問題講評【数学I】

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1.総評

【2014年度センター試験の特徴】 

・大問数や配点、数学I・Aとの共通問題は昨年から変更がなかった。
・昨年同様、基本事項を中心とした出題であったが、例年と比べて不等号を選択肢から選ばせる問題が多く出題された。
・昨年と同様に誘導の意図がつかみやすい問題が多く、難易は昨年よりやや易化した。

 問題量や計算量は昨年から大きな変化はなく、例年と同様に第1問から第4問まですべて必答問題であった。
 第1問〔2〕や第2問で、不等号の向きと等号の有無を問う問題が多く見られた。全体を通して基本的な内容が出題の中心であり、誘導も丁寧であったこと、昨年と比べて第2問がオーソドックスな出題となったことから全体の難易は昨年よりもやや易化した。

2.全体概況

【大問数・解答数】 昨年同様、大問数は4ですべて必答。第1問〔1〕と第2問は数学I・Aとの共通問題。
【出題形式】 昨年同様、第1問が25点、第4問が20点の配点であった。
【出題分野】 数学Iの全分野から出題。
【問題量】 昨年並。
【難易】 昨年よりやや易化。

3.大問構成

第1問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
数と式、方程式と不等式 25点 標準 〔1〕分母・分子に無理数を含む式の計算
〔2〕xの1次不等式と絶対値を含む不等式の連立不等式
第2問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
2次関数 25点 1つの文字定数を含む2次関数のグラフ
第3問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
図形と計量 30点 標準 三角形の角の二等分線と外接円
第4問
出題分野・大問名 配点 難易 備考
(使用素材・テーマなど)
方程式と不等式 20点 標準 絶対値を含む不等式の解

4.大問別分析

第1問〔1〕「数と式」

● 分母・分子に無理数を含む式の計算に関する問題。

● a、bの平方の和を求める部分は、センター試験では頻出の問題であり、前半で求めたa+bとabの値を利用して、正確に計算しなければならない。

● aの4次の等式の係数を決定する部分は、係数の文字がaのみであることに着目し、先に求めたものをうまく変形して、bを消去することができたかどうかがポイントであった。

● 問題量、計算量はともに昨年並であった。

第1問〔2〕「方程式と不等式」

● xの1次不等式と絶対値を含む不等式の連立不等式に関する問題。

● 昨年に引き続き不等号を選択肢から選ばせる形式が出題されたが、今年は全設問がその形になったことは目新しい。

● (1)は具体的に値を代入して考えればよい。(2)は不等式1の解と2(xの値)の大小関係を比較して求めてもよいが、(1)と同様に値を代入し、工夫して考えると容易に求めることができる。

● (4)は不等式2の解を正しく求められたか、文字を含んだ2つの解の大小を、不等号に等号が入るかに注意をして正しく考えられたかどうかで差がついたであろう。

● 問題量、計算量はともに昨年並であった。

第2問「2次関数」

● 文字定数aを含む2次関数のグラフに関して幅広く問う問題。基本的な問題、かつ受験生にはなじみの深い問題であったため、取り組みやすかっただろう。

● 前半は2次関数のグラフを平方完成して頂点を求め、グラフの平行移動を考える問題。後半は2次関数のグラフがx軸と共有点を持つようなaの範囲、そのすべての共有点のx座標が-1より大きくなるようなaの範囲を求める問題。2次関数の問題で不等号を選ばせる点が目新しく、(2)では等号の有無までしっかりと考えられたかどうかで差がついたと考えられる。

● 問題量、計算量ともに昨年より少なく、易化した。

第3問「図形と計量」

● 円に内接する二等辺三角形と角の二等分線に関する問題。

● △ABCの外接円を求める部分までは、余弦定理や正弦定理など図形と計量の基本的な定理・公式を用いることで答えを導くことができる。

● ∠CAEと∠ACBの関係を求める部分は、円周角の性質を用いればよい。CEの長さを求める部分は、三角形の外角の性質を用いて∠CAEと∠CEAが等しいことに気付けるかどうかがポイントであった。いずれの設問においても、図を正確にかき、条件を丁寧に整理することが重要であった。

● △ADCの面積を求める部分は、誘導に従って△ACEと△ADCが相似であることに気付き、相似比から面積比を求めれば解くことができる。

● 全体として誘導が比較的丁寧であったが、図を丁寧にかき、求めた条件を整理して図形を正しく把握できたかどうかで差がついたと思われる。

● 問題量、計算量はともに昨年並であった。

第4問「方程式と不等式」

● 絶対値を含む不等式の問題。

● 絶対値の中の式が2次である出題は目新しい。

● 素直に誘導に従って解いていけばよいが、それぞれの場合における絶対値を含む式の正負を正しく考え、絶対値を外せたかどうかがポイントであった。

● 最後の不等式1を満たさない整数xの個数を求める部分は、数直線上に不等式1が満たす範囲をかき、不等号の等号がないことを見落とさずに正確に数え上げる部分で差がついたと思われる。

● 問題量、計算量はともに昨年並であった。

5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

年度 2013 2012 2011 2010 2009
平均点 40.83 40.18 44.14 40.87 49.34

6.2015年度センター試験攻略のポイント

● 今年までのセンター試験では、数学Iの各分野から基本的な問題が幅広く出題されている。新課程になり、数学Iで学習する内容は増加するが、センター試験においては今までと同様に基本的な問題が網羅的に出題されると考えられる。そのため、今まで以上に教科書を用いて各分野の基礎事項を定着させ、基本的な問題で確実に得点できるようにしたい。

● 絶対値や無理数を含む式の計算を苦手とする受験生も多いが、新課程においてもセンター試験で出題される可能性は十分にあるため、正確に計算できるよう、日ごろから十分演習を重ねておきたい。

● 図形の問題は、日ごろから図を丁寧にかき、どこでどの知識を用いればよいかを図をかいて考える習慣をつけておきたい。また、今年は出題されなかったが立体の問題が出題される可能性もあるので、教科書や問題集を用いて、立体をイメージする力も身につけておくとよいと思われる。

● 近年のセンター試験においては、第1問と第4問では、目新しい問題が出題される傾向があり、このような問題は新課程においても出題される可能性がある。これまで解いたことがないような問題が出題されたとしても、落ち着いて題意を正しく読み取り、与えられた誘導の意図を考えながら、正確な立式や計算ができるように日ごろから練習を積んでおきたい。

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