問題講評
データネット2010
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理科総合B

1.総評

【2010年度センター試験の特徴】 

・昨年に比べて、正確な知識を問う問題が増加した。
・例年と同様に、観察の結果や、与えられた資料を読み取って考察させる科学的思考力が問われたが、例年出題されている実験を題材にした問題は出題されなかった。
・問題量はほぼ昨年並だが、昨年出題された9択の組合せ選択の問題は出題されなかった。


 昨年出題された9択の組合せ選択の問題が出題されなかった。また、昨年に比べて、6択の問題や組合せ選択の問題が減少した一方で、4択、5択の問題が増加した。昨年に比べて、正確な知識を問う問題が増加し、特に第2問、第3問では主に生物分野と地学分野の知識が問われた。例年と同様に、観察の結果や、与えられた資料を読み取って考察させる科学的思考力が問われたが、例年出題されている実験を題材にした問題は出題されなかった。
2.全体概況

【大問数・解答数】 大問構成は昨年と同じ4大問。解答数も昨年と同じ28個。
【出題形式】 昨年に比べて、組合せ選択の問題が減少した。
【出題分野】 特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。
【問題量】 ほぼ昨年並。昨年出題された9択の組合せ選択の問題は出題されなかった。
【難易】 昨年より易化。
3.大問構成

大問 出題分野・大問名 配点 難易 備考(使用素材・テーマなど)
第1問
自然の探究
24点
標準
A 気候の変化
B 環境の変化が生物に与える影響
第2問
生命と地球の移り変わり
26点
標準
太陽系の形成と地球環境の変遷
第3問
多様な生物と自然のつり合い
26点
標準
A 動物の分類
B 光合成と植物群落の遷移
C 変動する大地
第4問
人間の活動と地球環境の変化
24点
やや易
A 人間生活と気候の変動
B 物質循環やエネルギーの流れ
4.大問別分析

第1問「自然の探究」

  • 気候の変化を題材に、データを正確に読み取る力が問われた。
  • Aは、気候の変化について、気温や降水量のデータから考察させる問題であった。
  • 問1は、グラフの使い方に関する問題であった。どのグラフがどういった状況を表すのに適しているかを問う目新しい問題であった。
  • 問2は、年平均気温と年降水量の変化のグラフに関する問題であった。グラフを正確に読み取る力に加え、ヒートアイランド現象に関する基礎的な知識が問われた。
  • 問3は、日最高気温に関する表やグラフを題材にした問題であった。グラフを正確に読み取る力が問われた。「表に示す数値が似ていても、グラフの分布は異なることがある」ということを示した観点は興味深い。
  • Bは、サクラの開花日の変遷と気温や降水量の変化を関連づけて考察させることを主題とした問題であった。
  • 問4は、日本の各地点におけるサクラの開花日を示した表に関する問題であった。表を正確に読み取る力が問われた。
  • 問5は、平均気温と開花日および月降水量と開花日の関係を示したグラフに関する問題であった。選択肢の内容が、グラフの内容に適しているかどうか判断する力が問われた。
  • 問6は、花のスケッチの仕方に関する問題であった。スケッチに関する問題は、2008年度の本試験第2問問5でも、三葉虫の化石のスケッチについて出題されていた。

    第2問「生命と地球の移り変わり」

  • 太陽系の形成および生命の誕生と進化に関する知識を幅広く問う問題であった。
  • 問1は、太陽系の形成に関する問題であった。地学分野の基礎的な知識が問われた。
  • 問2は、マグマオーシャンに関する問題であった。問1と同様に地学分野の知識が問われた。
  • 問3は、月面のクレーターの写真を題材にした問題であった。写真に示されたクレーターの状態からクレーターの形成順序を考察する力が問われた。クレーターの成因がイメージできれば考えやすい問題であった。
  • 問4は、惑星の大気と表面温度に関する表を題材にした問題であった。表に示された気体についての正確な知識がポイントとなる問題であった。
  • 問5は、初期の生物やその生息環境に関する問題であった。生物分野の正確な知識が問われた。
  • 問6は、生命活動が関与する堆積岩に関する問題であった。ストロマトライトについての正確な知識を必要とする問題で、戸惑った受験生が多かったと推測する。
  • 問7は、陸上に進出した植物に関する問題であった。最初の空欄がシダ植物だとわかれば、比較的取り組みやすい知識問題であった。

    第3問「多様な生物と自然のつり合い」

  • 地球環境と生物多様性を題材に、主に知識を問う問題であった。A、B、Cの三つの中問で構成されていて、Aは1問のみであった。
  • Aは、動物の分類に関する知識問題であった。
  • 問1は、動物の種類と体の特徴に関する問題であった。生物分野の基礎的な知識が問われた。動物の体の特徴に関する出題は目新しい。
  • Bは、光合成と植物群落の遷移に関する知識を問う問題であった。
  • 問2は、光合成に関する問題であった。基礎的な知識が問われた。
  • 問3は、植物群落の遷移に関する問題であった。植物の分類や遷移についての基礎的な知識が問われた。「保水力に乏しい裸地」と「コケ植物」が結びつかず、戸惑った受験生がいたと推測する。また、遷移については、2008年度の本試験第3問問4でも問われていた。
  • 問4は、陽樹林から陰樹林にかわる原因について問う問題であった。遷移のしくみについての理解が問われた。
  • Cは、プレートテクトニクスを題材に、知識や考察力を問う問題であった。
  • 問5は、プレート境界の場所に関する問題であった。拡大する境界の場所についての正確な知識が問われた。
  • 問6は、沈み込み帯に関する問題であった。収束する境界についての知識や理解が幅広く問われた。
  • 問7は、プレートのすれ違う場所に関する問題であった。すれ違う境界についての知識があれば即答できるが、知識がなくとも図から判断できる問題であった。
  • 問8は、プレートの移動に関する問題であった。プレートの移動距離と期間からプレートの速さを求める計算力が問われた。設問文に与えられた距離は2枚のプレートが互いに離れたときにできた距離だというポイントを見逃して、3.8という正答に対して7.5という誤答を選択した受験生が少なからずいたと推測する。また、kmをcmに変換する際に戸惑った受験生がいたと推測する。

    第4問「人間の活動と地球環境の変化」

  • 人間生活と地球環境の変化を題材に、知識や考察力がバランスよく問われた。
  • Aは、人間生活と気候の変動を題材に、知識やグラフを読み取る力を問う問題であった。
  • 問1は、氷河期に関する問題であった。会話文から状況を把握する力や氷期と間氷期における海面の高さの違いに関する知識が問われた。
  • 問2は、貝の分布の北限の変化を示したグラフを題材にした問題であった。グラフを正確に読み取る力が問われた。グラフより、6000年前ごろの海水温は現在より高かったと判断できるが、昨今の地球温暖化の背景を鑑みて、現在より海水温が高かったと判断することに戸惑った受験生がいたと推測する。
  • 問3は、地球温暖化が人間生活や生物に与える影響に関する問題であった。サンゴ礁の生息環境についての知識がポイントとなった。
  • Bは、物質循環やエネルギーの流れを題材に、表を読み取る力や知識を問う問題であった。
  • 問4は、陸上の各種生態系の占める面積と、固定される炭素の量の関係を示した表を題材にした問題であった。表の情報を正確に読み取る力が問われた。
  • 問5は、窒素固定に関する問題であった。基礎的な知識が問われた。知識が十分に定着していないため、タンパク質とアミノ酸の組合せを選択した受験生がいたと推測する。
  • 問6は、DDTの体内濃度と生態系の食う・食われるの関係を示した表や図を題材にした問題であった。aは、表や図を読み取る力が問われた。比較的読み取りやすい内容であった。bは、食物連鎖についての知識がポイントとなる問題であった。
    5.過去4ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

    年度 2009 2008 2007 2006
    平均点
    58.35
    61.31
    62.35
    66.71
    6.2011年度センター試験攻略のポイント

  • 探究的なものの見方や考え方、科学的な思考力を普段の学習の場面でくり返し体験し、慣れておくことに加えて、教科書にある知識を正確におさえておくことが重要である。
  • 2010年度は、例年と同様に、学習指導要領で定められた項目ごと、(1)自然の探究、(2)生命と地球の移り変わり、(3)多様な生物と自然のつり合い、(4)人間の活動と地球環境の変化、の順で大問が構成されていた。2011年度も同じ構成になることが予想されるので、項目ごとに対策を立てることも有効である。
  • 地学分野、生物分野が融合的に出題されることもあるので、地球の形成過程と生物の進化のかかわり、生物の活動と環境の変化の関係など、地学分野、生物分野の融合的な出題について対策を講じておきたい。