物理I
1.総評
【2010年度センター試験の特徴】
・物理Iの全分野から幅広く出題された。
・電池の内部抵抗が、現行の教育課程ではじめて扱われた。
・語句・文章選択の問題が出題されなかった。
昨年に比べて、全体的な傾向に大きな変更はなく、物理Iの全分野から幅広く出題された。2009年度には5個出題された語句・文章選択の問題が2010年度は出題されなかったが、一方で、2009年度には出題されなかったグラフ選択問題が2個出題された。また、7択以上の問題が2009年度の5個から8個へと増加した。題材は典型的なものが多かったが、公式を用いるだけでは解答できない問題が多く、解答に時間を要する。また、電池の内部抵抗と電位差計が、現行の教育課程ではじめて扱われるなど、発展的な項目についての出題があった。センター試験としては難しい題材も出題されており、昨年より難化した。
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2.全体概況
【大問数・解答数】 |
大問構成は、昨年と同じ4大問。解答数は昨年より1個増加して25個。 |
【出題形式】 |
昨年5個出題された語句・文章選択の問題が今年は出題されなかった。一方、昨年出題されなかったグラフ選択問題が2個出題された。 |
【出題分野】 |
特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。電池の内部抵抗と電位差計が、現行の教育課程ではじめて扱われた。 |
【問題量】 |
昨年並。 |
【難易】 |
昨年より難化。 |
3.大問構成
大問 |
出題分野・大問名 |
配点 |
難易 |
備考(使用素材・テーマなど) |
第1問 |
- 小問集合
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- 30点
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- 標準
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第2問 |
- 生活と電気
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- 20点
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- やや難
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- A 交流
B 電池(内部抵抗を含む)
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第3問 |
- 波動
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- 20点
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- 難
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- A 光ファイバー
B 水面波の干渉
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第4問 |
- 運動とエネルギー
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- 30点
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- 標準
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- A 気体の状態変化
B 力学的エネルギー保存則、運動の法則 C 最大摩擦力、動摩擦力
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4.大問別分析
第1問「小問集合」
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生活と電気、波動、運動とエネルギーの各分野から幅広く出題された。例年に比べて、典型的な題材を用いた問題が多かった。図、グラフ、数値の選択など、出題形式がバラエティに富んでいた。
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問1は、ばねにつるしたおもりを引き下げる力の大きさについての問題で、つり合いの式を立てずに考えると誤りやすかった。
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問2は、直線電流とコイルを題材とした、ヘルツの実験を想起させる問題であった。電流がつくる磁場と電磁誘導の両方についての知識が必要であった。
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問3は、正弦波についてのグラフ選択問題で、与えられたグラフから周期と波の進み方を読み取る必要があった。
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問4は、力のモーメントのつり合いについての典型的な問題で、どの点のまわりのつり合いを考えるかがポイントであった。
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問5は、消費電力と水の温度上昇についての問題で、計算量が多くならないように数値が工夫されていた。
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問6は、弦の基本振動について、波の伝わる速さと振動数の両方が問われた。
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第2問「生活と電気」
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Aは、交流の送電を題材に、変圧のしくみと交流で送電される理由について考察する問題であった。
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問1は、変圧器の巻き数比が電圧の比に等しいことを用いる典型的な問題であった。
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問2は、送電電圧を上げることによる電力損失の変化についての問題で、電力についての理解度が問われた。
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Bは、電池を題材にした探究活動的な問題で、電池の起電力と内部抵抗が現行の教育課程ではじめて扱われた。物理IIで学習することが多い題材であるため、物理Iのみを履修した受験生にとっては難しかっただろう。
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問3は、電池の内部抵抗を含む回路を題材とした問題で、キルヒホッフの法則を知らないと正答するのが難しい。
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問4は、電位差計の原理について触れた問題で、電位についての理解度が問われた。
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第3問「波動」
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Aは、光ファイバーを題材にした問題で、センター試験としては難しい。
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問1は、光がファイバーを通過するのに要する時間についての問題で、同様の問題を解いた経験がなければ、現象の把握が難しかっただろう。
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問2は、全反射の条件についての問題で、複雑な計算が必要であった。
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Bは、水面波の干渉についての問題であった。
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問3は、波が強めあう線を求める典型的な問題だが、波源が逆位相であることに注意が必要であった。
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問4は、近似の考え方を用いる目新しい問題で誤りやすいが、問3の選択肢がヒントになっていることに気がつけば正答に到達できる。
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第4問「運動とエネルギー」
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Aは、ピストンとシリンダーに閉じこめられた気体の状態変化についての問題であった。
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問1は、等温変化についての基本的な問題で、力のつり合いを考えればよい。
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問2は、ボイルの法則を用いる問題で、問1の状況をふまえた上で考察する必要があった。
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問3は、等温変化と断熱変化を比較して考察する問題であった。両方のシリンダー内の気体の圧力が等しいことに注目し、図5のグラフを用いることができれば正答を導きやすくなる。
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Bは摩擦のない斜面とばねを題材に、Cは摩擦のある斜面および水平面を題材に、運動とエネルギーについてバランスよく問われた。
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問4は、力学的エネルギーの保存についての基本的な問題であった。ばねの縮みでなく、ばねの長さを問うている点が目新しいが、解答に迷うことがないように選択肢が工夫されていた。
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問5も、力学的エネルギーの保存についての問題で、ばねによって力学的エネルギーが変化しないことを用いて考察すればよい。
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問6は、現象全体での加速度の変化を求めさせる問題で、物体に加わる力の向きと大きさの変化を正しく把握する必要があった。運動の向きに沿った方向の成分が問われている点が目新しい。
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問7は、最大摩擦力についての問題であった。斜面の傾きを頂角の大きさで与える点が目新しく、戸惑った受験生もいただろう。
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問8は、動摩擦力を含む運動についての問題であった。運動方程式から加速度を求めて等加速度直線運動の公式を用いる解法と、仕事とエネルギーの関係を用いる解法がある。後者の方が計算量は少ない。
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5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値) ※2005年度は物理IBの平均点です。
年度 |
2009 |
2008 |
2007 |
2006 |
2005 |
- 平均点
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- 63.55
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- 64.55
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- 64.42
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- 73.42
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- 59.97
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6.2011年度センター試験攻略のポイント
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全範囲から幅広く出題される傾向が継続しているため、苦手分野をつくらないようにまんべんなく学習しておく必要がある。センター試験の問題の多くは、標準的な難易度であるので、まずは基本事項を確実に理解することが大切である。 |
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問題で扱われる題材はオーソドックスなものが多いため、過去の問題を用いた演習が効果的である。ただし、解答に至るまでの考え方や問い方があまり見慣れない問題も出題されるため、解法の暗記だけでは対応が難しい。問題文や図から現象を把握して式を立てるまでの過程を重点的に練習しておきたい。 |
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2009年度は観測者が動く場合のドップラー効果、2010年度は電池の内部抵抗と、発展項目からの出題が続いた。これらの問題では知識がなくても考察できるように配慮されているが、発展項目や物理IIと関連する項目も含めて幅広く学習しておくとよい。 |