問題講評【英語(リスニング)】

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1.総評

【2014年度センター試験の特徴】

・大問数・解答数・配点・出題形式とも、昨年から変更なし。
・多くの情報を正確に聴き取る力とその情報を素早く処理する力が求められた。
・読まれる英文の総語数は1139語で、昨年並。読み上げられる速度は、全体では昨年よりやや遅くなり、大問別にみると第1問、第3問が遅くなった。
・難易は昨年よりやや易化。

 設問数・出題形式など全体として昨年からの大きな変更はなかった。また、英文が2回読まれる点は、リスニング実施初年度から変更がなかった。読み上げられる速度は、全体としては昨年よりやや遅くなっており、特に第1問、第3問で遅くなった。昨年の特徴であった読み上げられる英文の情報量が多いという点は、今年も続いた。複数の数値とその意味をあわせて理解する必要がある問題や、本文全体に含まれるいくつもの情報を整理したうえで総合的に判断する問題などが出題され、選択肢を含め、日常的な口語表現が多く含まれる傾向も昨年から変更がなかった。英文の情報量や読み上げられる速度、音声の明瞭さなどから総合的に判断すると、難易は昨年よりやや易化した。

2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数4、解答数は25個で、昨年から変更なし。
【出題形式】 会話文とモノローグによる出題で、昨年から大きな変更なし。
【出題分野】 昨年と同様に日常会話や説明文、表の空所補充や計算問題が出題され、日常的な口語表現が多く含まれていた。
【問題量】 読まれる英文の語数は昨年並(昨年1131語→今年1139語)。
【難易】 昨年よりやや易化。

3.大問構成

第1問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
短会話・Q&A選択 12点 標準
第2問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
短会話・応答文選択 14点 標準
第3問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
会話文・Q&A選択/表完成 12点 やや易 A「買い物に誘う場面の会話」、「映画の開始時間に遅れた場面の会話」、「バス乗り場までの行き方についての会話」
B「外国人観光客にとって人気のある都道府県」
第4問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
モノローグ・Q&A選択 12点 標準 A「クスコの観光案内」、「一人暮らしのお金の使い方」、「“It’s all Greek to me.”という表現の由来」
B「三世代同居の利点」

4.大問別分析

第1問「短会話・Q&A選択」(短い会話を聴いて質問に答える形式)

● 読み上げられる会話の発話数は、昨年から変更なく、すべての設問で4であった。読み上げられる語数は昨年並であったが、読み上げられる速度は平均で約153語/分であり、昨年(約172語/分)と比べると遅くなった。会話の場面や話題は日常の生活場面を意識したものが多かった。

● イラスト選択問題は、「動物の携帯ストラップ」(問1)、「女性のスケジュール」(問6)の2問が出題された。いずれの問題も会話の流れが分かりやすく、聴き取るポイントがはっきりしているので比較的取り組みやすかった。問6は、イラスト内の情報量が多かったが、except Wednesdays、a dentist appointment that eveningを聴き取ることができれば解答できる問題であった。

● 数値を聴き取って計算する問題は、昨年と変更なく2問出題された。問4は海外にはがきを送る際の料金について答える問題、問5は会議に出席する時間について答える問題であった。問5は、現在の時刻、会議までの残り時間、女性が遅れる時間、の3つの情報から解答を導き出すことがポイントであった。計算自体は複雑ではないが、それぞれの数値とその数値が示す意味を正確に理解することが求められた。

● 問2の「学校が始まる月」に関する問題は、日本の開始月である4月を起点に、この会話がいつ行われているのかを答える問題。3番目の女性の発話one month earlier than Japanから、女性の国では3月に始まることが分かる。ただし、設問文を読むと「この会話が行われたのはいつか」とあるため、最後の男性の発話That’s next month!をもとにFebruaryを選ぶことが求められた。

第2問「短会話・応答文選択」(会話のあとに続く応答を選ぶ形式)

● 読み上げられる会話の発話数は、昨年から変更なく、すべての設問で3であった。読み上げられる会話の語数は昨年並であった。また、読み上げられる速度は平均で約176語/分で昨年並であった(昨年は約180語/分)。昨年同様、短い会話全体からその場面や状況を把握して、適切かつ自然な応答を判断する力が求められた。

● 会話の場面や話題としては、「教科書が読めない理由についての会話」(問7)、「Web上で申込書式に記入する場面」(問8)、「ハンバーガーを買いに行く場面」(問9)、「人から本を借りる場面」(問10)、「パーティーで会った人物を思い出す場面」(問11)、「忘れ物をしたことに気づいた場面」(問12)、「クラブのキャプテンに選ばれたことについての会話」(問13)が出題された。いずれも実生活場面を意識した内容であり、口語表現を多く含む自然な会話であった。

● 問9は、会話の流れを踏まえ、男性を待たせている女性の発話を選ぶ必要がある。誤答選択肢1 How long does it take?は男性の立場での発言であり、誤答選択肢3 I’ll wait here too.はかばんを取りに行く女性の行動と合わない。誤答選択肢4 Would you like to pay now?は会話が行われている場面に合わない。解答する際には、会話の流れを踏まえたうえで、最後の応答文はどの場面で誰が誰に対して発言するものなのかをつかむことがポイントであった。

第3問「会話文・Q&A選択/表完成」(会話を聴いて質問に答える形式/表を完成させる形式)

● 読み上げられる会話の発話数は、Aが5〜8(昨年は5〜6)で、Bが昨年から変更なく11であった。読み上げられる会話の語数は、昨年並であった。読み上げられる速度は、Aが平均で約161語/分(昨年は約180語/分)、Bが平均で約148語/分(昨年は約164語/分)と、どちらも昨年と比べて遅くなった。

● Aの会話の場面や話題としては、「買い物に誘う場面」(問14)、「映画の開始時間に遅れた場面」(問15)、「バス乗り場までの行き方についての会話」(問16)が出題された。

● Aの問15は、会話中に時間の表現、映画や映画館の名前などの固有名詞が含まれていたことから、受験生にとっては聴き取りづらかったかもしれない。設問文では「いつ女性は映画を見に行くのだろうか」と問われているが、特定の時刻ではなく、会話全体を聴き取ったうえで「別の日にする」ということをつかむことがポイントであった。

● Bは、「ホストファミリーをどこへ案内するか」という会話を聴き、冬に日本を訪れる外国人観光客にとって人気のある都道府県の表を完成させる問題であった。表の情報および聴き取る内容が都道府県の順位のみであったことから昨年と比べて取り組みやすい問題であっただろう。

第4問「モノローグ・Q&A選択」(英文を聴いて質問に答える形式)

● 読み上げられる英文の語数は、Aが3問合計で289語(昨年は292語)、Bでは202語(昨年は196語)と昨年並であった。読み上げられる速度は、Aが平均で約142語/分で昨年並(昨年は約143語/分)、Bは平均で約138語/分と昨年(約133語/分)と比べるとやや速くなった。

● Aは、「クスコの観光案内」(問20)、「一人暮らしのお金の使い方」(問21)、「“It’s all Greek to me.”という表現の由来」(問22)についての問題であった。形式に変更はなく、昨年同様いくつもの情報を把握したうえで解答する必要があった。

● Aの問21は、昨年同様順番を問う問題で、一人暮らしのお金の使い方について話者が提案している順番を答える問題であった。選択肢内のキーワードは一部、読み上げられる英文中の表現から言い換えられたものであり、それを見抜いたうえで順番を聴き取ることがポイントであった。

● Bは、「三世代同居の利点」についての長めの英文が出題された。個々の設問をみると、いずれの設問も設問文に対応する箇所を正確に聴き取り、本文を言い換えている表現を見抜いて正答を選ぶ必要がある点は昨年から変更がなかった。

● Bの問24は多世代家族で暮らすことで孫が学ぶことについて、問25は孫と一緒に暮らすことで高齢者が得ることについて問う問題であった。設問文を読み選択肢を一見すると、一般常識や固定観念からどれも正しい内容のように思えるが、実際に読み上げられる英文で触れられているのは正答選択肢のみである。与えられた選択肢のうち、英文内で述べられていることはどれであるかに注意して聴き取ることがポイントであった。

5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

年度 2013 2012 2011 2010 2009
平均点 31.45 24.55 25.17 29.39 24.03

6.2015年度センター試験攻略のポイント

● 今年は、形式・配点ともに、変更がなかった。部分的な聴き取りで正答を導くのではなく、複数の情報をもとに判断したり、すべての内容から総合的に判断したりする、いわば聴解力と同時に思考力を要する傾向は、昨年から変更がなかった。また、より実践的なリスニング力が求められている。したがって今後の対策としては、過去問や模擬試験の問題を利用して類題演習を行うことはもちろん、常に「実践的な場でのリスニング」を想定し、英語で聴いて英語の質問に答える練習、英文の書き取り(ディクテーション)・音読などを、日々の学習の中にできるだけ多く取り込んでおくことが必要であろう。

● 今年は読み上げられる速度は、全体ではやや遅くなった。会話文は約148〜176語/分、モノローグは約138〜142語/分であった。また、今年も例年同様全体を通して語と語の音の連結や脱落などが含まれており、重要な部分の聴き取りが難しかったり、状況・場面が把握しにくかったりすることがあった。日々の学習の中で、ナチュラルスピードで話される英文を聴く練習が今後も引き続き必要である。

● 今後は新指導要領の導入に伴い、より実践的な出題形式・内容の検討がなされる可能性もある。形式が急に変わっても対応できるよう、類題対策のみならず、基本表現の聴き分けから状況判断や要点理解に至るまで、本質的なリスニング力養成を目指して、準備を万全にしておきたい。

● 実戦的なセンター試験対策を行う時期には、解答に必要な語句を正確に聴き取るだけでなく、印刷されている設問文や選択肢にも事前に目を通し、それらの意味を素早く把握したうえで、どんな状況や場面の英文かを予測しながら聴き取る練習にも力を入れておきたい。また、複数の情報が読まれたり、正答に関わる箇所の英文が選択肢では言い換えられたりすることが多いという傾向を熟知したうえで、メモの取り方なども含めた解答の仕方を練習する必要がある。

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