問題講評【英語 (筆記)】

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1.総評

【2014年度センター試験の特徴】 

・第3問Bで新傾向の問題が出題されるなど、昨年よりもさらに実践的コミュニケーション能力を測ることを意識した問題構成・内容になった。
・時間内に読まなければならない英文の量は依然として多く、今年も様々な読解スキルの習熟度を試す問題が出題された。
・難易は昨年並。

 昨年と同様、時間内に読まなければならない英文の量は依然として多く、目的に応じて読み方を変え、いかにはやく要点をつかめるかがポイントであった。また、第2問Cや第3問Aでは会話形式での出題が増え、第3問Bではまとまりをよくするために取り除いた方がよい一文を選ばせる新傾向の問題が出題されるなど、昨年よりもさらに実践的コミュニケーション能力を測ることを意識した問題構成・内容になった。その他の問題においても、いくつか出題形式に変更はみられたが、全体としては標準的なレベルの問題が多かったため、難易は昨年並。

2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数は6で昨年と変更なし。解答数は昨年と同様、55個であった。
【出題形式】 いくつか形式に変更があった。第2問Aの文法・語彙語法問題では、問8〜問10で空所2ヵ所に入る語の組合せが問われた。第2問Cの語句整序では選択肢の数が昨年の5個から6個に増えた。第3問では、昨年出題された文補充がなくなり、新たに、取り除いた方がよい一文を問う問題が出題された。第4問Aのデータ読み取りでは、設問数が昨年は3個だったが、今年は4個に増えた。第2問〜第4問で昨年から配点にやや変化があった。
【出題分野】 発音・アクセントから、読解、視覚情報を含む英文理解までの幅広い領域が問われており、多岐にわたるジャンル・形式の出題であった。
【問題量】 昨年並(昨年:約2830語→今年:約2820語)。
【難易】 昨年並。

3.大問構成

第1問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
発音・アクセント 14点 標準
第2問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
文法・語彙語法・会話・語句整序 44点 標準
第3問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
語句類推・不要文指摘・発言要約 41点 標準 C「アメリカの高校における外国語カリキュラムの見直し」
第4問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
データ読み取り(図表・広告) 35点 標準 A「アメリカの国内移住と定住に関する報告書」
B「マラソン大会の申込みに関するウェブサイト」
第5問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
陳述読解 30点 標準 「スペイン人画家の日記とその孫が彼に宛てた手紙」
第6問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
長文読解 36点 標準 「オーディオ機器の発達と音楽鑑賞のあり方」

4.大問別分析

第1問「発音・アクセント」

● Aの発音問題は、合計3問(母音2問、子音1問)の出題で、昨年から母音の出題が1問増えた。問3の形容詞loose(つながれていない、結んでいない、ゆるんだ)については、日本語での発音(ルーズ)との違いと動詞lose(〜を失う)の発音との違いの両方に注意する必要があった。

● Bのアクセント問題は、合計4問(2音節の単語1問、3音節の単語2問、4音節の単語1問)の出題で、昨年と同様、4つの単語のうち第一アクセントの位置が他の3つと異なる語を選択する形式であった。カタカナ語(parade、category)の出題もみられ、日本語での発音と英語での発音の違いを理解できているかが問われた。

● A・Bともに昨年と同様、高校生になじみの薄い単語の出題はなく、取り組みやすかった。

第2問「文法・語彙語法・会話・語句整序」

● Aの空所補充問題では、問1〜問7は昨年と同様の形式で出題され、問1<知覚動詞(see)+O+V-ing>、問2<現在完了進行形>、問3<名詞節whether ... or ...>、問4<使役動詞(have)+O+V>、問5<take it for granted that ...>、問6<tellの用法>,問7<add up ...>が出題された。問8〜問10は空所2ヵ所に入る語の組合せを問う形式に変更され、問8<料金を表す語(fareとcost)の使い方>と<指示代名詞those+who>、問9<「かつて」を意味するonceとeverの使い方>と<経験を表す現在完了形の語法>、問10<make ends meet>と<接続詞(so)>が問われた。いずれも基礎〜標準的な問題であるが、問8〜問10に関しては空所2ヵ所とも正解する必要があることから、正答率は想定よりも伸び悩むだろう。また、問2は「メールをお互いに送る」という設定で、emailが動詞として使われるなど、日常的な場面を意識した出題がみられた。

● Bの会話問題では、それぞれ「何をして過ごすかを決められない友人との会話」(問1)、「話し出すと止まらない友人についての会話」(問2)、「携帯電話を服に入れたまま洗濯してしまった息子とその母親の会話」(問3)が出題された。昨年と同様、会話の定型表現を問う問題ではなく、いずれも話の流れをつかみ、それに沿った発言を選ばせる出題であった。どの設問についても身近な話題で読みやすく、紛らわしい選択肢もなかったため、取り組みやすい問題であった。

● Cの語句整序問題では、それぞれ問1<advise+O+to+V>、問2<talk+O+into>、問3<get caught in ...>が出題された。また、3問とも会話形式の出題で、各設問の選択肢の数は、昨年は5個であったが、今年は6個に増えた。

第3問「語句類推・不要文指摘・発言要約」

● Aの語句類推問題は単語exuberant(問1)と慣用表現get cold feet(問2)の意味を問う問題が、いずれも会話形式で出題された。それぞれのトピックは「意気消沈していた友人についての会話」(問1)、「旅行をキャンセルしたことについての会話」(問2)であった。問1はMaryの2番目の発言she did really well ... she enjoys a lot.から意気消沈していた友人が今は元気であることがわかり、そこからexuberantはプラスの内容を表す語であると判断できた。問2はJacobの2番目の発言It’s a shame that you felt too anxious ... .から、下線部を含む1文が「1人で旅行に行くことが不安だったから旅行をキャンセルした」という内容であると推測できるかがポイントであった。

● Bでは、まとまりをよくするために取り除いた方がよい一文を選ばせる新傾向の問題が出題された。それぞれのテーマは「親の発問と子どもの成長の関係について」(問1)、「都市への人口流入とその懸念点」(問2)、「金魚を長生きさせるための飼育のコツ」(問3)であった。これまでにない出題であったため、とまどった受験生もいたかもしれないが、英文の主旨をつかみ、前後の文との関連性に注意しながら読解すると正答が選べた。昨年まで出題されていた文補充問題と比較すると、論理的な英文を書いたり話したりすることにつながる、実践的コミュニケーション能力を測る出題であったといえる。

● Cの発言要約問題では、昨年第3問Bで出題されたディスカッション形式での発言を要約する問題が出題され、「アメリカの高校における外国語カリキュラムの見直し」に関する内容であった。昨年と同様、部分的な内容の読み取りではなく、話者が何を主張しているのかをつかむ力が求められた。

第4問「データ読み取り(図表・広告)」

● Aの図表読み取り問題では、「アメリカの国内移住と定住に関する報告書」について出題され、昨年は表が出題されたが、今年はグラフが2つ出題された。設問数が昨年は3問であったが、今年は4問に増え、内容把握問題やグラフに関する問題に加え、最終パラグラフに続く内容を予想させる設問が出題された。問2は、グラフ中の空所に当てはまる州を答えさせる問題で、第3パラグラフから、移住者の割合が最も高い州と最も低い州がどこであるかが読み取れれば正解できた。新傾向の設問であった問4は、本文が「移住」と「定住」に関して二項対立的に説明している文章であることをおさえられていれば、最終パラグラフに続く内容は「定住する理由」であると予想できた。

● Bでは、「マラソン大会の申込みに関するウェブサイト」の情報を読み取る問題が出題された。語彙や内容自体はそれほど難しくはないが、必要な情報を取捨選択しながら時間内に読み取ることが求められた。問2の計算問題では、設問文で問われている参加者の情報に注意し、計算に必要な情報がある箇所は表の最終行とその下にある2つの注意書きであることを見抜く必要があった。

第5問「陳述読解」

● 英文は「スペイン人画家(サルヴァドール)の日記とその孫(チトセ)が彼に宛てた手紙」であり、内容把握問題(問1〜問4)とイラストに関する問題(問5)が出題された。英文の分量はほぼ昨年並であったが(約640語→約660語)、2人の間でどのようなやり取りがなされたのかを正確に読み取る必要があった。チトセの手紙は、日記で書かれている出来事から1年後に書かれたものであることを踏まえて読解できるかもポイントであった。

● 問3は本文と一致する内容を選ばせる問題で、祖父とチトセがそれぞれ、いつ、どの程度の期間で肖像画を描いたのかを正確に読み取らなければならず、正答がどれかを判断するのに時間がかかっただろう。

● 問5のイラストに関する問題については、昨年はイラストで表現された出来事を出現順に並びかえる問題が出題されたが、今年は本文の内容と一致するイラストを選択する問題が出題された。チトセの手紙の第4部から、肖像画には、祖父の「現在」の姿とチトセの「過去」の姿が描かれているという内容を読み取ったうえで、チトセの「過去」の姿については、祖父の日記の第2部から読み取り、正答となるイラストがどれかを判断する必要があった。

第6問「長文読解」

● 英文は「オーディオ機器の発達と音楽鑑賞のあり方」についてであり、昨年と同様にA・Bのパートに分かれ、Aでは内容把握問題が、Bでは昨年と同様に、表を完成させる形式で、段落の要旨を選ぶ問題が出題された。英文の分量はほぼ昨年並(約630語→約660語)であり、昨年と比べて難しい語彙の数は減っているが、第5・6パラグラフで述べられている「音楽鑑賞のあり方」に関する筆者の主張が、それ以前のパラグラフとどのような関連があるかを一読するだけで理解するのは難しく、とまどった受験生もいたと考えられる。

● Bは、昨年は解答数が5個であったが、4個に減り、取り組みやすくなった。ただし、第5・6パラグラフの要約に相当する選択肢が抽象的に表現されているので、本文と照らし合わせながら慎重に解答する必要があった。

5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

年度 2013 2012 2011 2010 2009
平均点 119.15 124.15 122.78 118.14 115.02

6.2015年度センター試験攻略のポイント

● 今年のセンター試験において、いくつか形式に変更がみられたように、今後も実践的コミュニケーション能力を測る問題が、様々な形式で出題されると考えられる。引き続き、どのような形式で出題されても対応できるように、英文を読む練習だけでなく、書く練習、話す練習もさせ、幅広い英語力を身につけさせておきたい。

● 第1問では、頻出単語の発音・アクセントに絞って演習を行うのではなく、通常の授業や英語学習の中で、教科書や問題集の音読などを通して常に正確な発音で英文を読む習慣を身につけさせたい。また、昨年と同様、今年はカタカナ語の出題がみられたので、今後も注意が必要である。

● 第2問では、より日常的な場面で使用する語彙・語法の出題が散見された。教科書の学習にとどまらず、広く英語に触れる機会を持ち、多様な語彙・イディオムの習得に努めたい。語彙学習の際には、英和辞典で複数の意味や例文を確認したり、英英辞典を使って、その語の持つイメージを思い浮かべたりしながら習得する習慣をつけさせたい。また、日常的な場面でよく使われるイディオムや語と語のつながりについても、文法の基本事項とともに低学年からの定着を徹底させたい。

● 第3問Aの語句類推問題では、前後の文脈から難語やフレーズの意味を推測する力が求められる。英文読解の際に、未知語が出てきてもすぐに辞書を引かずに、いったん前後の文から推測したうえで、最後まで英文を読み進めて内容を把握する習慣をつけさせたい。Bでは、英文の主旨をつかみ、前後の文との関連性に注意しながら、不要な一文を選ぶ問題が出題された。英文を書かせる際にも、主題に沿った論理的な英文を書かせることが、本問を解く力の養成になるだろう。Cでは、発話者ごとの発言内容の要旨を把握しながら読むことが求められており、日頃から内容をおおまかに理解しながら読む練習をさせたい。

● 第4問Aのデータ読み取り問題では、今年はグラフが出題された。今後も多様な形式の図表が出題されると考えられるので、英文から具体的な数値や数値に関する表現を読み取ったり、項目の傾向を把握したりする力を身につけさせておきたい。Bの広告文問題では、必要な情報を複数見つけて正答を導くスキャニング力の養成につながる演習をさせたい。

● 第5問の陳述読解問題では、複数の英文を与えて、分散した情報の中から求められている内容を引き出す練習を行っておくとよいであろう。さらに、今年は2人の人物の心情の読み取りも必要であったので、日頃の学習では論説文だけではなく、小説やエッセイなど様々なジャンルの英文にふれ、登場人物の関係性や心情に関する読み取りができるようにさせたい。

● 第6問の長文読解では、段落の要旨を選び、表を完成させる問題に対応できるように、英文を読む際には、段落ごとに要旨をまとめながら読み進める習慣をつけさせたい。

● 日頃から様々なジャンル・テーマ・形式の英文に触れ、必要に応じて時間を計って英文を読み、その内容をまとめる演習などを積ませておきたい。また、今年も本文中の表現が設問の選択肢では別の表現に言いかえられている問題が多くみられた。正確な読解に加えて、英文の言いかえに対応する力もつけさせたい。

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