問題講評
データネット2010
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地理A

1.総評

【2010年度センター試験の特徴】 

・大問数、解答数は昨年同様。第4問の設問数が1問減り、第5問の設問数が1問増えた。
・地理Aの学習内容を重視した出題内容で、オーソドックスな出題形式であった。
・全体的に生活文化色は薄い。


 昨年と同様に、大問数5・解答数36の構成で、「地域調査」の大問は1問を除き地理Bとの共通問題であった。出題形式については、文章選択が減り、文中下線選択が増えたほかは、昨年同様であった。出題内容は地理Aの学習内容を重視したオーソドックスな問題が中心であることから、個々の問題の難易は標準〜やや易である。しかし、第1問・第2問が地理Aの受験生にとっては時間のかかる問題が多く、全体としては負担感のある問題であった。また、誤りのポイントは明確であるが図表の読み込みが必要な問題や、地理Aの受験生にとってはやや細かい知識を求められる問題も数問あった。したがって、全体の難易としては昨年並である。
2.全体概況

【大問数・解答数】 昨年同様に、大問数は5、解答数は36。第2問が1問を除き地理Bとの共通問題。昨年よりも第4問の設問数が1問減り、第5問の設問数が1問増えた。
【出題形式】 文章選択が減り(14→9)、文中下線選択が増えた(2→5)。組合せや図表中から選ぶ出題は例年通り。昨年同様グラフを扱った問題が多い。
【出題分野】 出題分野は昨年同様で、生活文化に関する扱いはやや薄い。昨年に引き続き、地形図を用いた地域調査の問題が地理Bとの共通問題として出題された。
【問題量】 問題量は昨年並だが、第1問・第2問が地図の読み取りなどで時間を要する分、全体としては負担感のある問題であった。
【難易】 昨年並。
3.大問構成

大問 出題分野・大問名 配点 難易 備考(使用素材・テーマなど)
第1問
地理の基礎的事項
16点
標準
自然環境、地球上の位置関係、世界の農業、生活文化
第2問
山形県最上地域の地域調査
21点
やや難
地域調査
※問7以外は地理Bとの共通問題
第3問
国境を越えた世界の結びつき
21点
やや易
人・モノ・情報の移動、国家の結びつき
第4問
太平洋を中心とした地域の自然と生活・文化
21点
標準
自然環境、産業、生活文化、日本との関係
第5問
地球的課題
21点
標準
環境問題、食料問題、国際協力
4.大問別分析

第1問「地理の基礎的事項」

  • 昨年同様、平面上の地図に関する内容のほかに、世界の農業や生活文化に関する内容が出題された。全体的に基礎的事項の出題であった。設問によって難易の差がある。
  • 問1は、東京からみたペキンの方位とおよその距離に関する問題であった。注釈に「東京を中心とした正距方位図法による。」とあるので、方位の判断は易しい。距離は赤道の全周を把握しているかがポイント。
  • 問2は、2地点間の地球上での距離に関する問題であった。経度差に着目することに気づけるかがポイント。
  • 問3は、15度間隔の経緯線で示された範囲の面積について大小を比較する問題であった。赤道の位置を把握しているかがポイントであるが、中心点の対蹠点が円の外周であり、外延部ほど面積の歪みが大きいという正距方位図法の特色を理解できていなければ判断に迷っただろう。
  • 問4は、地図から地震災害がほとんど発生しない地域を判別する問題であり、基礎的内容。四川大地震についての理解があれば、さらに容易に解答できたであろう。時事的内容をおさえておくことも大事。
  • 問5は、地図から氷河が存在しない地域を判別する問題であった。Gのアラスカ周辺には暖流が流れており、学習が進んでいる受験生ほど既存の知識から判断に迷う問題であった。
  • 問6は、バングラデシュの主食を判別する問題であった。ガンジス川下流域が稲作地帯であることを把握していることがポイント。
  • 問7は、水辺の風景を楽しむ人々の写真を使った問題で、地理Aらしい生活文化の内容。生活文化の分野でよく扱われる典型的な写真であるため、判別は易しかったと思われる。
  • 問8は、国土の用途に関する表中選択であった。取り上げられている国に明確な特色があり、さらに日本も含まれるため、日本を手がかりに解答できる。カンボジアと日本はいずれも国土に占める森林の割合が高いが、日本では森林が国土の3分の2を占めることから両者の判別ができる。

    第2問「山形県最上地域の地域調査」

  • 全体的に、じっくり解けば解答できるが、地理Aの受験生には時間がかかる問題であったため、難しく感じたかもしれない。問7以外の詳細は地理B第2問参照。
  • 問7は、生活・文化に関する地理Aらしい問題であった。しかし、第2問全体の出題の流れから考えると唐突な印象であった。

    第3問「国境を越えた世界の結びつき」

  • 国境を越えた世界の結びつきについて幅広く出題された。全体的には地理Aの基礎的な内容で、判断ポイントがはっきりしている問題が多かった。
  • 問1は、各国の登録外国人人口を国籍別に示した表からドイツを判別する問題であった。ガストアルバイターをおさえていれば積極的にドイツを判別できただろう。
  • 問2は、アメリカ合衆国への国際移動に関する下線選択問題であった。正答以外の選択肢については、把握していない受験生も多いだろうが、JOCV(青年海外協力隊)の派遣先はアメリカ合衆国が多いという内容は誤りと気づけたはずである。
  • 問3は、日本に在住する外国人の国籍別分布状況・分布割合(都道府県別)に関する問題であった。日系ブラジル人が自動車産業に従事しており、愛知・静岡などに分布していることを想起できるかがポイント。分布地域だけでなく都道府県別の分布割合も考慮して判断する必要があるので、迷った受験生もいたかもしれない。
  • 問4は、カカオ豆、コーヒー生豆、砂糖について、地図上に示された日本の輸入相手国から品目を判断する問題であった。ブラジルのコーヒー、ガーナのカカオに気づくことがポイント。地図中には国名が示されていないが、国名が分からなくとも、アフリカ、南米など地域ごとの特徴から解答できるだろう。
  • 問5は、日本の半導体等電子部品の輸入相手先の変化に関する問題で、時事的な事柄が問われた。中国の変化に着目できるかがポイントとなる、やや難しい問題。経年変化を問われており、どの年代を基準として図を分析するかも解答する上ではポイントとなった。
  • 問6は、空港・港湾の輸入額に関する問題であった。貨物輸送における交通手段の特色や成田空港の輸入額が多いことを知っていれば解答できるものの、地理Aの受験生には難しいかもしれない。
  • 問7は、日本に立地する外資系企業の国・地域を示した表からアメリカを判別する問題であった。日本に立地する外資系企業といえば、アメリカ合衆国をイメージしやすいので、解答できただろう。

    第4問「太平洋を中心とした地域の自然と生活・文化」

  • 太平洋を中心とした地域の自然と生活・文化について幅広く出題された。全体的には地理Aの基礎的な内容についてオーソドックスに出題された。
  • 問1は、大地形を中心とする自然環境に関する文章選択であった。自然環境の分野でよく扱う地域を問うており、基本的な問題である。
  • 問2は、太平洋を中心とする地域に位置する4都市の雨温図からダーウィンを判別する問題であった。ホニアラという都市は受験生にはなじみがないと思われるが、低緯度地域なので熱帯であることには気づけるだろう。
  • 問3は、ハワイ諸島、ラパヌイ島(イースター島)、ガラパゴス諸島の世界遺産に関する写真と位置の組合せ問題であった。写真は一般的なものであるので判別は易しい。
  • 問4は、おもな銅の産出地を示した図から資源名を判断する問題であった。南米西海岸に分布していることを読み取り、チリで生産量が多いことをおさえていれば判断できる。
  • 問5は、太平洋を中心とする地域の産業や経済に関する文章選択であった。選択肢のなかには受験生にはなじみのない地誌的内容も含まれるが、オーストラリアやニュージーランドがASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟しているという内容は明らかに誤りと判別できる。
  • 問6は、生活・文化に関する文章選択であった。どの選択肢も基礎事項であり、またニュージーランドでは英語のほかに中国語が公用語とされているという誤りも判断しやすく、易しい。
  • 問7は、オーストラリア、シンガポール、日本における国民の年間旅行者数に関する各国の関係性を示した図から国名を判別する問題であった。各国の年間旅行者の出入国者数と人口規模から3カ国を判別する。3カ国のうち、Qからは約60〜70万人がP・Rへ出国しているので日本と判別でき、次にPへ約60万人がQ・Rから入国しているのでシンガポールと判別できる。P・Rは判断ポイントが弱く、自信を持って解答することが難しい。

    第5問「地球的課題」

  • 昨年は現代世界の諸課題のうち「食料」にテーマが置かれていたが、今年は現代世界の諸課題が幅広く出題された。資料が工夫された問題が多いが、落ち着いて取り組めば判断ポイントが見分けられる問題が多かった。
  • 問1は、各国の安全な水・二酸化硫黄排出量・乳幼児死亡率に関する階級区分図と国名を判別する問題であった。アフリカが高く示された図は死亡率を、日本が高く示された図は安全な水を想起できるかがポイント。二酸化硫黄排出量に関してはなじみが薄いかもしれない。
  • 問2は、栄養不足人口が高い国に関する農業従事者1人当たり農業総生産と穀物自給率に関する下線選択であった。プランテーション農業が穀物自給率と関連していないことに気がつけば解答できる。図や文章が多く、問われている内容の理解までにいたらなかった受験生がいたかもしれない。
  • 問3は、オーストラリア、中国、ロシアの小麦輸出量の推移を示した図から国名を判別する問題であった。オーストラリアが小麦の生産が多いことを想起できたとしても、中国とロシアの判別がやや難しい。
  • 問4は、「緑の革命」に関する文章選択であった。どの選択肢も基本的な内容を問うている。
  • 問5は、韓国、タイ、中国、メキシコにおける大気汚染の状況と背景に関する文章選択であった。各国と選択肢を正確に対応する必要があるが、石炭を豊富に産出するという内容から中国は容易に判別でき、そのほかの内容も基本事項だった。
  • 問6は、ドイツのフライブルク市の様子を示した地図の読図問題であった。図を正確に読み取れば解答できる選択肢があるものの、パークアンドライドの内容を把握しているかがポイントであった。
  • 問7は、バングラデシュ、カンボジア、東ティモールにおける日本のODA(政府開発援助)に関する問題であった。ODAに関する知識がなくても、選択肢に含まれるサイクロン、独立紛争などの内容から判断できただろう。
    5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

    年度 2009 2008 2007 2006 2005
    平均点
    54.70
    56.83
    53.91
    62.67
    65.68