世界史A
1.総評
【2010年度センター試験の特徴】
・戦後史を含む近現代史重視の傾向が顕著になった。
・欧米史の出題が増加、地図問題は今年も出題されなかった。
・生活や「モノ」に関わる出題が目立った。
大問構成、解答数は昨年通り。各大問で、現代につながる歴史を考察させるテーマをかかげ、日本との関わりや、政治・社会経済・文化、生活など、様々な視点から歴史事象がとりあげられた。特に、「電気冷蔵庫」「電話」「綿花」や発明品など生活や「モノ」に関わる出題が目立った。時代については、戦後史を含む近現代史からの出題が増加、第2問はすべて19世紀以降から出題されるなど、近現代史重視の傾向が顕著となった。地域では欧米史の出題が増え、ソ連を含むロシアやアメリカからの出題が目立った。とはいえ、全体的には時代・地域が網羅された出題がされた。難易は昨年よりやや易化。
|
2.全体概況
【大問数・解答数】 |
昨年通り大問数は3、解答数は33個であった。 |
【出題形式】 |
昨年より語句選択の出題が増加し(1→5)、2文の正誤の判別問題は減少した(6→3)。なお、地図を用いた問題は今年も出題されなかった。昨年1問であった年表を用いた出題が2問見られた。 |
【出題分野】 |
時代では、前近代史の出題が減少し、戦後史を含む近現代史からの出題が大幅に増加した。地域では、欧米史が増え、ソ連を含むロシアやアメリカからの出題が目立った。分野については、昨年同様に政治史中心ではあるが、社会経済史の出題も目立った。 |
【問題量】 |
昨年並。 |
【難易】 |
昨年よりやや易化。 |
3.大問構成
大問 |
出題分野・大問名 |
配点 |
難易 |
備考(使用素材・テーマなど) |
第1問 |
- 歴史上の支配者・指導者による近代化の試み
|
- 33点
|
- 標準
|
- A オスマン帝国のセリム3世
B メキシコのディアス C ロシアのアレクサンドル2世
|
第2問 |
- 社会の変革を目指す思想や運動、社会主義国家
|
- 34点
|
- やや易
|
- A 19世紀のヨーロッパ
B 近代中国 C ソ連
|
第3問 |
- 技術や資源開発の歴史
|
- 33点
|
- 標準
|
- A インド
B 欧米 C 西アジア
|
4.大問別分析
第1問「歴史上の支配者・指導者による近代化の試み」
|
Aはオスマン帝国のセリム3世、Bはメキシコのディアス、Cはロシアのアレクサンドル2世が行った近代化の試みを切り口に、対外関係を含む政治や経済に関わる出来事が出題された。人物を軸に、現代の世界とのつながりを考察させるテーマであった。
|
|
問2は、17〜19世紀のオスマン帝国のヨーロッパとの関係についての年代整序問題。第2次ウィーン包囲の失敗がオスマン帝国に打撃を与え、その後のカルロヴィッツ条約によりオスマン帝国のヨーロッパにおける優位が失われたという流れをおさえているかどうかがポイント。受験生にとっては難しい問題であった。
|
|
問6は、20世紀前半におけるアメリカ合衆国の外交政策の転換点について、具体的な事例から人物と政策の組合せが問われた。アメリカ合衆国の大統領の政策についての理解を問うものであるが、設問中に文章があり、その空欄補充の組合せを判断するものなので、比較的正答が選びやすい出題であった。
|
|
問9は、クリミア戦争に参加しなかった国を選ぶ問題であった。クリミア戦争がヨーロッパを中心とした戦争であることから、不参加国がアメリカ合衆国であることが想起できる。また、当時アメリカ合衆国がモンロー宣言を発表してヨーロッパ大陸とアメリカ大陸の相互不干渉を宣言したことを把握していれば、確実に正答を判断できる。
|
|
問11は、戦後史の地域横断的な年代整序問題。選択肢のそれぞれの出来事は、教科書の掲載場所が様々で、時期の判断に迷った生徒も多かったと思われる。特に、初の先進国首脳会議(サミット)の開催時期の判断が難しかった。近現代史重視の観点から、世界史Aらしい出題であった。
|
第2問「社会の変革を目指す思想や運動、社会主義国家」
|
Aは19世紀のヨーロッパ、Bは近代中国、Cはソ連について、近現代史における基本的な知識を中心に出題された。すべて19世紀以降の近現代史の設問で構成され、Cでは、ソ連の歴史を軸に戦後の冷戦期の世界について出題された。
|
|
問6は、1864年より後に起こった出来事を選ぶ問題であった。日本を含む同時期の東アジア・東南アジアの状況が理解できているかどうかが問われた。ユエ条約は、掲載されている教科書も少なく、受験生には難しかったであろう。
|
|
問7は、義和団事件をきっかけとした、列強の中国進出に関わる出題であった。文章中の「中国東北部に駐留を続けた」をヒントにロシアを想起できれば、正答は選びやすかったであろう。義和団事件以降の東アジア情勢の変化を理解できているかどうかがポイント。設問の文章が、義和団事件後に起きた日露戦争の背景につながるものであると見抜くことができれば、確実に正答を判断できる。
|
|
問9は、独ソ不可侵条約が結ばれた時期が年表形式で出題された。1934〜1941年の短い期間での時期判断で、受験生にとってはやや難しかったかもしれない。ここでは、独ソ不可侵条約の意味を理解できているかどうかが時期判断のポイント。
|
第3問「技術や資源開発の歴史」
|
Aはインド、Bは欧米、Cは西アジアと、各地域における技術や資源開発の歴史を切り口に、政治・社会経済・文化など様々な分野から出題された。古代文明の出題もあり、幅広い時代が扱われた。現代につながる歴史を考察させるリード文であるとともに、設問でも日常生活に関わる「モノ」がとりあげられ、現行課程を反映した世界史Aらしい出題であった。
|
|
問3は、インドとイギリスの貿易関係に産業革命が与えた影響について理解できているかどうかが問われた。受験生が苦手とする社会経済史からの出題であった。インドの特産品は「綿花」で、「綿布」が伝統的手工業であったこと、それが産業革命によりイギリスからは加工品である「綿布」がインドに輸出されたことをおさえていたかどうかがポイント。
|
|
問7は、アメリカ合衆国における技術の発展や普及についての年代整序問題であった。電話の発明と電気冷蔵庫の普及の時期判断で迷ったと思われる。電話の発明は19世紀、家電製品の普及は1920年代の大衆消費社会でのこと。このような生活史の問題は昨年も出題されており、世界史Aではぜひおさえておきたい。
|
|
問10・11は、いずれも数次にわたって行われた中東戦争について、それぞれの戦争の内容を正確に理解できているかどうかが問われた。なお、問11では20世紀のエジプトについての正確な知識が求められ、受験生にとっては難しかったであろう。
|
5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 |
2009 |
2008 |
2007 |
2006 |
2005 |
- 平均点
|
- 44.18
|
- 49.28
|
- 47.35
|
- 44.87
|
- 44.32
|