問題講評【世界史B】

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1.総評

【2014年度センター試験の特徴】

・4択の文章選択問題が大幅に減少し、組合せ選択や記号選択の問題が増加した。
・戦後史の割合が大幅に増加した。
・地域は、西欧の割合が増加した。
・時期判断の問題は、全体の4分の1程度となり、昨年より減少した。

 大問構成、解答数に大きな変化はなかった。出題形式では4択の文章選択問題が大幅に減少し、組合せ問題などが増加した。地域の出題バランスは、昨年増加した西欧がさらに増加し、東アジアはやや減少した。受験生が苦手としがちな戦後史の割合が大幅に増加したが、時期判断の問題の減少や解答しやすい形式の問題が増加し、難易は昨年より易化した。

2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数4、解答数36は昨年から変更なし。
【出題形式】 4択の文章選択問題が大幅に減少(15→6)し、組合せ問題が増加(5→10)した。また、地図を使った問題は昨年より1問減少し2問出題された。年表を使った問題が増加(1→3)した。年代整序問題は昨年同様2問出題された。
【出題分野】 時代は、昨年減少した戦後史の割合が大幅に増加した。また、現代の割合が増加し、中世と近代の割合が減少した。地域は、昨年より西欧が大幅に増加して、東アジアは例年並であった。分野は、政治史が昨年よりやや減少し、文化史と社会経済史がやや増加した。
【問題量】 昨年並。
【難易】 昨年より易化。

3.大問構成

第1問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
世界史上の危機 25点 やや易 A 唐後半期の王朝の危機
B 世界恐慌が東南アジア植民地に与えた影響
C 戦後の危機の克服としてのヨーロッパ統合の動き
第2問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
世界史における家族や社会集団 25点 やや易 A 中央ユーラシアの遊牧民の社会と農耕地域の漢人社会の家族や社会集団
B インドの支配者による系譜作成
C アメリカ合衆国南部の奴隷制下の家族
第3問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
歴史上の国際関係 25点 標準 A 16世紀のスペインとフランスをめぐる国際関係
B 戦争をめぐる国際的な議論
C 19世紀の香港島や九竜半島をめぐるイギリスと中国の関係
第4問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
世界史における過去の認識のあり方 25点 やや易 A イスラーム教の預言者についての認識
B ソ連における過去の指導者についての認識
C ドイツ占領下におけるフランスがかかわったユダヤ人迫害についての認識

4.大問別分析

第1問「世界史上の危機」

● Aでは唐後半期の王朝の危機、Bでは世界恐慌が東南アジア植民地に与えた影響、Cでは戦後の危機の克服としてのヨーロッパ統合の動きをテーマに、政治や経済を中心に出題された。問2では、大問のテーマを反映したさまざまな危機の状況が問われた。全体の半数以上の設問で戦後史の知識が求められた。

● 問1では、リード文の空欄補充の組合せで、黄巣の乱と朱全忠が問われた。基本的な内容であり判断しやすかったであろう。基本的な語句は確実に理解しておきたい。

● 問2では、大問のテーマに沿った世界史上の危機について、古代から戦後まで問われた。エジプトがイスラエルにシナイ半島を占領されたのが第3次中東戦争であることの理解がポイントであった。難しいと感じた受験生が多かったかもしれない。

● 問4では、18世紀から20世紀の東南アジア各国の出来事が年代整序形式で問われた。bのスハルトがインドネシアの大統領に就任したこと、cのインドシナ共産党が成立した時期の判断は難しかったと思われる。東南アジアの大きな時代の流れを理解することが求められた。

● 問5では、ジャワの歴史と文化について問われた。パガン朝がミャンマーの王朝であることが判断できるかがポイントであった。東南アジアの歴史は、中国などの国々の動きとともに整理しておきたい。

● 問6では、二文の正誤判断形式で、貿易について問われた。GATT(関税と貿易に関する一般協定)の目的を理解していれば、判断は難しくない。

● 問8では、ベルリンの地図から、第二次世界大戦後にソ連が占領していた地域を選ぶことが求められた。世界史の学習に際しては、「いつ何が起こったか」だけではなく、起こった場所を地図で確かめておきたい。

● 問9では、欧州連合(EU)で導入された共通通貨(統一通貨)の名称が問われた。基本事項であり多くの受験生にとって解答しやすかったであろう。

第2問「世界史における家族や社会集団」

● Aでは中央ユーラシアの遊牧民の社会と農耕地域の漢人社会の家族や社会集団、Bではインドの支配者による系譜作成、Cではアメリカ合衆国南部の奴隷制下の家族をテーマに、古代から戦後史まで幅広い時代が出題された。

● 問1では、モンゴル帝国の後継者選出について、空欄補充の組合せで問われた。クリルタイもフビライ(クビライ)も判断しやすかったであろう。

● 問2では、中国の春秋時代から清代まで、幅広い時代の社会経済について問われた。社会経済史は受験生にとっては苦手としがちな分野であり、差がついたと思われる。

● 問3では、二文の正誤判断形式で、ドイツのユンカーと魏晋南北朝の門閥貴族について、基本的な内容が問われた。基本的な用語は正確に理解しておきたい。

● 問4では、リード文の空欄を補充する語句が組合せで問われた。リード文の「四つの身分」からヴァルナ、「王侯・戦士」からクシャトリヤを想起したい。

● 問5では、二文の正誤判断形式で、中世ヨーロッパの王や皇帝の選出について問われた。aの東フランクのカロリング家の血統断絶後の王の選出方法については判断に迷ったかもしれない。

● 問7では、リード文の空欄補充の組合せで、ストウ夫人とリンカンが問われた。基本事項であり、多くの受験生にとって判断しやすかったであろう。

● 問8では、二文の正誤判断形式で、aでアメリカ合衆国のワグナー法の内容、bでアメリカ労働総同盟の結成時期の判断が求められた。特にbは帝国主義の時代に労働運動が活性化することと関連付けた理解がポイントであり、多くの受験生には判断が難しかったと思われる。

● 問9では、アメリカ合衆国で女性参政権が認められた時期について年表形式で問われた。第一次世界大戦での女性の活躍が背景にあることの理解がポイントであった。

第3問「歴史上の国際関係」

● Aでは16世紀のスペインとフランスをめぐる国際関係、Bでは戦争をめぐる国際的な議論、Cでは19世紀の香港島や九竜半島をめぐるイギリスと中国の関係について、近世から戦後の政治を中心に出題された。

● 問1では、リード文の空欄補充の組合せで問われた。空欄の前後の文から、フェリペ2世とイギリスを想起したい。イギリスは迷わず判断できたであろう。

● 問2では、二文の正誤判断形式で、20世紀のスペイン内戦についての理解が問われた。aのフランスが不干渉政策をとったことの判断は難しかったと思われる。

● 問4では、19世紀末から20世紀初頭の国際関係について、空欄補充の組合せで問われた。ロシアとの再保障条約などから、ドイツとイギリスの対立の理解が求められた。

● 問5では、第一次世界大戦の講和条約の内容が問われた。ヴェルサイユ条約の内容を理解していれば、各選択肢の時代が離れていることもあり、判断は難しくない。

● 問6では、ニュルンベルク国際軍事裁判が行われた時期について年表形式で問われた。ニュルンベルク国際軍事裁判の目的を理解していれば、第二次世界大戦直後の時期が含まれるものを選ぶことができたであろう。

● 問7では、中華人民共和国の対外関係について年代整序形式で問われた。1960年代・1970年代の短いスパンの出来事であり、中華人民共和国とアメリカ・日本・ソ連との国際関係の推移が理解できているかが問われた。中ソ対立から中国がアメリカへ接近する流れの理解は、受験生にとって難しかったと思われる。

● 問8では、1990年代に起こった出来事について、朴正熙が日韓基本条約締結時の韓国大統領であることの理解が求められた。学習が手薄になりがちな戦後史であるが、1990年代の出来事まではおさえておきたい。

第4問「世界史における過去の認識のあり方」

● Aではイスラーム教の預言者についての認識、Bではソ連における過去の指導者についての認識、Cではドイツ占領下におけるフランスがかかわったユダヤ人迫害についての認識をテーマに、古代から現代まで政治史を中心に出題された。

● 問1では、地図中のメディナの位置が問われた。問題文からヒジュラを想起し、アラビア半島の都市であることが判断できれば難しくない。

● 問4では、空欄補充の組合せで、ピョートル大帝と建設した首都ペテルブルク(サンクト=ペテルブルク)について問われた。基本的な知識理解が求められた。

● 問5では、歴史書とその著書の組合せが問われた。『ローマ建国史(ローマ史)』とリウィウス(リヴィウス)は、文化史の基本的な内容である。文化史を苦手とする受験生は多いが、人物と主要な作品を整理しておきたい。

● 問6では、ドイツが第一次世界大戦前に支配した植民地が問われた。1880年代以降の太平洋諸地域の分割を想起し、マーシャル諸島を判断したい。タスマニアと迷った受験生がいたかもしれない。

● 問7では、世界史上の迫害や抑圧について、幅広い地域と時代の理解が求められた。ルイ14世のナントの王令(勅令)廃止によって亡命したのはユグノーであることは基本事項であり、判断は難しくない。

● 問9では、パリ=コミューンの樹立が宣言された時期について年表形式で問われた。第三共和政下で、パリ=コミューンより後に起こった出来事がドレフュス事件であることを想起できれば、正答を選べたであろう。

5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

年度 2013 2012 2011 2010 2009
平均点 62.43 60.93 61.46 59.62 62.70

6.2015年度センター試験攻略のポイント

● 世界史Bでは、教科書にある内容をそれぞれ丁寧におさえておくことが欠かせない。一つの地域や時代の枠内で重要事項をきちんと整理し、それぞれの時代の特徴を把握したうえで、同じ時期のヨコのつながりや、時代の枠組みをこえたタテのつながりを意識した学習が重要である。同時期にほかの地域で起こった出来事が結びつくように、世紀ごとに世界を見渡すことに慣れておきたい。それぞれの出来事を各世紀の前半・後半に分類できるように備えておくとよいだろう。近代以降は、さらに短いスパンでおさえておくことが求められる。学習を進める度に、図説などの「●世紀の世界」として示されたページと、地域ごとに配列された年表を活用しながら、既習事項との関連をおさえ、より理解を深めるようにしたい。

● ヒトやモノの移動、社会史的なテーマ、生活に身近なモノから見た歴史や接触と交流など、複数の地域が絡む事項については、相互の関係や時代背景、その後の影響などを丁寧に整理しておきたい。また、東南アジア・朝鮮・中央アジア・ラテンアメリカ・アフリカなど、教科書で分散して扱われる地域については、中国や西欧、アメリカなどの動きに並行させて民族・王朝・国家などの時期を把握しておくよう注意したい。なお、これらの地域についても、戦後史を含めて、必ず歴史の流れを整理しておくことが必要である。

● 一つの事項が該当する時期・地域を確認するとともに、その背景・原因となった事象や、その後の社会に与えた影響など、有機的な関連性を意識して、日頃から学習を進めたい。また、個別の事項の詳細に踏み込みすぎず、歴史の流れを大局的にとらえることも心がけたい。

● 主要な王朝・国家・都市は、関連事項とその位置を地図で確認しながら学習を進めるようにしたい。同時期のヨコのつながり、王朝・国家の支配領域についても、同時期に存立していた王朝や隣接する王朝などにも注意しながら、図説などの地図を活用して視覚的におさえておくことが欠かせない。なお、地図を見るときには、教科書本文で触れられる主要な河川や半島などの位置もあわせて確認し、位置をおさえる目安として補っておくことが望ましいだろう。

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