問題講評要約

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国語

― 小説で分量が大幅増。全体として論構成を重視する傾向が顕著で昨年よりやや難化 ―

大問構成、配点は変更なし。設問数は漢文で1問減り、全体として設問数・解答数とも1減。問題文の分量は、小説で大幅に増加(約4000字→約5200字)し、かつ、3行選択肢も全体で4問あり、時間的負荷が高かった。評論の文章構成の設問や、小説の場面ごとの表現を問うた設問、漢文の文章を部分分けさせる設問など、論構成の把握や広い範囲での読み取りを要求する出題が多く、昨年よりやや難化した。

数学I・A

― 問題量・計算量ともに減少、基本的な問題が多く、昨年より易化 ―

大問数や配点、分野構成においては、昨年と大きな変化は見られなかったが、昨年より問題量が減少し、基本的で取り組みやすい問題が増えたため、難易は易化した。また、第1問〔2〕の論理と集合では必要条件、十分条件などの論理に関する出題がなく、第4問の場合の数と確率では期待値に関する出題がなかった。論理に関しては現行課程の本試験で初めて、期待値に関しては現行課程で初めてのことであった。

数学I

― 基本の理解と思考力を問う問題が出題された。難易は昨年よりやや易化 ―

大問数や配点、分野構成においては、昨年と大きな変化は見られなかった。例年と比べて不等号を選択肢から選ばせる設問が多く見られた。全体的には、基本事項を中心とした出題であり、誘導の意図がつかみやすい問題が多かった。第2問が昨年と比べてオーソドックスな問題になったことから、全体の難易度は昨年よりやや易化した。

数学II・B

― 出題形式の変更はなし。三角関数の出題がなかった。難易は昨年並 ―

問題量、計算量ともに多く、限られた時間内で正確に処理する力が求められた。ただ、全体的に誘導が丁寧であったため、例年と比較すると取り組みやすい内容であったであろう。大問構成、配点ともに変化はなかったが、昨年に引き続き第1問が図形と方程式からの出題であり、選択問題を含めて三角関数の出題が全くなかった。

数学II

― 誘導に従ってうまく解き進められるかどうかがポイント。難易は昨年よりやや易化 ―

大問構成、配点ともに昨年と変更はなかった。全体的に問題量、計算量ともに昨年並であり、基本事項の確実な理解が求められた。また、誘導が丁寧な問題も多く、誘導の意図を正確に読み取って解き進める力が必要であった。全体的な難易は昨年よりやや易化した。第3問では三角関数のグラフの概形を推測させる目新しい問題が出され、戸惑った受験生も多かったかもしれない。

英語
(筆記)

― 実践的コミュニケーション能力を意識した新傾向の問題が見られた。難易は昨年並 ―

昨年と同様、時間内に読まなければならない英文の量は依然として多く、目的に応じて読み方を変え、いかにはやく要点をつかめるかがポイントであった。また、第3問Bでは不要な文を選ばせる新傾向の問題が出題されるなど、昨年よりもさらに実践的コミュニケーション能力を測ることを意識した問題構成・内容になったといえる。その他の問題においても、いくつか出題形式に変更は見られたが、全体の難易は昨年並。

英語
(リスニング)

― 素早く情報を処理する力が求められた。難易は昨年よりやや易化 ―

大問数、解答数、配点、出題形式、読まれる英文の総語数は昨年から変更がなかった。読まれる速さは、全体的には昨年からやや遅くなった。日常的な口語表現や複数の数値を聴き取って判断する設問、本文全体に含まれる多量の情報を整理して聴き、内容を理解したうえで正答を導く必要がある設問が多いという点でも昨年から変更がなかった。全体的にオーソドックスな問題が多く、難易は昨年よりやや易化した。

世界史B

― 文章選択が大幅減。戦後史の出題が大幅増。難易は昨年より易化 ―

大問構成、解答数に大きな変化はなかった。出題形式では4択の文章選択問題が大幅に減少し、組合せ問題などが増加した。地域の出題バランスは、昨年増加した西欧がさらに増加し、東アジアはやや減少した。受験生が苦手としがちな戦後史の割合が大幅に増加したが、時期判断の問題の減少や解答しやすい形式の問題が増加し、難易は昨年より易化した。

日本史B

― 人物史が復活。資料読解力と時代の流れを掴む力がカギ。難易は昨年よりやや易化 ―

昨年みられなかった人物史が、手塚治虫をテーマとして第6問で出題された。全体的には例年同様、幅広い時代から出題され、戦後史は昨年から1問増加した。分野は社会経済史の割合が増加した一方、政治史・外交史・文化史の割合は減少した。地図、写真、グラフ、漫画など、多彩な資料が用いられた。正確な時期判断を求める問題が散見されたが、基本的な内容が中心であり、難易は昨年よりやや易化した。

地理B

― 多様な資料が扱われ、地理的考察力が問われた。難易は昨年より易化 ―

大問数6、解答数36で解答数が昨年に比べて1個増加した。昨年同様、第6問の「地域調査」の全設問が地理Aとの共通問題であった。例年同様、地図・地形図・統計表・グラフなど多彩な資料が用いられ、地理的な技能が要求された。また、歴史的背景や経緯を踏まえた出題も散見され、対策をとっていなかった受験生は戸惑ったと思われる。全体的な難易は昨年より易化した。

現代
社会

― 国際経済の出題が減少、日本社会の課題が分野横断的に問われた。難易は昨年並 ―

大問数6、解答数36は昨年から変更なし。国際経済分野からの出題がほぼ見られず、国内の政治・経済分野中心の出題となった。また、大問内や設問内で各分野が融合的に問われる問題が複数見受けられたことも、今年の特徴としてあげておきたい。形式面で大きな変化はなく、標準的なレベルの問題が中心であったことから、難易は昨年並であった。

倫理

― 昨年の形式を踏襲しつつ、細かい知識を問う問題が減少した。難易は昨年並 ―

大問数は昨年同様4大問で、大問構成や出題分野などは変更がなかったが、解答数は昨年より1個減少した。細かい知識を問う問題が減少し、基本事項が網羅的に出題され、正確な知識が幅広く問われた。また、組合せ問題は昨年より増加し、正誤の組合せ問題も昨年同様3問出題された。現代の諸課題分野では、昨年に引き続きリード文で会話文が用いられた。難易は昨年並であった。

政治・経済

― 各分野から広く出題され、統計資料や憲法に関する設問が目立った。難易は昨年並 ―

大問数5、解答数36個は昨年から変更なし。リード文は、昨年同様、多角的・総合的視点から展開されている。分野は政治分野・経済分野・国際政治分野・国際経済分野から、幅広く出題された。基礎的かつ重要な事項が定着しているかどうかを問う出題のなかで、統計資料などを用いた出題が増え、読解力・思考力を試すものがみられた。難易は昨年並。

倫理、政治・経済

― 現代的な課題が扱われたほか、倫理分野で独自設問もみられた。難易は易化 ―

『倫理、政治・経済』独自問題が1問出題されたが、昨年のセンター試験に準じた出題であり、受験生にとって大きな影響はなかったと考えられる。ただし、倫理分野での難問が昨年から減少し、標準的な設問が多かったほか、政治・経済分野では昨年並の難易度であった。また、2単位科目「政治・経済」との一部の共通問題において、『倫理、政治・経済』のほうで配点を低く設定されているが、平均点に与える影響は限定的であった。先述の倫理分野の易化により全体的な難易は昨年よりも易化した。

物理I

― 物品搬送によるドップラーの考察といった目新しい設定が多い。難易は昨年並 ―

物理Iの全分野から幅広く出題された。昨年に比べて問題ページ数が減少(26→22)し、6択の問題が増加(8→11)、7択以上の問題が減少(6→1)した。ベルトコンベアによる物品の搬送を用いたドップラー効果の考察など、見慣れない題材を用いた出題が多いが、問われている内容は標準的であり、また、問題文でヒントを与えるなどの工夫がみられた。難易は昨年並であった。

化学I

― 実験・考察問題が出題されたが、全体的には素直な問題が多く、昨年より易化 ―

昨年と同様に4大問構成であり、解答数も昨年と変わらず33個であった。数値選択問題が7問、組合せ問題は4問出題された。例年同様、特定の分野に偏ることなく幅広く出題された。無機物質の分野で、酸化数に関する問題や、有機化合物に関連する問題などがみられた。有機化合物の分野で、実験問題や考察を要する問題が出題されたが、全体的には素直な問題が多く、昨年より易化した。

生物I

― データの処理や考察に時間を要する問題が多く出題された。昨年より難化 ―

大問数は5、解答数は32個であった。生物Iの全範囲を幅広く問う傾向は例年と同様であるが、昨年に比べて与えられた図、表、グラフの数や7択以上の問題の数が大幅に増加するなど、問題量が増加した。また、データの処理や内容の吟味、考察に時間を要する問題も多く出題されたため、例年に比べて時間配分を意識し素早く正確に解答する力が要求された。難易は昨年より難化した。

地学I

― 問題量が増加。幅広く正確な知識と図を読み取る力が求められた。昨年より難化 ―

大問数5、解答数30個は昨年と同様であるが、7択以上の問題が増加(8→14)し、問題の文章量も増加した。文章選択の5択問題、語句と数値・数式が組み合わされた選択肢の問題が出題され、また、正誤の判断に時間のかかる選択肢が多かった。プルームに関する知識を問うなど、新課程で扱いの大きくなる内容の出題もみられた。難易は昨年より難化した。

理科
総合A

― 計算力を要する出題が減少し、グラフの読解などで思考力が問われた。昨年より易化 ―

昨年と同様に4大問構成で、化学分野と物理分野からそれぞれ2大問が出題された。出題形式では、数値選択の問題が減少(6→3)し、図・グラフ選択の問題が増加(1→5)した。化学分野では小問集合形式で出題され、社会との関連を意識させる問題を含めて幅広い知識が問われた。物理分野では物理現象の説明を設問文から読み取って定性的に考える力が求められた。難易は昨年より易化した。

理科
総合B

― 図やデータを読み取る力や、計算力、幅広い知識が問われた。難易は昨年並 ―

例年同様、4大問構成であったが、解答数は2個減少し27個となった。昨年出題されなかった数値選択問題が1個出題された。例年同様、特定の分野に偏ることなく出題され、思考・判断を問う問題と知識・理解を問う問題がバランスよく出題された。問題文から数値を読み取り、単位換算も含めて計算するなど、やや複雑な計算問題が出題された。難易は昨年並であった。

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