・資料読解重視の傾向は継続し、資料や写真の読解を伴う出題傾向に変化はなかった。
・日本に関する出題比率が高まり、幅広い分野からの出題がみられた。
・難易は昨年並。
全6大問とも大問内の設問数が6問となった。地理Aとの共通問題は、「地域調査」(18点分、地理Aにはオリジナルで1問追加)である点に変わりはなかった。内容面では、資料読解を伴う問題が昨年並に出題されたほか、地理的技能を要求する設問が散見された。また、日本に関する出題比率が高まったほか、文中下線問題が増加した。正答の判断においては全般的に標準的な知識で対応できる問題が多く、全体的な難易は昨年並であった。 |
【大問数・解答数】 | 大問数は6、解答数は1個減少し36。大問内の設問数が変更され、いずれの大問も解答数は6個ずつとなった。第2問が地理Aとの共通問題。 |
【出題形式】 | 地図・模式図、写真の読解を伴う出題は昨年に比べ微増、文章選択と組合せ問題は昨年並。文中下線問題は昨年の3問から6問に増加した。なお、地形図の読解を伴う設問は3問あった。 |
【出題分野】 | 「自然環境分野」と「産業分野」中心の出題は例年通りで、他に「地域調査」「地誌」「現代世界の諸課題」を含めた構成も昨年と同様であった。また、日本に関する出題が昨年の10問から13問へ増加し、地域調査以外の大問でも散見された。 |
【問題量】 | 昨年並。 |
【難易】 | 昨年並。 |
大問 | 出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考(使用素材・テーマなど) |
第1問 |
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第2問 |
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第3問 |
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第4問 |
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第5問 |
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第6問 |
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第1問「世界と日本の自然環境」
自然環境を扱った出題。昨年に比べ解答数が2個減少し6個になった。標準的な設問が多いものの、図版やグラフであまりなじみのない形式が扱われたこともあり、解答に時間のかかった受験生もいたと思われる。また、日本に関連した設問が3問みられた。 | |
問2は、アフリカの気候帯分布についての工夫された出題であったが、題意の解釈に時間を要す。気圧帯と降雨の関係が理解できていれば判断できるが、受験生にはやや難しかったであろう。 | |
問3は、景観写真と撮影地点との組合せ問題であった。Kのモハーヴェ砂漠については、イメージしづらかった受験生もいたであろう。 | |
問4は、地図中に示された4地点についての気温の年較差と年降水量のうち、チベットに該当するものを選択する問題であった。北海道とチベットに絞り込んだ上で正答を判断することがポイント。 |
第2問「山形県最上地域の地域調査」
山形県最上地域の地域調査を扱った出題。地域調査は昨年同様に地理Aとの共通問題として出題された。地形図や写真、鳥瞰図、各種グラフと様々な資料が扱われ、それらを活用するうえでの技能が要求された。なお、地形図の読み取りを伴う問題は2問あった。 | |
問1では、山形県最上地域付近の地形についての鳥瞰図を扱い、地図中のどの方向から見たものかを判別する問題であった。尾根と平野の位置関係を捉えられるかが判断ポイントであり、空間把握力が求められた。 | |
問2は、家屋の外観を撮影した2枚の写真から、撮影場所の気候を考えさせる問題であった。写真や地図の読解に労力を費やした受験生もいたと思われるが、やませに関する理解があれば解答は難しくない。 | |
問3では、最上地域の市町村ごとの15歳未満人口割合、人口密度、野菜の産出額が統計表と統計地図で示され、その組合せを判別する問題であったが、統計地図の表現方法を整理できていれば難しくはない。地理的技能である作図の観点を反映した問題であった。 | |
問4では、地形図中にみられる地形について述べた文章中の下線の正誤を判別することが求められた。5万分の1地形図上では、600mがどの程度かをイメージできるかがポイントであった。標高差との判断に迷った受験生もいたと思われる。 |
第3問「世界の資源・エネルギーと産業」
世界の資源・エネルギーと産業を扱った出題。地理らしいオーソドックスな出題が多く、学習量によって差がつく内容であった。 | |
問1は、天然ガスの産出量、輸出量、輸入量と、それらの世界上位5か国との組合せ問題。輸入量の判断は難しくないが、産出量と輸出量についてはアメリカ合衆国とノルウェーの判断がポイントとなった。代表的な資源の産出量と輸出量、輸入量の上位国については、その背景や理由とともにおさえておきたい。 | |
問2は、オーストラリア、カナダ、フランス、ロシアの発電量の内訳を示したグラフからロシアを判断する問題であった。水力と原子力からカナダとフランスの判断は難しくはないが、オーストラリアでは資源が豊富であることから原子力発電がないことを想起できたかがポイントであった。 | |
問6では、各種製品の中国全国に占める省・自治区別生産量割合が工業立地の観点から問われたが、家庭用冷蔵庫とビールとの判別が難しかった。市場指向型の特徴を理解できているかがポイントであった。 |
第4問「都市と村落、生活文化」
都市と村落および生活文化を扱った出題。昨年と異なり「生活文化」がテーマに加えられたが、出題は2問にとどまった。地図や各種グラフ、人口ピラミッドなどが扱われた。 | |
問1は、アフリカとヨーロッパの都市人口と農村人口の推移を示したグラフから、アフリカの都市人口を判断する問題であった。増加傾向にあることから、1と3のグラフがアフリカの都市人口、農村人口のいずれかであると判断できるが、正答を絞り込むには1950年や1960年に注目して判断することがポイントであった。 | |
問4では、日本のある都市の4つの地域を取り上げ、人口ピラミッドとそれに関する文章を判別することが求められた。都市郊外地域での高齢化を想起し、これを4つの人口ピラミッドのうち、どれに見出せるかがポイントであった。人口動態と都市構造とを絡めて考察させる工夫された問題であった。 | |
問6は、OECD加盟国の1人当たりGDPと、雇用者1人当たり年間労働時間を示したグラフからオランダ、韓国、日本、ポーランドについて考察する文章選択問題。韓国における1980年代の労働時間の増減の判断は、受験生には難しかったであろう。 |
第5問「ヨーロッパの地誌」
ヨーロッパの地誌を扱った出題。問4などやや応用的な理解を要する問題もあったが、全体的には標準的な知識が扱われ、受験生には取り組みやすかったと思われる。 | |
問1は、国別に示された高度別面積割合と各国の組合せ問題であった。地体構造の特徴をそれぞれのグラフに見出せるかがポイントであった。扱われている内容は基本的事項であるものの、グラフで読み取った標高から判断するという応用的な思考力が求められた。 | |
問3は、地図中に示されたヨーロッパにおける3つの工業地域とその説明との組合せ問題。ヨーロッパ各国の特徴を整理できているかが求められた。イタリア北部とチェコの判別に迷う受験生もいたと思われるが、「賃金の安さ」から東ヨーロッパのチェコを想起できるかがポイントであった。 | |
問4は、オランダ、ドイツ、フランスの貿易依存度と輸出・輸入の貿易額上位5か国を示した表から3国を判別する組合せ問題。貿易依存度の高さからオランダを、市場の大きさから輸出先1位の国をドイツと判断することがポイントであった。受験生には難しかっただろうが、各国の貿易関係に加え地図上での隣接関係の想起を求めた工夫のある問題であった。 |
第6問「現代世界の諸課題」
現代世界の諸課題を扱った出題。人口、労働、貿易、情報格差など社会的な課題が幅広く扱われた。昨年に比べ、設問数が1個増加し、配点も3点増加した。 | |
問5は、ASEAN、CIS、NAFTAの1人当たり総所得と1人当たりGNIを判別する組合せ問題。1人当たりGNIの最上位国ではシンガポールを想起できたかどうかがポイントであった。 | |
問6は、インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシアのインターネット普及率、都市人口率、1人当たりGDPを判別する組合せ問題であった。1人当たりGDPからマレーシアとタイに絞り込めるかがポイントであった。 |
年度 | 2009 | 2008 | 2007 | 2006 | 2005 |
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地図や統計資料の読み取りを絡めた組合せ問題や文章選択問題が出題の中心である点は大きく変わっていないので、過去のセンター試験や模擬試験を繰り返し確認しておくことは有効な対策である。また、オーソドックスで基本知識の定着を確認する出題が多いため、少なくとも過去問で扱われた知識内容については教科書でしっかり確認しておきたい。 | |
地域調査のみならず、日本の地誌についても一定の理解が求められるので、産業・貿易の経年変化なども含めて理解の定着を図りたい。地形図の読み取りに関しても、模擬試験の復習などを通して、慣れておくことが重要である。 | |
統計表やグラフに関しては、数値やグラフの変化や差異が見られる点に着目し、背景を考える習慣をつけておきたい。仮説を立て、既習の広範な知識を駆使して検証するプロセスが大事である。 | |
制限時間内に解答を完了できるよう時間配分に留意した演習を重ね、各設問に落ち着いて取り組めるようにしておくことが大事である。 | |
各分野において軸となる重要事項、原理原則はしっかりとおさえ、たとえ知らない事項が出てきてもそこから応用して考察するスキルを習得することが大事である。どのような問題や出題形式に遭遇しても攻略の糸口を見つける対応力を培っておきたい。 |