地学I
1.総評
【2010年度センター試験の特徴】
・例年通り、地学Iの全範囲から、幅広く正確な知識が要求された。
・昨年に比べて、図選択問題が増加した。また、組合せ選択問題も増加した。
・図・グラフを正確に読み取る力が必要とされた。
大問数、解答数とも昨年と同じであった。例年通り、地学Iの全範囲から、幅広く正確な知識が要求された。出題形式、問題量には大きな変化はみられなかった。全体的には典型的な問題が多かったが、地質・地史分野(第3問)で頻出である地質図(平面図)を用いた問題が2010年度は出題されなかった。ただし、図・グラフを扱った問題は2009年度に比べて増加し、図・グラフを正確に読み取る力は引き続き求められた。難易は昨年より易化した。
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2.全体概況
【大問数・解答数】 |
大問構成は昨年と同じ5大問。解答数も昨年と同じ30個。 |
【出題形式】 |
昨年に比べて、図選択問題が増加した。また、組合せ選択問題も増加した。 |
【出題分野】 |
特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。 |
【問題量】 |
昨年並。昨年に比べて、6択の問題が1個増加し、4択の問題が1個減少した。 |
【難易】 |
昨年より易化 |
3.大問構成
大問 |
出題分野・大問名 |
配点 |
難易 |
備考(使用素材・テーマなど) |
第1問 |
- 固体地球
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- 20点
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- やや易
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- A 地球と地球型惑星
B 地震 C 地球磁場
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第2問 |
- 岩石・鉱物
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- 20点
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- やや易
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- A 変成作用
B 火山灰と鉱物 C 火成岩
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第3問 |
- 地質・地史
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- 20点
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- 標準
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- A 地層の対比
B 地質断面図
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第4問 |
- 大気・海洋
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- 20点
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- 標準
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- A 台風や熱帯低気圧
B 大気の構造と組成 C 海流
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第5問 |
- 天文
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- 20点
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- 標準
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- A 太陽系の惑星
B 恒星 C 銀河の構造と色
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4.大問別分析
第1問「固体地球」
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Aは、地球と地球型惑星に関する出題であり、火星の表面地形と地球内部の地震波経路が扱われた。
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問1は、惑星の特徴と地球の内部構造に関する基礎的な知識問題であった。地球型の惑星ということで、地球と火星を結びつけて考えられている。
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問2は、地球内部を伝わる地震波についての典型的な問題であった。シャドーゾーンに伝わるP波、S波の違いを理解しておく必要があった。
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Bは、地震に関する出題であり、地震波と津波の伝播速度が扱われた。スマトラ沖地震のように、具体的な地震を題材として取り上げたことは珍しい。
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問3は、海洋性の地震に関する基礎的な出題であった。
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問4は、地震によって生じた津波、P波、表面波の到達の順を問う問題であった。表面波はすべての教科書には記載されていない用語であるが、問題文を読み込めば正答は判断できる。
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Cは、地球磁場に関する出題であり、基礎的な知識が問われた。
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問5は、地球磁場に関する図選択問題であった。仮想的な棒磁石と磁力線の向きを読み取る必要があった。
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問6は、地球磁場に関する基礎的な知識問題であった。
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第2問「岩石・鉱物」
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Aは、変成作用に関する出題で接触変成作用と多形について扱われた。
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問1は、昨年同様、変成鉱物の生成条件に関する基礎的な知識問題であった。接触変成作用で問われる知識は紅柱石が多いが、けい線石が問われる点が目新しい。
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問2は、多形の定義に関する出題であり、基礎的な知識問題であった。
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Bは、火山灰と鉱物に関する出題であった。火山灰と鉱物に関する知識を総合的にとらえる力が必要とされた。
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問3は、鉱物の性質を問う知識問題であった。性質としてへき開が扱われていた点が珍しい。
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問4は、マグマの性質と鉱物の関係について考えさせる問題であった。火山灰からマグマの特徴を考えさせる点があまり見慣れない。
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Cは、火成岩の観察に関する出題であった。
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問5は、花こう岩の組織と構成鉱物に関する出題であった。花こう岩だけではなく、火成岩全体に関しての知識が必要とされた。
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問6は、火成岩の薄片を偏光顕微鏡で観察されたスケッチをもとに、岩石を推定する問題であった。玄武岩についての正確な知識と図が結びつくかがポイントとなる。
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第3問「地質・地史」
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Aは、地層の対比についての出題であった。二つの図を比較検討し不整合と示準化石に留意し、総合的に考え正答を導く必要があった。
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問1は、示準化石の定義についての典型的な問題であった。
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問2は、化石の産出状況から二つの図を対比し、地層の組合せを考える問題であった。対比する際に、不整合を無視し、示準化石が同じであることは時代が同じであるということに気づくことがポイントであった。
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問3は、侵食作用によって凝灰岩が一方の地点にみられない理由を問う問題であった。二つの図を把握することに加え、総合的に地質を考える力が必要とされた。
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問4は、示準化石の相対年代に関する知識問題であった。
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Bは、地質に関する出題であり、地質断面図が出題された。頻出の地質図(平面図)は扱われなかった。
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問5は、地質断面図を読み取り、地学現象の順を問う問題であった。褶曲と岩脈に留意して形成順序を考えなければならない。地学現象を論理的に考える力が求められた。
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問6は、堆積岩の成因に関する知識問題であった。基礎的な問題であったが、選択肢が惑わされやすいため正確な知識が必要であった。
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第4問「大気・海洋」
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Aは、台風と熱帯低気圧に関する出題であり、大気の安定度と台風についての基礎的な力が問われた。
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問1は、大気の安定度と風にはたらく力を問う典型的な問題であった。
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問2は、台風周辺における海上風にはたらく摩擦力を扱った問題であった。台風から北半球と気づけるかがポイントとなる。基礎的な問題であるが、摩擦力のみを問うものは珍しい。
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Bは、大気の構造と組成に関する出題であった。環境問題に関する題材で、オゾン層の減少が扱われた。
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問3は、対流圏のオゾンが扱われ、フロンガスの成分、塩素とオゾンの反応についての出題であった。地学的知識に加え、環境問題への知識が必要であった。
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問4は、大気圏の各層の特徴に関する典型的な問題であった。大気圏についての基礎的な知識の中でも、特にオーロラの高度がわかっているかがポイントであった。
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Cは、黒潮の反流に関する出題であった。受験生には見慣れない素材を扱っており地衡流の正しい理解と図の読み取りの力が必要とされた。
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問5は、黒潮の海面付近の東向きの海流の流速を求める問題であった。海流の海面付近の流速が海面の傾きに比例することを問題文から読み取り、正確にグラフから数値を読み取れるかがポイントであった。
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問6は、大洋の亜熱帯流に関する標準的な知識問題であった。
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第5問「天文」
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Aは、太陽系の惑星に関する問題であり、太陽と火星の視運動と惑星の特徴に関する出題であった。惑星の視運動に関する出題は過去10年以上みられないため、戸惑った受験生も多かっただろう。
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問1は、太陽の年周運動の向きと逆行の成因に関する出題であった。軌道の模式図から太陽と火星のみかけの動きを問い、地球に視点をおいて考える必要があった。
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問2は、地球型惑星の特徴に関する知識問題であった。
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Bは、HR図に関する出題であり、図の読解力と恒星の進化に関する知識が問われた。消去法で正答を導き出すことができるが、ウィーンの変位法則など地学IIの内容を含んでいるため、地学IIを履修していない受験生は戸惑ったのではないだろうか。
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問3は、恒星の半径についての出題であった。恒星の大きさをHR図から読み取るのは難しく、高度な図の読解力が必要であった。
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問4は、恒星に関しての知識問題である。明るさを、半径と表面温度の両方の関係で理解しておく必要があった。
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Cは渦巻星雲に関する出題であった。典型的な問題であるが内容がやや専門的であった。
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問5は、バルジと円盤部の相違点についての基礎的な知識問題であった。問題文にヒントがあるため、読み込んだかどうかで差がつきやすかったと推測する。
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問6は、暗黒星雲・散光星雲に関するに関する知識問題であった。
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5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値) ※2005年度は地学IBの平均点です。
年度 |
2009 |
2008 |
2007 |
2006 |
2005 |
- 平均点
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- 51.85
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- 59.68
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- 62.42
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- 59.29
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- 64.05
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6.2011年度センター試験攻略のポイント
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全範囲からの幅広い知識が必要となるので、基本事項は確実におさえておきたい。特に近年は、大問をさらにA、B、Cのように中問にわけて、全範囲からもれなく出題される傾向にあるので、苦手分野をつくらないようにしておきたい。 |
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2010年度では、2009年度に比べて図選択問題が増加し、図・グラフを正確に読み取る力を必要とする問題が多く出題された。図を読み取る力を身につけるには、練習が必要となるので、模試や問題集を活用して図・グラフを用いた問題の演習を積んでおきたい。 |