問題講評【地理B】

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1.総評

【2014年度センター試験の特徴】

・例年同様、標準的な資料が中心の出題であったが、読解に時間を要する資料も散見された。
・原理・原則の理解をもとに類推、考察する力が求められた。
・歴史的背景や経緯を踏まえた出題が見られた。
・難易は昨年より易化。

 大問数6、解答数36で解答数が昨年に比べて1個増加した。昨年同様、第6問の「地域調査」の全設問が地理Aとの共通問題であった。例年同様、地図・地形図・統計表・グラフなど多彩な資料が用いられ、地理的な技能が要求された。また、歴史的背景や経緯を踏まえた出題も散見され、対策をとっていなかった受験生は戸惑ったと思われる。

2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数6、解答数36。解答数が昨年に比べて1個増加した。第6問が地理Aとの共通問題。
【出題形式】 地図、地形図、統計表、グラフなど、例年通り多様な資料が扱われ、地理的考察力が求められた。解答形式では組合せ問題と6択問題がやや増加した。また、第5問「現代世界の諸課題」では文章選択肢の正誤を判断させる問題において、順不同で解答を2個選ばせる設問(選択肢数は6)が出題された。
【出題分野】 例年通り「自然環境分野」「産業分野」を中心とした出題。「地域調査」「地誌」「現代世界の諸課題」も例年と同様の出題構成であった。
【問題量】 昨年並。
【難易】 昨年より易化。

3.大問構成

第1問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
世界の自然環境 16点 標準 地形、土壌、気候
第2問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
世界の資源と産業 17点 やや易 農業地域の成立、農業、鉱業、工業、産業立地、株式市場の規模
第3問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
都市と生活文化 17点 標準 都市、生活文化
第4問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
西アジアとその周辺地域の地誌 17点 標準 自然環境、資源・産業、都市、生活文化、民族・宗教
第5問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
現代世界の諸課題 16点 やや易 環境問題、医療
第6問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
愛知県知多半島の地域調査 17点 地域調査
※地理Aとの共通問題

4.大問別分析

第1問「世界の自然環境」

● 自然環境を扱った出題であり、全体として標準的な難易であった。基本的な設問も見られたが、資料が多く使われており、解答に時間を要したと考えられる。

● 問1は、地図中の海域にみられる地形の特徴とその成因に関する出題であった。アからエで示された海域は、なじみの薄い場所であるため、苦戦した受験生も多かったと推測される。海域イは、アメリカ大陸東部に新期造山帯が見られないことが判断のポイントであった。

● 問2は、地震発生数に関する出題であり、多くの受験生は図の読解に時間を要したと思われる。緯度帯ごとに大陸やプレート境界、火山の位置関係を理解できていることが正答を導くカギとなった。カとクの判別で迷ったかもしれないが、クは北緯40度以北で、地震が発生していないことからA、カはアルプス=ヒマラヤ造山帯の影響で赤道近辺の地震発生数が多いことからBと判断できる。

● 問5は、図中の4地点における気温の年較差と年平均気温に関する出題であった。ケッペンの気候区分をしっかりと理解していれば正答を導くことができるが,受験生にとっては馴染みのある雨温図の問題よりも時間を要したであろう。本問は、ケッペンの気候区分をもとに考察する必要があるため、地理的思考力が問われた問題であった。

第2問「世界の資源と産業」

● 世界の資源と産業を扱った出題。標準的な内容が多く、基本的な内容をおさえておけば受験生は取り組みやすかったと思われる。

● 問2は、米の生産量と輸出量に関して、アメリカ合衆国、インド、タイ、中国を判断する問題。オーソドックスな統計指標の読み取り問題であり、受験生にとって取り組みやすい内容であった。タイが輸出国であること、インド、中国が世界的に生産量が多い国であることをおさえることができていれば容易である。

● 問3は、金鉱、銀鉱、鉄鉱石の産出量の上位国を判断する問題。銀鉱は、授業等であまり扱われないが、受験生は金鉱と鉄鉱石を判断することで正答を導くことができたであろう。金鉱と鉄鉱石は、産出量の上位国が類似しているため判断が難しいが、カラジャス鉄山を持つブラジルの割合が高いことから、カをブラジルと判断し、南アフリカ共和国の割合が高いことからキを金鉱と判断できる。

● 問4は、1980年と2010年における韓国とフィリピンの輸出品目の変化に関する出題。それぞれの国の輸出品目から、韓国は、「軽工業から重工業」へ、フィリピンは「1次産品から工業化」という流れに気づくことが正答を導くポイントであった。韓国、フィリピンともによく扱われる国であるため、受験生にとっては取り組みやすかったと推測される。

第3問「都市と生活文化」

● 全体として基本的な資料が多い中で、受験生にとってなじみの薄い統計指標もみられた。

● 問2は、ロンドンとその周辺における異なる時期の都市計画についての年代整序の問題であり、都市計画の歴史的な流れが問われた。田園都市構想と大ロンドン計画は、目的が類似しているため時期を混同した受験生も多かったと推測される。

● 問4は、人口約40万人の日本のある市における施設の立地に関する問題であり、資料の読解力が求められた。大型小売店、銀行、小学校の立地が問われた。小学校は、一定の間隔を持って立地するため、スと判断する。大型小売店と、銀行で迷いやすいが、駅周辺の立地が多いことからシを銀行と判断し、郊外のロードサイドに集中していることからサを大型小売店と判断することができる。新課程のセンター試験においても、GISを用いて本問のような出題がみられることが予想されるため、類題の演習を積んでおきたい。

● 問5は、いくつかの地方における県庁所在地の住宅1戸当たりの延べ床面積と1月から3月の月平均光熱費を扱った問題である。冬の光熱費が高いPが北海道・東北、光熱費の低いQを関東と判断できる。RとSでは、光熱費にほとんど差がないため判断に迷うが、中部地方に北陸が含まれ光熱費が高いことと持ち家率の高い富山県などが含まれていることを考えるとSを中部、もう一方のRを中国と判断できる。県庁所在地の住宅1戸当たりの延べ床面積は受験生にとってなじみの薄い統計指標であり、十分に活用することができなかったと推測される。

第4問「西アジアとその周辺地域の地誌」

● 西アジアとその周辺地域の自然環境、産業、生活・文化などがバランスよく出題された。

● 問1は、集落(都市・村落)の分布図を扱った問題であり、地図の読解力が求められた。首都の分布とティグリス川、ユーフラテス川の流れに沿って集落が分布していることに気づくことができた受験生は正答を導くことができたであろう。

● 問2は、イラン、クウェート、サウジアラビア、トルコの利用可能な水資源に関する出題であり、地表水、地下水、淡水化水を判断する問題であった。地表水と地下水の判断に迷うが、トルコが他国に比べ湿潤であることから、アを地表水、サウジアラビアでセンターピボットが用いられていることからイを地下水と判断したい。

● 問3は、石油の生産量上位8か国について、1人当たりGDPとGDPに占める石油収入の割合に関する出題であり、アラブ首長国連邦、イラン、サウジアラビアを判断する問題であった。人口をカギに正答を導きたいところだが、イランとサウジアラビアの判断が難しい。イランとサウジアラビアの石油の輸出量を想起できた受験生は正答を導きやすかったであろう。

第5問「現代世界の諸課題」

● 扱われたテーマは広いが、判断のポイントが分かりやすい問題が多かった。

● 問4は、1人当たりの年間一般廃棄物発生量と一般廃棄物発生量全体に占めるリサイクルされる量の割合に関する出題であり、アメリカ合衆国、スウェーデン、メキシコを判断する問題であった。アメリカ合衆国とヨーロッパ諸国の社会的背景を把握しておく必要があった。

● 問5は、GDPに占める医療費の割合と、医療費に占める公的支出の割合に関して、アメリカ合衆国、インド、デンマークを判断する問題であった。標準的な問いであり、過去問等で演習を行った受験生にとっては容易であっただろう。医療費の割合が高いカがアメリカ合衆国で、公的支出に占める医療費の割合が高いキをデンマークと判断できる。

第6問「愛知県知多半島の地域調査」

● 資料は豊富だが、標準的な問題が中心であり、受験生にとっては取り組みやすかっただろう。

● 問4は、中部国際空港と名古屋港における輸出入品目の金額割合に関して、空港と港湾の輸出入品目を判断する問題であった。航空機を用いた輸送品の特徴と愛知県の工業の特徴をおさえておけば容易に正答を導くことができたであろう。

● 問6は、地場産業である窯業と他業種を比較した問題であり、文章と統計を読み取る力が求められた。文章中の「焼き物に使える粘土がとれたことから、窯業が起こりました。」という部分から、窯業が原料地を指向した工業であることが読み取れる。また、1事業所あたりの規模は、事業所数で他の統計指標を割れば容易に正答を導くことができる。

5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

年度 2013 2012 2011 2010 2009
平均点 61.88 62.16 66.40 65.11 64.45

6.2015年度センター試験攻略のポイント

● 地図や統計資料の読み取りを絡めた組合せ問題や文章選択問題が出題の中心である点は大きく変わっていないので、過去のセンター試験や模擬試験を繰り返し確認しておくことは有効な対策である。また、オーソドックスで基本知識の定着を確認する出題が多いため、基本的な知識については教科書でしっかり確認しておきたい。

● 統計表やグラフに関しては、数値の変化や差異が見られる点に着目し、背景を考える習慣をつけておきたい。仮説を立て、既習の広範な知識を駆使して検証するプロセスが大事である。

● 地域調査では例年、地形図読図が出題される。地形図読図は解答に時間を要するものの、地図記号、等高線、縮尺などの基礎事項をしっかりおさえておけば正答を導くことができる場合が多いので、日頃から地形図読図の演習を積んでおきたい

● 2014年度は、歴史的背景や経緯を問うものが散見された。都市計画など、実施された時期で内容が異なるものは時代背景も絡めておさえておきたい。

● 制限時間内に解答を完了できるよう時間配分に留意した演習を重ね、各設問に落ち着いて取り組めるようにしておくことが大事である。

● 各分野において軸となる重要事項、原理原則はしっかりとおさえ、たとえ知らない事項が出題されても、そこから応用して考察するスキルを習得することが大事である。多くの過去問に取り組み、どのような設問や出題形式に遭遇しても攻略の糸口を見つける対応力を培っておきたい。

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