生物I
1.総評
【2010年度センター試験の特徴】
・2009年度に比べて解答数は1個増加したが、問題文量は大幅に減少した。
・読み取りに時間のかかる考察問題が減少し、教科書レベルの知識問題が増加したため、難易は易化した。
・一部過去の問題と同様の出題がみられた。
例年同様、生物Iの各分野からまんべんなく出題された。2009年度に比べて問題文量が大幅に減少し、ページ数で4ページの減少となった。また、解答数は1個増加して29個となったが、時間を要する複雑な考察問題が減少した代わりに、教科書レベルの知識問題が増加した。そのため、受験生にとっては取り組みやすい内容となり、難易は昨年よりも易化した。 2010年度では過去の問題からの再利用が解禁された影響か、2001年度の追試験と同内容の問題が、第2問で一部出題された。また細胞分画法や酸素解離曲線など、現行の教育課程では初めて扱われる素材がいくつかみられた。 第5問は昨年に引き続き4設問で構成され、1設問あたり5点の配点であった。
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2.全体概況
【大問数・解答数】 |
大問構成は昨年と同じ5大問。解答数は昨年より1個多い29個。 |
【出題形式】 |
昨年に比べて、語彙選択の問題が増加し、組合せ選択の問題が減少した。 |
【出題分野】 |
特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。 |
【問題量】 |
昨年に比べて問題文量が大幅に減少し、ページ数は27ページから23ページになった。また7択以上の問題が11個から5個に減少し、図や表も昨年より減少した。 |
【難易】 |
昨年より易化。 |
3.大問構成
大問 |
出題分野・大問名 |
配点 |
難易 |
備考(使用素材・テーマなど) |
第1問 |
- 細胞
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- 20点
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- 標準
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- 細胞分画法、動植物の組織・組織系
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第2問 |
- 生殖と発生
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- 20点
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- 標準
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- A 植物の減数分裂
B 形成体と誘導
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第3問 |
- 遺伝
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- 20点
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- やや易
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- A 遺伝子の相互作用(補足遺伝子)
B 遺伝子の本体
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第4問 |
- 環境と動物の反応
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- 20点
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- 標準
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- A 刺激の受容と反応
B 酸素解離曲線
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第5問 |
- 環境と植物の反応
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- 20点
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- やや易
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- A 屈性
B 幼葉鞘の重力屈性
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4.大問別分析
第1問「細胞」
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『細胞分画法と物質』を素材として扱うのは1993年度の本試験以来であった。教科書によっては、細胞分画法は発展内容の扱いであるが、問題文や設問文での補足が丁寧になされており、細胞分画法に関する知識が得点に影響することはないと考える。2009年度よりも基本的な知識を問うており、かつ問題数も少なかったため、受験生は落ち着いて解答できたであろう。
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問1では、細胞壁の成分という基本的な知識が問われた。
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問2は、多核細胞と無核細胞の例についての知識が問われた。赤血球が無核であることは基本的な知識であるが、骨格筋の細胞が多核であることはやや細かい知識であったといえる。
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問3は、細胞小器官に関する基本的な知識が問われた。細胞小器官がミトコンドリアであることがわかれば、平易な問題である。
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問4は、動植物の組織と組織系についての知識が問われた。選択肢6の『指示したり』や『栄養を補給したり』といった表現で、戸惑った受験生がいたかもしれない。
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第2問「生殖と発生」
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生殖と発生の分野は、3年連続でAは植物テーマ、Bは動物テーマであった。
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Aは、テッポウユリのつぼみの減数分裂に関する問題で、つぼみの長さと各時期の細胞の割合を示したグラフの理解と、減数分裂に関する基礎的な知識をもとに解答することが求められた。
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問1の図1は、つぼみの長さと各時期の細胞の割合を示した見慣れないグラフであり、読み取りの力が要求された。選択肢の内容と図を比較しながら考えると解答しやすい。
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問2は、減数第一分裂と減数第二分裂の特徴について基本的な知識が問われた。
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問3は、減数分裂時の染色体数に関する問題であった。二価染色体を一つのまとまりとして数えるのか、それぞれの相同染色体を数えるのかという解釈の違いによって正答が変わるため、戸惑った受験生が多かったと考える。
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Bは、両生類の発生のしくみに関する基本的な問題であった。生殖と発生の分野のBでは、2008年度、2009年度で連続して複数の実験から考察させる、初見の題材を用いた問題が出題されたが、2010年度は教科書レベルの知識問題であった。
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問4は、形成体と誘導に関する基本的な知識が問われた。
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問5は、神経管の分化に関する基本的な知識が問われた。
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問6は、形成体の移植と二次胚形成に関する典型的な問題であった。
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第3問「遺伝」
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Aは、花の色に関する補足遺伝子の問題であった。問題文で遺伝子についての説明が十分なされており、遺伝子の相互作用について理解できていれば正答できる。
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問1は、二対の対立遺伝子の自家受精に関する問題であるが、一つの形質に着目してBb×Bbのみを考えればよいことに気づけば、容易に正答できる。
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問2は、自家受精によって次世代が白色花になる個体の遺伝子型を問う問題であった。遺伝子型にaaやbbを含むと、次世代は必ず白色花となるということに気づけば、選択肢を絞り込むことができる。
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問3は、交配結果から白色花個体Xの遺伝子型を決定する問題であった。『白色花個体』というキーワードをおさえれば、選択肢を絞り込むことができる。
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Bは、形質転換に関する問題や、DNAの構造を構成要素の結合部分から考えさせる問題など、いずれも教科書レベルの基本的な知識問題であった。
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問4は、形質転換の研究に関する基本的な知識問題であった。
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問5は、DNAを含む構造体についての基本的な知識問題であった。
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問6は、構成単位から二重らせん構造を図で選択させる目新しい問題であったが、内容自体は基本的な知識問題であった。
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第4問「環境と動物の反応」
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Aは、刺激と反応に関する基本的な知識を確認する問題であった。
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問1は、有髄神経繊維に関する基本的な知識問題であった。
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問2は、適刺激と効果器の反応に関する組合せ問題で、目新しい出題であった。正答以外の選択肢に誤りが含まれないことを一つひとつ確認していけば、自信をもって解答できただろう。
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Bは、現行の教育課程の教科書(改訂版)で本文に復活した酸素解離曲線に関する考察問題であった。酸素解離曲線に関する出題は、1992年度の追試験以来である。ヘモグロビンとミオグロビンの酸素との結合のしやすさ(酸素親和性)の違いをもとに、体内におけるそれぞれの役割を考察させる問題であった。
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問3は、ヘモグロビンに関する基本的な知識問題であった。
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問4は、一つひとつの選択肢を丁寧に図と照らし合わせて考えることが必要であった。
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問5は、ヘモグロビンとミオグロビンの酸素の結びつきやすさ(酸素親和性)から、組織(筋肉)でのそれぞれのはたらきを考察させる問題であった。ヘモグロビンおよびミオグロビンの酸素の結びつきやすさを理解できていれば、筋肉に『酸素が蓄えられる』もしくは『酸素が供給される』の判断ができなくても正答できる。
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第5問「環境と植物の反応」
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Aは、刺激に対する植物の反応についての出題であった。屈性や幼葉鞘が光の方向を受容する部位といった基本的な知識が問われた。
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問1は、屈性についての基本的な知識問題であった。屈性と傾性の判断で誤った受験生が多かったのではないかと考える。
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問2は、幼葉鞘が示す光屈性に関する知識問題であった。
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Bは、重力に対する幼葉鞘の屈性の研究についての問題であった。雲母板がオーキシンに与える影響をふまえたうえで、実験結果を考察することが求められた。重力屈性ではよく扱われる考察問題であるため、オーキシンが幼葉鞘の基部の重力屈性にどのように影響するかを知識として身につけ、正答を選択できた受験生も多かったと考える。
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問3は、実験1の結果から考察する問題であった。アベナテストに関する実験は教科書でも扱われているため、受験生にとって考えやすい内容であったといえる。
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問4は、実験結果をもとにした総合的な判断力が必要であった。実験結果を正しく読み取り、選択肢の内容を丁寧に読むことが必要であった。
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5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値) ※2005年は生物IBの平均点です。
年度 |
2009 |
2008 |
2007 |
2006 |
2005 |
- 平均点
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- 55.85
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- 57.64
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- 67.04
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- 69.60
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- 51.58
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6.2011年度センター試験攻略のポイント
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2011年度も、2010年度に引き続き基本的な知識問題の出題が予想される。対策として、教科書を中心とした正しい知識をしっかりと身につけることが最大のポイントである。生物Iの全範囲からまんべんなく出題されるうえ、やや細かい知識が問われることもある。 |
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2010年度は実験考察問題の出題割合が減少したが、今後も複数の実験を扱った複雑な考察問題は出題の可能性があるため、対策しておくことが必要である。特に図や表、グラフから必要な情報を正確に読み取る練習を積んでおきたい。目新しいグラフや複数のデータからの考察などは、過去の問題や模試の活用が効果的である。身につけた知識を応用した洞察力も、この練習によって高めることができる。 |
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生物Iの問題では、実験条件や結果を示す文章を速く正確に読み取ることも重要となる。試験本番で解答時間が足りないという事態に陥らないように、日ごろから解答時間を決めて問題に取り組むなど、自分なりの時間配分をもつようにしておくとよい。 |
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2010年度から、過去のセンター試験問題からの再利用が解禁された。2011年度以降も再利用される可能性が高いので、過去の問題で十分に演習をしておきたい。 |