・幅広い分野にわたって、基礎知識が定着しているかが問われた。
・今年も需要・供給曲線が出題されるなど、資料読解をからめての思考力などが問われた。
多角的・総合的視点のリード文という傾向は、昨年から変更がなかった。大問構成は、政治分野と経済分野の融合問題が1大問、国際政治分野が1大問、政治分野が1大問、経済分野が2大問出題された。基礎的かつ重要な事項が知識として定着しているかどうかを問う出題を中心に、資料読解をからめての思考力など応用力も求められた。きちんと学習を積み上げてきた受験生にとっては高得点が期待できる出題であるが、易しかった昨年に比べると、今年は難化した。 |
【大問数・解答数】 | 大問数5、解答数38個は昨年から変更なし。 |
【出題形式】 | 文章選択問題中心の傾向は昨年から変更なし。1行の文章選択問題が増加(10→15)、2行の文章選択問題が減少した(22→16)。また、統計資料や図表を用いた問題が今年は6題出題された。 |
【出題分野】 | 政治分野と経済分野の融合問題が1問、政治分野・経済分野・国際経済分野を1問ずつ含んだ国際政治分野が1問、経済分野を1問含んだ政治分野が1問、経済分野が1問、国際経済分野を1問含んだ経済分野が1問出題された。 |
【問題量】 | 昨年並。 |
【難易】 | 昨年より難化。 |
大問 | 出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考(使用素材・テーマなど) |
第1問 |
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第2問 |
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第3問 |
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第4問 |
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第5問 |
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第1問「都市と地方」
政治分野と経済分野の融合問題。都市と地方をテーマとし、第二次世界大戦後から現在までの日本経済や地方行政、立法などについて幅広く問われた。 | |
問1は、地方公共団体間の財政力の格差のグラフから、政令指定都市、中規模の市、小規模の町村を選ばせる組合せ問題。所得水準などの高いところの方が一人当たりの税収も多いため、横軸の人口一人当たり地方税収入額で判断する。統計資料の読み取りに際し、背景となる知識を必要とした。 | |
問2は、戦後の日本の貿易について問われた。戦後から高度経済成長期、そしてそれ以降の日本の貿易の特徴を理解していれば、正答を導ける。 | |
問3は、団塊の世代について誤りを選ぶ問題。厚生年金の支給額が引き上げられたという誤りは、近年の年金制度の状況を理解していれば、容易に判断できた。 | |
問5は、高度経済成長期に日本で生じた現象について誤りを選ぶ問題。現在では使用されていない第二種兼業農家という言葉の意味を押さえていたかどうかがポイント。 | |
問7は、議員提出法案と内閣提出法案それぞれの提出数と成立数の推移を示したグラフから、議員提出法案の提出数を選ぶ問題。提出数の方が成立数より多いこと、全体的に内閣提出法案の方が多いことをふまえて判断する必要があった。 | |
問8は、財政的な優遇措置を含む過疎対策について誤りを選ぶ問題。補助金の使途を限定することが弾力的な運営につながるという矛盾に気づきさえすれば、容易に判断できた。 | |
問10は、日本における市民運動や住民運動について誤りを選ぶ問題。正答選択肢の内容は、岐阜県御嵩町が代表的であり、住民投票の例として教科書などに必ず掲載されているため、容易に想像できる。ただし、「建設が中止された例はない」かどうかまでは学習していない受験生が多かったのではないだろうか。常識的に考えての判断となり、やや迷ったであろう。 |
第2問「戦後の国際政治」
政治分野・経済分野・国際経済分野を1問ずつ含んだ国際政治分野からの出題。戦後の国際政治を中心に、日本や世界の経済問題などが問われた。 | |
問1は、第二次世界大戦後の国際政治について誤りを選ぶ問題。警察予備隊の設置は、安全保障条約ではなく朝鮮戦争に伴うものであることを判断できたかどうかがポイント。 | |
問2は、民主主義の歴史に登場する憲法・宣言とその文言の組合せ問題。「人たるに値する」、「生命、自由および幸福の追求」、「権力の分立」がキーワードであり、それらと憲法・宣言をセットで理解していれば容易に判断できる基本問題であった。 | |
問6は、安全保障の一つの方法である「勢力均衡」の意味について問われた。「勢力均衡」という言葉の意味を推測すれば、正答を導くことができた。 | |
問7は、世界で起きた紛争や戦争の場所とその説明を組み合せる、地図を用いた問題。「領土帰属」や「核開発競争」からカシミール、「連邦国家内で、独立を求める共和国」からチェチェンであり、そこから容易に正答を導くことができた。なお、「多数派と少数派」、「大規模な虐殺」からルワンダと判断できる。 |
第3問「司法制度と行政の民主化」
経済分野を1問含んだ政治分野からの出題。司法制度改革を切り口に、行政や立法などに関して幅広く出題された。 | |
問1は、刑事裁判に適用される原則について誤りを選ぶ問題。各選択肢の内容は無罪推定の原則、一事不再理、疑わしきは被告人の利益に、遡及処罰の禁止といずれも基本事項であるため、用語の意味を確実に理解していれば、正答を導くことができた。 | |
問2は、法律の制定・公布に至る過程について問われた。いずれの選択肢も日本国憲法に規定されている基本的内容であり、容易に判断できた。 | |
問3は、地方分権を促進する改革の例について誤りを選ぶ問題。地方分権の意味をふまえた上で、「市町村税を減らし」は自主財源が減らされるということ、「補助金に上乗せする」は国から使途が特定されている特定財源が増えるということが理解できれば、正答を導くことができた。 | |
問6は、現在の日本における労働者の就労にかかわる法律の内容について誤りを選ぶ問題。休日数といった規定は労働基準法になく、規定されているのは労働時間などであるため、そこから正答を判断したい。ただ、その他の選択肢は内容が細かく、やや難問であった。 | |
問7は、国民の意見を国の政治に反映させる手段について誤りを選ぶ問題。族議員の意味さえ分かれば、容易に判断できた。 |
第4問「経済主体とその活動」
経済分野からの出題。三つの経済主体による活動などについて、多面的に出題され、時事的な内容も問われた。 | |
問1は、三つの経済主体による国民経済の循環の図をもとに、その循環の中身を組合せる問題。解法としてはまず、A、Bが2つともXに向かっていることから、賃金が両方に入っているアかイのいずれかが当てはまると考える。そうなると、Xが家計と判断でき、よってYが政府となり、企業から家計に向かうのはア、政府から家計に向かうのはイ、政府から企業に向かうのはウとなる。問われている内容は基本事項であるが、経済主体と循環の中身の両方が問われたため、解答するのに手間どったであろう。 | |
問3は、2005年に制定された会社法の内容についての時事的な出題。合名会社や合資会社の説明は迷うところであるが、有限会社を新たに設立できないことは会社法では基本な内容であるため、そこで判断できた。 | |
問6 は、消費者に関連する日本の法律についての時事的な出題。法律の成立過程や中身について正確に理解していれば、正答を導くことができた。 | |
問7は、男女共同参画の推進に関連する内容について問われた。男女共同参画社会基本法は女性差別撤廃条約や男女雇用機会均等法より後に制定されたので誤り。また、男女雇用機会均等法ではなく育児・介護休業法であるため、消去法で正答を導くことができた。 |
第5問「環境問題への取り組み」
国際経済分野を1問含んだ経済分野からの出題。環境問題と南北問題を切り口に、市場原理や公害対策など、幅広く出題された。 | |
問1は、外部不経済の例について問われた。下線部の後に「公害・環境問題」と説明されていることを手がかりにすれば、容易に正答できた。 | |
問3は、日本で行われている公害や環境対策について誤りを選ぶ問題。第3問問1の出題形式と同じく、選択肢それぞれに用語は登場しないが、その内容を理解していなければ正答できない出題となっている。 | |
問4は、ガソリンに炭素税を課した場合の需要・供給曲線の動きについて問われた。ガソリンに課税をするとガソリンの供給価格が上がり、供給曲線は上にシフトすると判断する。設問文の内容とグラフを見比べながら落ち着いて解けば正答できた。 | |
問5は、京都議定書について誤りを選ぶ問題。京都議定書は、ロシアが批准し2005年に発効したことをおさえておく必要があった。時事的な内容ではあるが、基本事項である。 | |
問6は、1980年から2005年までの日本、アメリカ、中国、ドイツの二酸化炭素排出量の推移のグラフから、アメリカ以外の国を組合せる問題。アメリカに次いで多いのが中国、京都議定書におけるEUの削減目標は日本よりも多いことなどから、日本、ドイツを判断できる。 |
年度 | 2009 | 2008 | 2007 | 2006 | 2005 |
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問われている内容は、各分野の基本的な用語の理解と、原理・原則が中心である。まずは、基本的な知識を確実におさえた上で、論理的に考察する応用力を身につけておきたい。 | |
近年、資料問題は4〜6問出題されている。単純な読み取り問題だけではなく、その背景にある知識を必要とする問題も出題されている。日頃から、多くの資料にあたり、数値変化の原因などを教科書などで調べ、理解を深めておきたい。 | |
教科書だけではなく、資料集レベルの知識や、時事的な事項についての知識も求められるので、新聞・TVの特集記事・報道には十分な関心をもっておく必要がある。学習して得た知識を具体的な事例に当てはめて理解しておきたい。 |