問題講評【国語】
1.総評
- 【2014年度センター試験の特徴】
-
・大問数4、各大問の配点50は昨年から変更なし。
・評論では最終設問以外でも論の構成・展開を意識することが求められ、また、漢文では展開に沿って文章を3つに部分分けする設問が出題されるなど、論構成を重視する傾向がより顕著となった。
・昨年と比べて小説の問題文の分量が大幅に増加。また、古典を中心に難度の高い問題文・設問が出題されたため、昨年よりやや難化した。出題形式面については、評論におけるリード文・段落番号が付された文章からの出題や、小説での場面内の表現に関する設問、古文での会話文の内容読解に主語判定を絡めた設問など、目新しい出題がなされた。問題文の分量は、評論で500字程度減少したものの、小説で1200字程度増加し、全体として700字程度増加。さらに、3行選択肢が小説で2問、古文で1問、漢文で1問出題されたため、分量への対応に苦慮した受験生も多かったことが推察される。問題文については、特に古典が難しく、限られた時間のなかで内容を正確に読み解く力が求められた。出題分量の増加、ならびに、古典を中心とした問題文の難度の上昇、それらに加えて文章の構成・展開を踏まえた読み取りが求められたため、大幅な難化を見せた昨年よりも難度が上がった出題であった。
2.全体概況
【大問数・解答数】 | 大問数4、各大問の配点50は昨年から変更なし。設問数が漢文で1問減り、全体として設問数・解答数とも1減。 |
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【出題形式】 | 評論では、問題文に段落番号が付され、最終設問で表現と構成を問う出題があった。小説では、表現に関する設問が場面に即した形で出題された。古文では、会話文のやりとりについて、会話主とその内容が問われ、和歌・表現に関する出題はなかった。漢文では、空欄補充の設問と、文章の展開に関する設問がそれぞれ出題された。 |
【出題分野】 | 近代以降の文章2題(評論・小説)、古文1題、漢文1題という構成に変更なし。 |
【問題量】 | 問題文の分量は、評論で500字程度減少(4200→3700)、小説で1200字程度増加(4000→5200)、古文は昨年並(1200→1200)、漢文で14字減少(198→184)した。 |
【難易】 | 昨年よりやや難化。 |
3.大問構成
第1問 | |||
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出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
現代文・評論 | 50点 | やや難 | 齋藤希史『漢文脈と近代日本』 |
第2問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
現代文・小説 | 50点 | 標準 | 岡本かの子「快走」 |
第3問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
古文 | 50点 | 難 | 『源氏物語』(夕霧の巻) |
第4問 | |||
出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考 (使用素材・テーマなど) |
漢文 | 50点 | やや難 | 陸樹声『陸文定公集』 |
4.大問別分析
第1問「現代文・評論」(約3700字)
● 問題文は、齋藤希史『漢文脈と近代日本』からの出題。独特のレトリックで書かれた随筆風の評論が出題された昨年とは異なり、比較的平易な文体の論説文からの出題で、昨年と比べると取り組みやすかったであろう。しかし、近世後期の漢学受容の意義という、受験生にとってはあまり馴染みのない話題であり、また、学問・政治・武芸の連関性という見慣れない論旨の文章でもあった。そのため、本文の叙述を丹念にたどって筆者の主張を的確に理解する、確かな読解力が求められ、実力の差があらわれやすい出題であったと思われる。いわゆる<ですます調>の文章からの出題や、評論でリード文があるのは目新しく、かつ、各段落に番号が付されたのは現行課程の本試験では初の試み。問題文の分量は昨年より500字程度減少した(約4200字→約3700字)ものの、注も12個とやや多く、読解には時間を要したものと思われる。
● 設問構成は、問1が漢字設問、問2から問5までが内容読解に関する設問、問6が文章表現と構成に関する設問で、ここ数年のセンター試験の傾向を踏襲したものであった。
● 問1は、漢字設問。例年どおり5題の出題で、昨年はなかった訓読みの漢字からの出題が復活した((イ)「占める」)。(ア)の選択肢2「痛棒」や(ウ)「軍功」、(ウ)の選択肢5「生硬」は、語彙力が問われる出題でやや難しかったと思われる。
● 問2は、理由説明に関する設問。論旨展開の転換点となる箇所に傍線を付し、その前後の広範囲の読み取りを求めたもので、展開・構成を意識した文章読解ができているかどうかが試された。誤答選択肢1「中国古典文に見られる思想と文学の共通点」は、8段落で触れられているものの論の中心ではない内容。論の中心点を押さえたうえで選択肢の吟味に臨めば、選択肢1を誤答と判断できたであろう。単に本文に書かれているかどうかで正誤を判断するのではなく、「ここでの論の中心点はなにか」を意識して読解する姿勢が問われた。
● 問3は、傍線部に関する論旨把握の設問。正答選択肢2の内容が本文中の記述を大きく書き換えたものであったので、自信を持って正答選択肢を選ぶことができた受験生は多くはなかったであろう。ここでの論の焦点が「行政能力」と「統治」にあることを踏まえ、単に本文中の語句を断片的に用いながら論の焦点をずらしている選択肢は誤りだと判断することが必要であった。
● 問4は、傍線部に関する論旨把握の設問。問3で問われた中国の士大夫に関する論旨を前提に、日本の武士における「武」「文」「忠」の関係性を問うもので、論旨展開に沿って各部分の趣旨を問うという、センター試験の第1問のオーソドックスな設問形式を踏襲している。傍線部C直前の「武を文に対立するものとしてでなく」から17段落までの、通念とは異なる筆者の論旨を押さえたうえで、後続する説明の内容を的確に読み取っていく必要があった。正答選択肢4の「学問につとめる自らの生き方を正当化できるようになった」が、本文の記述を同趣旨の別の表現に書き換えたものであり、問3同様の出題意図を見てとることができる。
● 問5は、傍線部の趣旨説明の設問。「本文全体の内容に照らして」という設問文を踏まえ、広範囲の論旨を読み取る必要があった。さらに、傍線部Dの「道理と天下」が、17・18段落を受けたものであること、つまり、論展開としては19段落が挿入的なものであるということがとらえられているかどうかが試された。問2から問4を含め、今年は傍線部設問においても論の構成・展開を意識することが求められる出題であった点が特徴的と言える。
● 問6は、昨年に引き続き、表現の特徴と全体の構成を枝問2題で問う形での出題。(i)は正答選択肢2の「それぞれの前の部分」「それに続く部分」の指す範囲に迷い、解答に時間を要した受験生も多かったのではないだろうか。(ii)の全体の構成に関する設問は、かつては各部分の具体的な内容に触れる形の選択肢による出題が多くなされていたが、2013年度以降は具体的な内容に踏み込まず、論の骨組みを抽象的に記述する形をとっている。これは、本文の内容や展開を一段階抽象化した形でとらえ直す力があるかどうかを試す設問であり、難度は高かったと思われる。
第2問「現代文・小説」(約5200字)
● 問題文は、岡本かの子「快走」の全文からの出題。近代作家による短編小説の全文からの出題という点は、2012年度以降3年連続している。戦時中の国家統制下における、ある家族のそれぞれの思いやありようの理解が問われた。問題文の分量は昨年より大幅に増加し(約4000字→約5200字)、注も17個と多く、かつ、3行選択肢が2問出題されたので、分量への対応に苦慮した受験生も多かったのではないだろうか。しかし、本文の内容そのものは昨年と比べると読み取りやすく、選択肢の吟味においても本文の筋を押さえていれば比較的迷いなく正答にたどり着くことができたであろう。
● 設問構成は、問1が語句の意味に関する設問、問2から問5までが登場人物の心情や人物関係に関する設問、問6が文章表現に関する設問と、センター試験としてオーソドックスな出題であった。ただし、問6の文章表現に関する設問が場面に即して問われた点は、昨年までのような行数指定による問いとは異なり、新傾向と言える。
● 問1は、語句の意味に関する設問。例年どおり3題の出題で、いずれも辞書的な意味を押さえていれば正答選択肢を選ぶことができる。ただし、(ウ)「われ知らず」は、辞書的な意味を知らずに文脈のみで判断した受験生は誤答選択肢3と迷ったかもしれない。
● 問2は、登場人物の心情に関する設問。傍線部Aの「ほーっと吐息をついて」という動作に表れた心情を、傍線部A以前の道子と兄のやりとり、および傍線部A以降の道子の行動と18行目の「ほーっと大きな吐息をまたついて」という傍線部の反復表現を視野に入れて読み取ることがポイントであった。文章の広い範囲での読み取りができていれば、正答選択肢を選ぶことができたであろう。
● 問3は、登場人物の様子からうかがえる内面の動きに関する設問。まず、傍線部B直前の「自分独特の生き方を発見した興奮」という表現に着目して、その「興奮」が45〜47行目の描写を受けていることを押さえる必要があった。解答の根拠となる箇所の、空白行をはさんだ次の場面に傍線が付されていたことから、広い範囲の読み取りをもとに選択肢を吟味する姿勢が問われた。さらに、正答選択肢の「社会や家族の一員としての役割意識から逃れた別の世界」という表現については、46行目の「人類とは離れた」という抽象的な表現の意味するところが、注1や問2から読み取れる、「国策や家族のために」という意識からの解放を踏まえたものであるととらえることが求められた。設問を分断して考えるのではなく、問2の場面を受けての問3という、設問同士の連続性を見抜く必要があった。
● 問4は、行数を指定し、そこまでの人物関係を問う設問。具体的に傍線が付されていないので、指定された広い範囲のなかから、陸郎と道子のそれぞれの心情および関係を読み取らなければならなかった。正答選択肢の「近しさゆえにかえって一定の距離を保っている」という表現が、問題文33行目(「兄弟は親し過ぎて揶揄(からか)うぐらいのものであろう」から計画を話さなかった)と、60行目(「親し過ぎるだけに妙に照れくさかった」)にある二人のそれぞれの心情をまとめ直したものであるということを理解できたかどうかがポイントであった。3行選択肢でもあり、解答に時間を要した受験生は多かったであろう。
● 問5は、2箇所の傍線部について、それぞれの場面における心情を問う設問。2箇所の傍線部分について問われる形式は、本試験では2006年度以来久しぶりの出題。3行選択肢ではあったものの、誤答選択肢の誤りの箇所は明確であったため、内容吟味そのものは難しいものではなかったと思われる。
● 問6は、文章表現に関して、場面に即して問う設問。これまでも問6で文章表現に関する出題はなされてきたが、具体的な行数を指定した問いであったため、今年のような場面に即して問う形式は新傾向と言える。ただし、問われている内容そのものには変化は見られなかった。問題文と選択肢とを対照させながら吟味すれば、正答選択肢にたどり着くことはできたであろう。しかしながら、選択肢3のような、3つの「まあ」という言葉の違いなど、場面のなかの該当箇所の確認に時間を取られた受験生も多かったであろう。さらに、選択肢6は問5との連関性があり、問2と問3の連続性同様、前に読んだ内容を踏まえて設問に取り組む姿勢が求められた。
第3問「古文」(約1200字)
● 問題文は有名作品である『源氏物語』の「夕霧の巻」からの出題。『源氏物語』からの出題は、2003年度の国語I・IIの追試験以来久しぶりである。センター試験では和歌が含まれる文章がよく出題されるが、今回は和歌が含まれないものであった。問題文の分量は昨年並。注釈の数は、昨年は5個だったが、今年は13個に増えている。人物関係図は掲載されているものの主語判定が難しく、物語の展開を把握することに力を要する難しい文章であった。
● 問1は古語の意味に関する設問、問2は文法に関する設問、問3から問6までは内容読解に関する設問であった。昨年出題されたような文章表現に関する設問はなかった。2013年度や2012年度にあった複数の和歌の詠み手や内容に関する出題がなくなった代わりに、複数の会話文に対して、その会話主と内容に関する出題があったことが特徴的と言える。
● 問1は、古語の意味に関する設問。(ア)は「いかさまにして」の解釈が難しい。疑問の意味であると考え、誤答選択肢2の「どうすれば」を選んだ受験生も多かったであろう。(イ)は「らうたげに」の解釈がポイント。重要古語である「らうたし」は「かわいらしい」という意味で覚えている受験生が多いだろうが、ここでは「いじらしい」という意味であると判断することが必要だった。(ウ)は「給へかし」を「こちらへおいでなさいな」と解釈することは、相応の古文学習をした受験生であれば容易であろうが、文脈からは正答を判断できず戸惑った受験生も多かったのではないか。
● 問2は、文法に関する設問で、用言や助動詞の理解が問われた。ポイントは、cの「て」を動詞の活用語尾と正しく判断できたかどうかである。「て」は、完了の助動詞「つ」の未然形として使われることが多く、間違えた受験生も多かったであろう。
● 問3は、傍線部Xの動作について、その主語と内容の把握が求められた設問。文脈から主語を把握し、傍線部直前の内容を注釈も活用しながら正しく解釈できれば、正答は選べたであろう。
● 問4は、傍線部Yについて、登場人物の心情の把握が求められた設問。解答に際して、まずは傍線部Yが含まれる段落冒頭にある注12から登場人物の状況を把握する。そのうえで、傍線部Y直前の「いかなる人、かうやうなること、をかしうおぼゆらん」が正しく解釈できたかどうかがポイント。しかし、ここの内容を把握することは難しく、正答を選べなかった受験生も多かったであろう。
● 問5は、3つの会話文について、それぞれの主語と内容の把握が求められた設問。複数の和歌に関する設問は昨年までもあったが、今年は対象が和歌ではなく会話文であるということが目新しい。解答に際しては、主語判定だけでは選択肢を絞り込むことはできず、会話一つ一つの正確な内容把握が求められた。Aが妻への非難で、Cが皮肉であると読み取ることは難しく、かつ、3行選択肢であるため多くの情報を整理しながら吟味することが求められ、難度が高い設問であった。
● 問6は、文章全体に関する内容把握の設問。登場人物それぞれの言動を詳細かつ正確に把握する力が問われた。選択肢の文言と、該当部分とを照合させていけば正答は選べるものの、時間がかかる。文章の展開を追いかけながら、登場人物の動作・心理を正しくイメージすることが求められた。やや難度の高い設問であった。
第4問「漢文」(184字 ※空欄部も字数に含む)
● 問題文は、昨年に引き続き随筆からの出題。著者である陸樹声は明代の人。タケノコにまつわる江南(長江下流の地域)の風俗と、そこからの筆者の感慨を記した文章である。問題文の字数は、空欄部を含み184字で昨年並。荘子の「無用の用」にかかわる思想的な内容も含まれ、かつ、部分的に白文あるいは送り仮名がないため、やや難度の高い文章であった。
● 設問構成は、問1で語の意味、問2で返り点と書き下し、問3で空欄補充、問4で傍線部の解釈、問5で書き下し、問6で文章の部分分け、問7で書き下しと筆者の主張をそれぞれ問うており、バリエーション豊かなものであった。特に問6のような、文章全体を把握し、展開に応じて部分に分けるという設問は極めて珍しい。なお、昨年より設問数が1問減少し、解答数も1個減少(9→8)した。
● 問1は、語の意味に関する設問。昨年の問1は、問題文中の文字と同じ意味で用いられている文字を含む熟語を選ぶ設問で目新しい出題であったが、今年は語の意味を問うというオーソドックスな出題であった。(1)(2)とも文脈に当てはめて考えることが求められた。(2)の「尚」がやや難。この漢字が使われている熟語を思い浮かべたうえで、文脈のなかで考え、「とうとぶ」という意味合いがあることを推定できれば正答選択肢が選べたであろう。
● 問2は、白文の傍線部について、正しい返り点の付け方と書き下しをしている選択肢を選ばせる設問。ポイントとなるのは、「目」を「もくす」と読むことと、「〔動詞〕+以〜」を「〔動詞〕に以(もっ)てす」と読むことの2点。しかし、いずれも難度の高いものであり、文脈と合わせて慎重に選択肢を吟味する必要があった。
● 問3は、空欄補充の設問。空欄補充の設問は、近年の本試験では、2012年度や2011年度で出題されている。本設問は、4つの空欄それぞれの対応関係を把握することが求められた。論理構成の理解が問われた出題であり、やや難度が高いものであった。
● 問4は、傍線部の解釈に関する設問。再読文字「猶」が「〜のようである」という意味であるという基本知識を活用すれば正答できたであろう。
● 問5は、白文の書き下しの設問。「莫不〜」が二重否定で「〜ざるはなし」と読むという基本知識を使えば、選択肢1か3に絞れる。そのうえで、傍線部直後の「取」「棄」の送り仮名に着目し、それらが受け身のかたちで読まれていることを踏まえて文脈を解釈すれば正答が選べた。解答に際して、基本句形の知識だけでなく、文脈を正しく把握することが必要であり、やや難度が高い設問であった。
● 問6は、問題文を論旨展開上、三つの部分に分けるならば、どこで切れるかを問う設問。このような部分分けを求める設問は極めて珍しい。話題の転換を示す「夫(そ)れ」から、筆者の考えが始まることに着目すれば、選択肢1か3に絞れる。さらに「甘」「苦」の対立関係が示された箇所を一部分と捉えることができれば正答選択肢が選べた。文章全体の展開を正確に把握する力が求められ、難度の高い設問であった。
● 問7は、書き下しと筆者の主張に関する設問。傍線部中の「豈」という語は、「豈(あ)に〜んや」で、反語で使われることが多い。しかし、本設問では「豈に〜か」と読み、推測の意を示すというあまり見られない使われ方であるので、書き下しから正答選択肢を選ぼうとすると誤ってしまう。そのため、まずは筆者の主張を考える必要がある。ところが、傍線部には返り点も送り仮名も示されていないため、傍線部分の内容を解釈することも難しい。傍線部直前の「幸」「不幸」の対比に着目し、無用なものが「幸」(=天寿をまっとうする)という筆者の主張を読み取ることが求められた。基本句形の知識だけでは正答が選べず、難度が高い設問であった。
● 問題文は、齋藤希史『漢文脈と近代日本』からの出題。独特のレトリックで書かれた随筆風の評論が出題された昨年とは異なり、比較的平易な文体の論説文からの出題で、昨年と比べると取り組みやすかったであろう。しかし、近世後期の漢学受容の意義という、受験生にとってはあまり馴染みのない話題であり、また、学問・政治・武芸の連関性という見慣れない論旨の文章でもあった。そのため、本文の叙述を丹念にたどって筆者の主張を的確に理解する、確かな読解力が求められ、実力の差があらわれやすい出題であったと思われる。いわゆる<ですます調>の文章からの出題や、評論でリード文があるのは目新しく、かつ、各段落に番号が付されたのは現行課程の本試験では初の試み。問題文の分量は昨年より500字程度減少した(約4200字→約3700字)ものの、注も12個とやや多く、読解には時間を要したものと思われる。
● 設問構成は、問1が漢字設問、問2から問5までが内容読解に関する設問、問6が文章表現と構成に関する設問で、ここ数年のセンター試験の傾向を踏襲したものであった。
● 問1は、漢字設問。例年どおり5題の出題で、昨年はなかった訓読みの漢字からの出題が復活した((イ)「占める」)。(ア)の選択肢2「痛棒」や(ウ)「軍功」、(ウ)の選択肢5「生硬」は、語彙力が問われる出題でやや難しかったと思われる。
● 問2は、理由説明に関する設問。論旨展開の転換点となる箇所に傍線を付し、その前後の広範囲の読み取りを求めたもので、展開・構成を意識した文章読解ができているかどうかが試された。誤答選択肢1「中国古典文に見られる思想と文学の共通点」は、8段落で触れられているものの論の中心ではない内容。論の中心点を押さえたうえで選択肢の吟味に臨めば、選択肢1を誤答と判断できたであろう。単に本文に書かれているかどうかで正誤を判断するのではなく、「ここでの論の中心点はなにか」を意識して読解する姿勢が問われた。
● 問3は、傍線部に関する論旨把握の設問。正答選択肢2の内容が本文中の記述を大きく書き換えたものであったので、自信を持って正答選択肢を選ぶことができた受験生は多くはなかったであろう。ここでの論の焦点が「行政能力」と「統治」にあることを踏まえ、単に本文中の語句を断片的に用いながら論の焦点をずらしている選択肢は誤りだと判断することが必要であった。
● 問4は、傍線部に関する論旨把握の設問。問3で問われた中国の士大夫に関する論旨を前提に、日本の武士における「武」「文」「忠」の関係性を問うもので、論旨展開に沿って各部分の趣旨を問うという、センター試験の第1問のオーソドックスな設問形式を踏襲している。傍線部C直前の「武を文に対立するものとしてでなく」から17段落までの、通念とは異なる筆者の論旨を押さえたうえで、後続する説明の内容を的確に読み取っていく必要があった。正答選択肢4の「学問につとめる自らの生き方を正当化できるようになった」が、本文の記述を同趣旨の別の表現に書き換えたものであり、問3同様の出題意図を見てとることができる。
● 問5は、傍線部の趣旨説明の設問。「本文全体の内容に照らして」という設問文を踏まえ、広範囲の論旨を読み取る必要があった。さらに、傍線部Dの「道理と天下」が、17・18段落を受けたものであること、つまり、論展開としては19段落が挿入的なものであるということがとらえられているかどうかが試された。問2から問4を含め、今年は傍線部設問においても論の構成・展開を意識することが求められる出題であった点が特徴的と言える。
● 問6は、昨年に引き続き、表現の特徴と全体の構成を枝問2題で問う形での出題。(i)は正答選択肢2の「それぞれの前の部分」「それに続く部分」の指す範囲に迷い、解答に時間を要した受験生も多かったのではないだろうか。(ii)の全体の構成に関する設問は、かつては各部分の具体的な内容に触れる形の選択肢による出題が多くなされていたが、2013年度以降は具体的な内容に踏み込まず、論の骨組みを抽象的に記述する形をとっている。これは、本文の内容や展開を一段階抽象化した形でとらえ直す力があるかどうかを試す設問であり、難度は高かったと思われる。
● 問題文は、岡本かの子「快走」の全文からの出題。近代作家による短編小説の全文からの出題という点は、2012年度以降3年連続している。戦時中の国家統制下における、ある家族のそれぞれの思いやありようの理解が問われた。問題文の分量は昨年より大幅に増加し(約4000字→約5200字)、注も17個と多く、かつ、3行選択肢が2問出題されたので、分量への対応に苦慮した受験生も多かったのではないだろうか。しかし、本文の内容そのものは昨年と比べると読み取りやすく、選択肢の吟味においても本文の筋を押さえていれば比較的迷いなく正答にたどり着くことができたであろう。
● 設問構成は、問1が語句の意味に関する設問、問2から問5までが登場人物の心情や人物関係に関する設問、問6が文章表現に関する設問と、センター試験としてオーソドックスな出題であった。ただし、問6の文章表現に関する設問が場面に即して問われた点は、昨年までのような行数指定による問いとは異なり、新傾向と言える。
● 問1は、語句の意味に関する設問。例年どおり3題の出題で、いずれも辞書的な意味を押さえていれば正答選択肢を選ぶことができる。ただし、(ウ)「われ知らず」は、辞書的な意味を知らずに文脈のみで判断した受験生は誤答選択肢3と迷ったかもしれない。
● 問2は、登場人物の心情に関する設問。傍線部Aの「ほーっと吐息をついて」という動作に表れた心情を、傍線部A以前の道子と兄のやりとり、および傍線部A以降の道子の行動と18行目の「ほーっと大きな吐息をまたついて」という傍線部の反復表現を視野に入れて読み取ることがポイントであった。文章の広い範囲での読み取りができていれば、正答選択肢を選ぶことができたであろう。
● 問3は、登場人物の様子からうかがえる内面の動きに関する設問。まず、傍線部B直前の「自分独特の生き方を発見した興奮」という表現に着目して、その「興奮」が45〜47行目の描写を受けていることを押さえる必要があった。解答の根拠となる箇所の、空白行をはさんだ次の場面に傍線が付されていたことから、広い範囲の読み取りをもとに選択肢を吟味する姿勢が問われた。さらに、正答選択肢の「社会や家族の一員としての役割意識から逃れた別の世界」という表現については、46行目の「人類とは離れた」という抽象的な表現の意味するところが、注1や問2から読み取れる、「国策や家族のために」という意識からの解放を踏まえたものであるととらえることが求められた。設問を分断して考えるのではなく、問2の場面を受けての問3という、設問同士の連続性を見抜く必要があった。
● 問4は、行数を指定し、そこまでの人物関係を問う設問。具体的に傍線が付されていないので、指定された広い範囲のなかから、陸郎と道子のそれぞれの心情および関係を読み取らなければならなかった。正答選択肢の「近しさゆえにかえって一定の距離を保っている」という表現が、問題文33行目(「兄弟は親し過ぎて揶揄(からか)うぐらいのものであろう」から計画を話さなかった)と、60行目(「親し過ぎるだけに妙に照れくさかった」)にある二人のそれぞれの心情をまとめ直したものであるということを理解できたかどうかがポイントであった。3行選択肢でもあり、解答に時間を要した受験生は多かったであろう。
● 問5は、2箇所の傍線部について、それぞれの場面における心情を問う設問。2箇所の傍線部分について問われる形式は、本試験では2006年度以来久しぶりの出題。3行選択肢ではあったものの、誤答選択肢の誤りの箇所は明確であったため、内容吟味そのものは難しいものではなかったと思われる。
● 問6は、文章表現に関して、場面に即して問う設問。これまでも問6で文章表現に関する出題はなされてきたが、具体的な行数を指定した問いであったため、今年のような場面に即して問う形式は新傾向と言える。ただし、問われている内容そのものには変化は見られなかった。問題文と選択肢とを対照させながら吟味すれば、正答選択肢にたどり着くことはできたであろう。しかしながら、選択肢3のような、3つの「まあ」という言葉の違いなど、場面のなかの該当箇所の確認に時間を取られた受験生も多かったであろう。さらに、選択肢6は問5との連関性があり、問2と問3の連続性同様、前に読んだ内容を踏まえて設問に取り組む姿勢が求められた。
第3問「古文」(約1200字)
● 問題文は有名作品である『源氏物語』の「夕霧の巻」からの出題。『源氏物語』からの出題は、2003年度の国語I・IIの追試験以来久しぶりである。センター試験では和歌が含まれる文章がよく出題されるが、今回は和歌が含まれないものであった。問題文の分量は昨年並。注釈の数は、昨年は5個だったが、今年は13個に増えている。人物関係図は掲載されているものの主語判定が難しく、物語の展開を把握することに力を要する難しい文章であった。
● 問1は古語の意味に関する設問、問2は文法に関する設問、問3から問6までは内容読解に関する設問であった。昨年出題されたような文章表現に関する設問はなかった。2013年度や2012年度にあった複数の和歌の詠み手や内容に関する出題がなくなった代わりに、複数の会話文に対して、その会話主と内容に関する出題があったことが特徴的と言える。
● 問1は、古語の意味に関する設問。(ア)は「いかさまにして」の解釈が難しい。疑問の意味であると考え、誤答選択肢2の「どうすれば」を選んだ受験生も多かったであろう。(イ)は「らうたげに」の解釈がポイント。重要古語である「らうたし」は「かわいらしい」という意味で覚えている受験生が多いだろうが、ここでは「いじらしい」という意味であると判断することが必要だった。(ウ)は「給へかし」を「こちらへおいでなさいな」と解釈することは、相応の古文学習をした受験生であれば容易であろうが、文脈からは正答を判断できず戸惑った受験生も多かったのではないか。
● 問2は、文法に関する設問で、用言や助動詞の理解が問われた。ポイントは、cの「て」を動詞の活用語尾と正しく判断できたかどうかである。「て」は、完了の助動詞「つ」の未然形として使われることが多く、間違えた受験生も多かったであろう。
● 問3は、傍線部Xの動作について、その主語と内容の把握が求められた設問。文脈から主語を把握し、傍線部直前の内容を注釈も活用しながら正しく解釈できれば、正答は選べたであろう。
● 問4は、傍線部Yについて、登場人物の心情の把握が求められた設問。解答に際して、まずは傍線部Yが含まれる段落冒頭にある注12から登場人物の状況を把握する。そのうえで、傍線部Y直前の「いかなる人、かうやうなること、をかしうおぼゆらん」が正しく解釈できたかどうかがポイント。しかし、ここの内容を把握することは難しく、正答を選べなかった受験生も多かったであろう。
● 問5は、3つの会話文について、それぞれの主語と内容の把握が求められた設問。複数の和歌に関する設問は昨年までもあったが、今年は対象が和歌ではなく会話文であるということが目新しい。解答に際しては、主語判定だけでは選択肢を絞り込むことはできず、会話一つ一つの正確な内容把握が求められた。Aが妻への非難で、Cが皮肉であると読み取ることは難しく、かつ、3行選択肢であるため多くの情報を整理しながら吟味することが求められ、難度が高い設問であった。
● 問6は、文章全体に関する内容把握の設問。登場人物それぞれの言動を詳細かつ正確に把握する力が問われた。選択肢の文言と、該当部分とを照合させていけば正答は選べるものの、時間がかかる。文章の展開を追いかけながら、登場人物の動作・心理を正しくイメージすることが求められた。やや難度の高い設問であった。
第4問「漢文」(184字 ※空欄部も字数に含む)
● 問題文は、昨年に引き続き随筆からの出題。著者である陸樹声は明代の人。タケノコにまつわる江南(長江下流の地域)の風俗と、そこからの筆者の感慨を記した文章である。問題文の字数は、空欄部を含み184字で昨年並。荘子の「無用の用」にかかわる思想的な内容も含まれ、かつ、部分的に白文あるいは送り仮名がないため、やや難度の高い文章であった。
● 設問構成は、問1で語の意味、問2で返り点と書き下し、問3で空欄補充、問4で傍線部の解釈、問5で書き下し、問6で文章の部分分け、問7で書き下しと筆者の主張をそれぞれ問うており、バリエーション豊かなものであった。特に問6のような、文章全体を把握し、展開に応じて部分に分けるという設問は極めて珍しい。なお、昨年より設問数が1問減少し、解答数も1個減少(9→8)した。
● 問1は、語の意味に関する設問。昨年の問1は、問題文中の文字と同じ意味で用いられている文字を含む熟語を選ぶ設問で目新しい出題であったが、今年は語の意味を問うというオーソドックスな出題であった。(1)(2)とも文脈に当てはめて考えることが求められた。(2)の「尚」がやや難。この漢字が使われている熟語を思い浮かべたうえで、文脈のなかで考え、「とうとぶ」という意味合いがあることを推定できれば正答選択肢が選べたであろう。
● 問2は、白文の傍線部について、正しい返り点の付け方と書き下しをしている選択肢を選ばせる設問。ポイントとなるのは、「目」を「もくす」と読むことと、「〔動詞〕+以〜」を「〔動詞〕に以(もっ)てす」と読むことの2点。しかし、いずれも難度の高いものであり、文脈と合わせて慎重に選択肢を吟味する必要があった。
● 問3は、空欄補充の設問。空欄補充の設問は、近年の本試験では、2012年度や2011年度で出題されている。本設問は、4つの空欄それぞれの対応関係を把握することが求められた。論理構成の理解が問われた出題であり、やや難度が高いものであった。
● 問4は、傍線部の解釈に関する設問。再読文字「猶」が「〜のようである」という意味であるという基本知識を活用すれば正答できたであろう。
● 問5は、白文の書き下しの設問。「莫不〜」が二重否定で「〜ざるはなし」と読むという基本知識を使えば、選択肢1か3に絞れる。そのうえで、傍線部直後の「取」「棄」の送り仮名に着目し、それらが受け身のかたちで読まれていることを踏まえて文脈を解釈すれば正答が選べた。解答に際して、基本句形の知識だけでなく、文脈を正しく把握することが必要であり、やや難度が高い設問であった。
● 問6は、問題文を論旨展開上、三つの部分に分けるならば、どこで切れるかを問う設問。このような部分分けを求める設問は極めて珍しい。話題の転換を示す「夫(そ)れ」から、筆者の考えが始まることに着目すれば、選択肢1か3に絞れる。さらに「甘」「苦」の対立関係が示された箇所を一部分と捉えることができれば正答選択肢が選べた。文章全体の展開を正確に把握する力が求められ、難度の高い設問であった。
● 問7は、書き下しと筆者の主張に関する設問。傍線部中の「豈」という語は、「豈(あ)に〜んや」で、反語で使われることが多い。しかし、本設問では「豈に〜か」と読み、推測の意を示すというあまり見られない使われ方であるので、書き下しから正答選択肢を選ぼうとすると誤ってしまう。そのため、まずは筆者の主張を考える必要がある。ところが、傍線部には返り点も送り仮名も示されていないため、傍線部分の内容を解釈することも難しい。傍線部直前の「幸」「不幸」の対比に着目し、無用なものが「幸」(=天寿をまっとうする)という筆者の主張を読み取ることが求められた。基本句形の知識だけでは正答が選べず、難度が高い設問であった。
● 問題文は有名作品である『源氏物語』の「夕霧の巻」からの出題。『源氏物語』からの出題は、2003年度の国語I・IIの追試験以来久しぶりである。センター試験では和歌が含まれる文章がよく出題されるが、今回は和歌が含まれないものであった。問題文の分量は昨年並。注釈の数は、昨年は5個だったが、今年は13個に増えている。人物関係図は掲載されているものの主語判定が難しく、物語の展開を把握することに力を要する難しい文章であった。
● 問1は古語の意味に関する設問、問2は文法に関する設問、問3から問6までは内容読解に関する設問であった。昨年出題されたような文章表現に関する設問はなかった。2013年度や2012年度にあった複数の和歌の詠み手や内容に関する出題がなくなった代わりに、複数の会話文に対して、その会話主と内容に関する出題があったことが特徴的と言える。
● 問1は、古語の意味に関する設問。(ア)は「いかさまにして」の解釈が難しい。疑問の意味であると考え、誤答選択肢2の「どうすれば」を選んだ受験生も多かったであろう。(イ)は「らうたげに」の解釈がポイント。重要古語である「らうたし」は「かわいらしい」という意味で覚えている受験生が多いだろうが、ここでは「いじらしい」という意味であると判断することが必要だった。(ウ)は「給へかし」を「こちらへおいでなさいな」と解釈することは、相応の古文学習をした受験生であれば容易であろうが、文脈からは正答を判断できず戸惑った受験生も多かったのではないか。
● 問2は、文法に関する設問で、用言や助動詞の理解が問われた。ポイントは、cの「て」を動詞の活用語尾と正しく判断できたかどうかである。「て」は、完了の助動詞「つ」の未然形として使われることが多く、間違えた受験生も多かったであろう。
● 問3は、傍線部Xの動作について、その主語と内容の把握が求められた設問。文脈から主語を把握し、傍線部直前の内容を注釈も活用しながら正しく解釈できれば、正答は選べたであろう。
● 問4は、傍線部Yについて、登場人物の心情の把握が求められた設問。解答に際して、まずは傍線部Yが含まれる段落冒頭にある注12から登場人物の状況を把握する。そのうえで、傍線部Y直前の「いかなる人、かうやうなること、をかしうおぼゆらん」が正しく解釈できたかどうかがポイント。しかし、ここの内容を把握することは難しく、正答を選べなかった受験生も多かったであろう。
● 問5は、3つの会話文について、それぞれの主語と内容の把握が求められた設問。複数の和歌に関する設問は昨年までもあったが、今年は対象が和歌ではなく会話文であるということが目新しい。解答に際しては、主語判定だけでは選択肢を絞り込むことはできず、会話一つ一つの正確な内容把握が求められた。Aが妻への非難で、Cが皮肉であると読み取ることは難しく、かつ、3行選択肢であるため多くの情報を整理しながら吟味することが求められ、難度が高い設問であった。
● 問6は、文章全体に関する内容把握の設問。登場人物それぞれの言動を詳細かつ正確に把握する力が問われた。選択肢の文言と、該当部分とを照合させていけば正答は選べるものの、時間がかかる。文章の展開を追いかけながら、登場人物の動作・心理を正しくイメージすることが求められた。やや難度の高い設問であった。
● 問題文は、昨年に引き続き随筆からの出題。著者である陸樹声は明代の人。タケノコにまつわる江南(長江下流の地域)の風俗と、そこからの筆者の感慨を記した文章である。問題文の字数は、空欄部を含み184字で昨年並。荘子の「無用の用」にかかわる思想的な内容も含まれ、かつ、部分的に白文あるいは送り仮名がないため、やや難度の高い文章であった。
● 設問構成は、問1で語の意味、問2で返り点と書き下し、問3で空欄補充、問4で傍線部の解釈、問5で書き下し、問6で文章の部分分け、問7で書き下しと筆者の主張をそれぞれ問うており、バリエーション豊かなものであった。特に問6のような、文章全体を把握し、展開に応じて部分に分けるという設問は極めて珍しい。なお、昨年より設問数が1問減少し、解答数も1個減少(9→8)した。
● 問1は、語の意味に関する設問。昨年の問1は、問題文中の文字と同じ意味で用いられている文字を含む熟語を選ぶ設問で目新しい出題であったが、今年は語の意味を問うというオーソドックスな出題であった。(1)(2)とも文脈に当てはめて考えることが求められた。(2)の「尚」がやや難。この漢字が使われている熟語を思い浮かべたうえで、文脈のなかで考え、「とうとぶ」という意味合いがあることを推定できれば正答選択肢が選べたであろう。
● 問2は、白文の傍線部について、正しい返り点の付け方と書き下しをしている選択肢を選ばせる設問。ポイントとなるのは、「目」を「もくす」と読むことと、「〔動詞〕+以〜」を「〔動詞〕に以(もっ)てす」と読むことの2点。しかし、いずれも難度の高いものであり、文脈と合わせて慎重に選択肢を吟味する必要があった。
● 問3は、空欄補充の設問。空欄補充の設問は、近年の本試験では、2012年度や2011年度で出題されている。本設問は、4つの空欄それぞれの対応関係を把握することが求められた。論理構成の理解が問われた出題であり、やや難度が高いものであった。
● 問4は、傍線部の解釈に関する設問。再読文字「猶」が「〜のようである」という意味であるという基本知識を活用すれば正答できたであろう。
● 問5は、白文の書き下しの設問。「莫不〜」が二重否定で「〜ざるはなし」と読むという基本知識を使えば、選択肢1か3に絞れる。そのうえで、傍線部直後の「取」「棄」の送り仮名に着目し、それらが受け身のかたちで読まれていることを踏まえて文脈を解釈すれば正答が選べた。解答に際して、基本句形の知識だけでなく、文脈を正しく把握することが必要であり、やや難度が高い設問であった。
● 問6は、問題文を論旨展開上、三つの部分に分けるならば、どこで切れるかを問う設問。このような部分分けを求める設問は極めて珍しい。話題の転換を示す「夫(そ)れ」から、筆者の考えが始まることに着目すれば、選択肢1か3に絞れる。さらに「甘」「苦」の対立関係が示された箇所を一部分と捉えることができれば正答選択肢が選べた。文章全体の展開を正確に把握する力が求められ、難度の高い設問であった。
● 問7は、書き下しと筆者の主張に関する設問。傍線部中の「豈」という語は、「豈(あ)に〜んや」で、反語で使われることが多い。しかし、本設問では「豈に〜か」と読み、推測の意を示すというあまり見られない使われ方であるので、書き下しから正答選択肢を選ぼうとすると誤ってしまう。そのため、まずは筆者の主張を考える必要がある。ところが、傍線部には返り点も送り仮名も示されていないため、傍線部分の内容を解釈することも難しい。傍線部直前の「幸」「不幸」の対比に着目し、無用なものが「幸」(=天寿をまっとうする)という筆者の主張を読み取ることが求められた。基本句形の知識だけでは正答が選べず、難度が高い設問であった。
5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 | 2009 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 101.04 | 117.95 | 111.29 | 107.62 | 115.46 |
6.2015年度センター試験攻略のポイント
● 今年のセンター試験では、評論の問6(ii)や漢文の問6のように、文章構成を直接的に問うたものが出題され、かつ、評論の問2や小説の問3など、傍線部前後の部分的読解では正答できず、文章の構成・展開に着目して、広い範囲の読み取りを要した設問も多くあった。このことにより、文章の構成に対する理解を求める傾向がより顕著になったと言える。文章の部分を精緻に読み取ることも重要であるが、それだけにとどまらず、文章の構成・展開に着目し、広い範囲で文章内容を読み取る力を身につけておく必要がある。
● 今年のセンター試験では、小説の分量が1000字以上増加し、さらに、3行選択肢も全大問あわせて4問あり、時間的負荷が大きかった。80分という限られた解答時間であるため、速読力を鍛えることが肝要である。演習を通じて、どの大問から解いていくのか、どれくらいの時間をかけて解くのか、事前に計画をたて、その計画に沿って演習を行うのがよいであろう。ただし、年度によって、どの大問が長文化されるか、難化されるかは異なる。最初に取りかかろうとした大問があっても、その大問が難しい、時間がかかると思ったら、いったん解答を中断して、別の大問に移るという柔軟さも必要である。
● 基礎事項は必ず頭に入れておきたい。評論の漢字の設問や、小説の語句の意味に関する設問などにおいて、日常生活ではあまり使用しない言葉が出題されることもある。たとえ普段の生活ではあまり使わない漢字・語句であっても、教科書や問題演習、模擬試験などにおける文章で出会ったものについては、辞書などで意味を確認し、用法を含め頭に入れておきたい。古文は、古文単語、文法(敬語を含む)、和歌の修辞、古文常識や文学史などを、漢文は、重要語、再読文字や句法などを繰り返し復習することで、基礎事項を正確に覚えておきたい。
● 近年のセンター試験では頻出となっている表現の特徴に関する出題にも、しっかりとした対策をとっておきたい。普段の学習のなかで、文章に接する際には、文章内容を理解することにくわえ、「引用や具体例がどのような働きを担っているのかを確認する」「文章中の表現技法に注意しながら丁寧に読み進める」ということを心がけたい。
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