んでいない受験生もいたと思われるが、ウを石田梅岩、イを熊沢蕃山と確定していけば、正答にたどりつける。
● 【共通】問7は、南方熊楠の思想を問う問題。誤答選択肢が柳田国男、折口信夫、田中正造と明確であり、平易であった。
● 問8は、『風土』の資料読み取り問題。資料文より、和辻哲郎の「間柄的存在」の内容を踏まえて正答を判断する必要があった。
● 【共通】問9は、リード文の趣旨を問う問題。リード文の内容から判断は容易であった。
第4問「想像力の働きと思想・芸術活動」(西洋思想)
● 「西洋近現代思想や芸術活動のなかの想像力」をテーマに、西洋思想のトマス・モア、パスカル、カント、マルクスとエンゲルスなどについて出題された。
● 問1は、レオナルド・ダ・ヴィンチに代表されるルネサンス時代の理想の人間像を選ぶ基本問題。迷わず正答を選びたい。
● 【共通】問2は、トマス・モアの『ユートピア』の内容を選ぶ問題。誤答選択肢がアダム・スミス、マキャヴェリ、ホッブズであるとわかるため、平易であった。
● 問3は、パスカルの思想を選ぶ問題。正答のパスカルにはキーワードがないが、誤答選択肢がデカルト、ベーコン、ピコ・デラ・ミランドラと判断でき、消去法で解答できる。
● 【共通】問4は、カントの著作についての問題。bの『判断力批判』はカントの著作として受験生にはなじみがなかったのではないかと思われる。
● 【共通】問5は、ゲーテの資料読み取り問題。ゲーテについての知識がなくても、資料文を丁寧に読み取れば解答できる。
● 問6は、マルクスとエンゲルスの思想を問う問題。マルクスの思想の「上部構造」「下部構造」の理解があれば解答できる。
● 【共通】問7は、ルソー、キルケゴール、デューイの思想を問う組合せ問題。「所有権も貧富の差も存在しない自然状態を理想」からルソー、「単独者」からキルケゴール、「知性を創造的なものとみなす」「民主主義社会」などからデューイと判断できる。
● 問8は、サルトルとカミュの作品と思想についての組合せ問題。bのサルトルの「本質に先立つ実存」は、落ち着いて判断する必要があった。cのカミュについては戸惑った受験生がいたかもしれない。
● 【共通】問9は、リード文の趣旨をふまえて結論を問う問題。リード文を順を追って読み取っていけば、正答にたどり着ける。
● 「日本の自然観」をテーマに、日本思想が網羅的に出題された。
● 問1は、仏教伝来後の神の捉え方の変化についての組合せ問題。空欄aは「神仏習合」で行われるようになったこと、bは「権現思想」の意味を正しく理解できているかどうかがポイントであった。
● 【共通】問2は、源信の思想を問う問題。誤答選択肢が空也、慶滋保胤、一遍と明確なので、消去法で解答できる。
● 問3は、吉田兼好、世阿弥、千利休の思想の組合せ問題。それぞれの思想家が考える美について、キーワードが入っているが、深い理解が問われており、受験生は判断に苦しんだのではないか。吉田兼好と「あはれ」が結びつかなかった受験生もいただろう。
● 【共通】問4は、賀茂真淵の著作を選ぶ問題。『万葉代匠記』で迷った受験生もいたのではないか。
● 【共通】問5は、二宮尊徳の思想を問う問題。正答にキーワードがなく、「推譲」「天道」「人道」の正確な理解が求められた。
● 問6は、人間として望ましい行いについて説いた思想家について書かれた3つの文章が、それぞれ誰をさしているのかを判断させる組合せ問題。鈴木正三については、学習が及んでいない受験生もいたと思われるが、ウを石田梅岩、イを熊沢蕃山と確定していけば、正答にたどりつける。
● 【共通】問7は、南方熊楠の思想を問う問題。誤答選択肢が柳田国男、折口信夫、田中正造と明確であり、平易であった。
● 問8は、『風土』の資料読み取り問題。資料文より、和辻哲郎の「間柄的存在」の内容を踏まえて正答を判断する必要があった。
● 【共通】問9は、リード文の趣旨を問う問題。リード文の内容から判断は容易であった。
● 「西洋近現代思想や芸術活動のなかの想像力」をテーマに、西洋思想のトマス・モア、パスカル、カント、マルクスとエンゲルスなどについて出題された。
● 問1は、レオナルド・ダ・ヴィンチに代表されるルネサンス時代の理想の人間像を選ぶ基本問題。迷わず正答を選びたい。
● 【共通】問2は、トマス・モアの『ユートピア』の内容を選ぶ問題。誤答選択肢がアダム・スミス、マキャヴェリ、ホッブズであるとわかるため、平易であった。
● 問3は、パスカルの思想を選ぶ問題。正答のパスカルにはキーワードがないが、誤答選択肢がデカルト、ベーコン、ピコ・デラ・ミランドラと判断でき、消去法で解答できる。
● 【共通】問4は、カントの著作についての問題。bの『判断力批判』はカントの著作として受験生にはなじみがなかったのではないかと思われる。
● 【共通】問5は、ゲーテの資料読み取り問題。ゲーテについての知識がなくても、資料文を丁寧に読み取れば解答できる。
● 問6は、マルクスとエンゲルスの思想を問う問題。マルクスの思想の「上部構造」「下部構造」の理解があれば解答できる。
● 【共通】問7は、ルソー、キルケゴール、デューイの思想を問う組合せ問題。「所有権も貧富の差も存在しない自然状態を理想」からルソー、「単独者」からキルケゴール、「知性を創造的なものとみなす」「民主主義社会」などからデューイと判断できる。
● 問8は、サルトルとカミュの作品と思想についての組合せ問題。bのサルトルの「本質に先立つ実存」は、落ち着いて判断する必要があった。cのカミュについては戸惑った受験生がいたかもしれない。
● 【共通】問9は、リード文の趣旨をふまえて結論を問う問題。リード文を順を追って読み取っていけば、正答にたどり着ける。
5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 | 2009 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 58.83 | 69.01 | 69.42 | 68.66 | 71.51 |
6.2015年度センター試験攻略のポイント
● 例年、思想家や思想の内容理解を問う出題が中心なので、各選択肢が「誰の思想か」を判断できるよう、重要語句は、用語だけでなく、その意味内容までおさえる学習を徹底しておきたい。その上で、相違点や共通点、思想史的な流れもおさえておくと、効果的である。
● また、思想家の生きた時代背景や本人のエピソードなどをおさえておくと解答しやすい場合もあるので、思想と合わせて把握するように心がけたい。
● 資料読解問題は例年出題される。読解力・論理的思考力を問う問題は慣れることが必要なので、類題演習を積んでおきたい。
● リード文の読解や3行以上の長い選択肢についての正誤判断も求められる。国語的な側面も含め、選択肢の正誤判断をすばやくできるように演習を積んでおきたい。
● 現代の思想家は、フーコーやハーバーマスなどの構造主義・ポストモダン・フランクフルト学派の思潮や、注目度の高い人物を一通りおさえておきたい。
● 現代の諸課題については、「倫理」の枠にとらわれずに学習することが必要である。教科書・資料集レベルのキーワードは一通りおさえておきたい。日ごろから新聞やニュースにふれ、生命倫理や環境問題などについて、制度面の動きや課題のポイントなどを把握しておきたい。
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