・分野融合的な大問が増加(3→5)した。
・統計資料の読み取り問題、趣旨を問う問題などで、新しい形式の問題が散見された。
・国際分野の出題が昨年より増加。政治・経済分野では細かい知識まで問われた。
大問数6、解答数36個は昨年から変更なし。第6問以外はすべて分野が融合して出題された。時事的な話題も多く、現代社会の課題意識を受験生に問う、強いメッセージが表れていた。分野はほぼまんべんなく出題されたが、ここ数年出題されていた課題追究については、誤答選択肢で1つ触れられたのみにとどまった。政治・経済分野では細かい知識まで要求する出題もあり、受験生の間で差がつくポイントになったのではないか。統計資料の読み取り問題では、論理的思考力が求められた。新しい形式としては、リード文と設問の関連を強く意識した設問が出題された。また、受験生の苦手とする国際分野からの出題が増加したこともあり、難易は昨年並であった。 |
【大問数・解答数】 | 大問数6、解答数36個は昨年から変更なし。 |
【出題形式】 | 昨年に比べ、8択の問題が増加(2→4)し、組合せ問題は減少(7→4)した。 |
【出題分野】 | 第1問から第5問までは各分野が融合して出題された。国際分野の出題は昨年に比べて大幅に増加。地球環境、青年期、思想・宗教などからも出題された。ここ数年出題されていた課題追究(調べ学習)はほとんど出題されなかった。 |
【問題量】 | 昨年並。 |
【難易】 | 昨年並。 |
大問 | 出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考(使用素材・テーマなど) |
第1問 |
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第2問 |
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第3問 |
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第4問 |
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第5問 |
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第6問 |
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第1問「日本の諸課題」
住民投票、家族、参政権、財政、環境など、日本の諸課題について幅広く出題された。細かい知識が求められた。 | |
問1は、住民投票に関する出題。直接請求制度についての全体像を理解しておかなければ判断は難しい。 | |
問2は、日本の家族構成に関する出題。選択肢4は高度経済成長期の核家族化の進行のことであり、80年代以降の日本の家族構成としてはふさわしくない。時代ごとの特徴までおさえる必要があり、判断に迷ったであろう。 | |
問3は、日本における参政権に関する出題。選択肢1では、国民投票法の投票資格について問われた。 | |
問5は、日本の環境政策に関する出題。環境アセスメント法や、公害対策基本法・グリーン購入法などが問われた。環境に関する法律について、制定の目的や時代背景などについての正確な理解が求められた。 |
第2問「国際社会と日本」
国際分野を中心に、宗教・経済などが融合的に出題された。時事的なことを問う出題も見られた。 | |
問1は、国家の領域や主権に関する出題。領空の範囲は基本的知識であるが、宇宙条約まではあまり学習しないため、判断に迷ったであろう。 | |
問2は、民族の対立・共存に関する出題。世界各地で民族紛争が続いている現状を思い起こすことができれば判断できたであろう。ただ、誤答の選択肢にあるアハティサーリなどは、判断が難しかったであろう。 | |
問3は、三大宗教に関して、それぞれの宗教の特徴と国名を結びつける問題で、東南アジア諸国の宗教分布についての知識が求められた。「現代社会」としては、これまでにあまり見られない斬新な問題であった。 | |
問4は、難民条約に関する出題。難民条約における「難民」の定義などの知識が求められており、やや難しい。 | |
問8は、日本における外国人の現状に関する出題。「外国人」をキーワードとして、異なる分野の選択肢が並び、多面的な理解が求められた。2008年に出された最高裁の国籍法違憲判決についておさえられていたかがポイントであった。 |
第3問「青年期と社会参加」
青年期を中心として、政治、経済など幅広く出題された。 | |
問1は、教育基本法の規定に対して、「国及び地方公共団体の責務」という切り口で出題された目新しい問題。「幼児期の教育を無償で実施する」という誤りは、時事的な話題である「義務教育の無償化」などをイメージしてしまい、判断に迷った受験生もいたであろう。 | |
問2では、2つの統計資料から読み取れるものを、3文の中からすべて選ばせる問題であった。それぞれのポイントは単純なものであった。 | |
問5は、キャリアに関しての出題。キャリアの意義について、受験生に向けられたメッセージ性の強い問題であった。8択の組合せ問題であったが、インターンシップやワークシェアリングなどの意味がおさえられていれば解答できた。題材としては、新学習指導要領でうたわれているキャリア教育を先取りしたような形となっている。 |
第4問「環境問題」
環境問題について、日本や世界の事例を中心に出題された。基本的な知識を問うものが多かった。 | |
問1は、地球環境に関しての出題。誤答はいずれも判断しやすく、正答を得やすい問題であった。 | |
問3では、「食糧」をキーワードに多面的に出題された。鳥インフルエンザ・遺伝子組み換え農作物・ハンガーマップなどについて問われたが、いずれも判断してもらいたいものであった。正答の国連食糧農業機関(FAO)を積極的に選択できなかったとしても、消去法で確実に解答したい。 | |
問5は、地球環境に関する国際的な取り組みについての出題。国連人間環境会議やアジェンダ21など、受験生にとってなじみ深い語句が並んでいるが、いずれの選択肢とも判断するポイントが多く、基本的な知識を総合的におさえられているかがポイントであった。 |
第5問「消費者の立場から見た現代社会」
経済分野を中心に、企業と消費者との様々な問題が取り上げられて出題された。 | |
問1は、消費者問題に関する出題。キノホルムや食品偽装事件の事例などは判断に迷ったかもしれないが、正答のキャッチセールスは平易であるため、積極的に選べたのではないか。 | |
問2は、企業に関する出題。リストラ、フィランソロピー、ニッチ産業などの意味が問われた。また、株式会社の最低資本金制度について問われ、会社法に関しての初めての出題となった。 | |
問3では、「現代社会」として初めて需要・供給曲線について出題された。オーソドックスな問題で、市場価格について理解する上で、是非ともおさえておきたい内容である。しっかり対策していれば難しくない。 | |
問4は、社会的に弱い立場の人を支援するための法律などについての出題。犯罪被害者等基本法や高齢者虐待防止法といった新しい法律について、正確な知識が求められたため、判断が難しかったであろう。 | |
問5では、労働関係調整法について出題された。「政治・経済」で扱う内容まで踏み込んで対策しておくことが求められた。 | |
問6は、日本の裁判制度についての出題で、昨年に引き続き裁判員制度が問われた。ただし、公判前整理手続きについては判断しにくかったであろう。また、誤答の選択肢についても弾劾裁判所以外は判断が難しかった。 | |
問7では、ここ数年、設問として出題されていた課題追究(調べ学習)に関しての記述が一部で見られた。 | |
問8は、リード文の趣旨を読み取った上で、それが設問の具体例と合致するかを判断させる、「現代社会」としては目新しい問題であった。丁寧な読解力と思考力が求められた。 |
第6問「経済のグローバル化」
国際経済についての出題。経済のグローバル化の状況などについて正確な知識が求められており、やや難しかった。 | |
問1は、80年代以降の日本及びアジア諸国のグローバル化に関する出題。 | |
問2では、昨年に続き、アジア通貨危機に関して出題された。為替の変動が与える影響について、本質的に理解していたかどうかがポイントであった。 | |
問3は、国際機関に関する出題。UNDP・UNCTAD・IBRD・IMFについて、それぞれ正確な知識が求められたが、いずれも内容が難しく、判断に迷ったであろう。 | |
問4では、図をもとに、与えられた4つの条件から組合せを判断させる出題。図の意味を理解した上で、丁寧に条件文を読み解き、論理的に判断することが求められた。 |
年度 | 2009 | 2008 | 2007 | 2006 | 2005 |
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社会に生きる一員としての自覚を強く持って、日頃から新聞記事などを確認しておくこと。特に、政治・経済分野については時事的な出題が多かった。積極的に学習しなければ対応は難しい。 | |
用語は正確に、深く理解しておくこと。今年は単純にキーワードだけで判断できる問題や、常識レベルで判断できる問題は少なかった。特に法律に関しては、内容や背景知識まで問われた。「どのような状況で、何を目的に、何がなされたのか」という観点での理解が必要である。 | |
統計資料の問題に慣れておくこと。出題数は少ないものの、今年の問題は論理的に考えることが求められた。高度な知識が求められているわけではないため、丁寧に読み解けば解答できるが、落ち着いて解答するためには同様の問題を解き、慣れておく必要がある。 |