問題講評
データネット2010
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英語リスニング

1.総評

【2010年度センター試験の特徴】 

・ICプレーヤーが2010年度から新機種となった。
・大問数・解答数・配点とも、2009年度と全く同じであった。
・読まれる英文の総語数は1078語で、昨年よりわずかに減少し(昨年は1110語)、2008年度とほぼ同じ分量であった。読み上げられる速さは、第3問Aで昨年よりかなり速くなったが、その他は昨年並か、ややゆっくりとなり、全体としては昨年よりやや遅くなった。
・難易は、第3問・第4問で、表現の聴き取りに注意を要する設問が散見されたものの、全体的には取り組みやすい出題となり、昨年よりやや易化した。


 2010年度は、形式・設問数・配点は全く変化がなかった。ただし、読み上げられる速さは全体平均では昨年よりやや遅い約155語/分(約155wpm)程度となり、ナチュラルスピードだが、多少聴き取りやすい速さであった。また、音声自体には語と語の音の連結や脱落などがあり、聴き取りに注意を要する部分も多かった。
 読み上げられる英文の内容は昨年と同様に情報量が多く、選択肢を含め、日常的な口語表現が含まれていた。また、本文全体の内容を総合して判断したり、本文全体を通して述べられている場面や状況を把握したりする必要があるような、英文を最後まで聴いたうえで正答を選ぶことが求められる設問も散見された。ただし、複雑な計算問題や、いくつもの情報を整理したうえで正答を判断するような設問は減ったため、結果として、昨年よりやや易しくなったと言えよう。
2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数4、解答数は25で、昨年から変更なし。
【出題形式】 出題形式は昨年通りで、出題傾向に大きな変化は見られなかった。
【出題分野】 日常的な会話の理解から説明文の内容把握まで幅広く問うている点で、変化はなかった。
【問題量】 昨年並。ただし、読み上げられる英文の語数は微減(昨年1110語→今年1078語)し、読み上げられる速さもやや遅くなった(昨年約160wpm→今年約155wpm)。
【難易】 昨年よりやや易化。
3.大問構成

大問 出題分野・大問名 配点 難易 備考(使用素材・テーマなど)
第1問
短会話・Q&A選択
12点
やや易
第2問
短会話・応答文選択
14点
標準
第3問
会話文・Q&A選択/表完成
12点
標準
A「病気による欠席の連絡」、「コートの試着」、「新製品の電球について」
B「図書館での文学作品の読者数調査」
第4問
モノローグ・Q&A選択
12点
やや難
A「航空会社の案内」、「船に紛れ込んで生き延びたネコ」、「プロの写真家のアドバイス」
B「ハイドンの『告別交響曲』に込められたメッセージ」
4.大問別分析

第1問「短会話・Q&A選択」(短い会話を聴いて質問に答える形式)

  • 読み上げられる会話の発話数は、昨年と同様、すべての設問で4であった。また、読み上げられる語数は24語〜34語(問1: 28語、問2: 24語、問3: 34語、問4: 30語、問5: 28語、問6: 32語)、読み上げられる速さは平均で約160語/分(約160wpm)となり、昨年より遅くなった(昨年は約175語/分(約175wpm))。
  • イラスト選択問題は、「今の男性の見た目」(問2)、「新しくできた公園」(問4)、「道に迷った男女がいる場所」(問6)の3問が出題された。問6は、地図の中に存在する話者の男女を、自分に置きかえて位置関係を把握する必要があり、男性の2番目の発話にあるI see a school and a hospitalと、女性の最後の発話のand a post office, but no bankを総合して判断する必要があった。
  • 数値を聴き取っての計算問題は昨年の2問から問5の1問のみとなった。乗車する人数が18名に対し、レンタルするバン1台の定員が12名であることを把握し、何台レンタルする必要があるかを答える問題で、計算も比較的単純で、易しかった。
  • 問1や問3は、正答選択肢のvoice、moneyが読み上げられた英文には出てこないため、本文の内容を総合して判断する必要があった。聴き取った語句から判断することに慣れていた受験生は、読み上げられた語句(問1であればthe drama festivalやgo to bed、問3であればcredit cardやpay phones)に引きずられて誤答選択肢を選んでしまったかもしれない。

    第2問「短会話・応答文選択」 (会話のあとに続く応答を選ぶ形式)

  • 読み上げられる会話の発話数は、昨年と同様、すべての設問で3であった。また、読み上げられる会話の語数は16語〜23語(問7: 16語、問8: 18語、問9: 20語、問10: 23語、問11: 23語、問12: 23語、問13: 20語)で昨年より短い会話が多くなった。読み上げられる速さは昨年と比べてやや遅くなり、平均は約165語/分(165wpm)と、一昨年並に戻った(昨年は約175語/分(約175wpm))。
  • 会話の場面や話題としては、「クモの発見」(問7)、「コーヒーメーカーの買い替え」(問8)、「夕食時間にTV番組を見る提案」(問9)、「昨夏のメキシコ旅行」(問10)、「長距離ドライブ中の休息時間の使い方」(問11)、「機械の操作方法」(問12)、「知人の娘の新しい大学生活」(問13)が出題された。昨年と同様、日常的な場面や話題が出題された。
  • 読み上げられる速さは昨年より遅くなり、聴き取りやすくなったものの、聴き取った内容から会話の場面や状況を想像して、あとに続く応答を推測しなければならないような取り組みにくい設問が散見された。問8では男性のThat would cost more than getting a new one.という発話から、新しいコーヒーメーカーを買いたいと思っていることを、問10では男性がメキシコ旅行をした理由のand I love sunshineから、男性が暑いところを好んでいることをそれぞれ類推したうえで、正答を選ぶ必要があったが、正答選択肢にもやや「ひねり」があったため、やや難しかったであろう。
  • 問12ではPress down the button and hold it for five secondsなどの機械の操作に関する表現がポイントであった。また、問13はshe has good days and bad daysと、正答選択肢3のshe’ll adjust ...の対応関係がややわかりにくかった。

    第3問「会話文・Q&A選択/表完成」 (会話を聴いて質問に答える形式/表を完成させる形式)

  • 読み上げられる会話の話数は、Aが4〜7(昨年は4〜6)、Bが11(昨年は13)であった。読み上げられる会話の語数は、Aが48〜52語(昨年は43〜54語)、Bが147語(昨年は149語)で、いずれもほぼ昨年並であった。読み上げられる速さは、Aが平均で約190語/分(約190wpm)と、昨年よりかなり速くなったが、Bは約130語/分(約130wpm)と昨年よりやや遅くなった(昨年はAが約160語/分(約160wpm)、Bが約150語/分(約150wpm))。
  • Aの会話の場面や話題としては、「病気による欠席の連絡」(問14)、「コートの試着」(問15)、「新製品の電球について」(問16)が出題された。
  • Aは英文の読み上げられる速さが昨年より速くなり、情報の追加や訂正がある設問もあった。ただ、聴き取った会話の状況はイメージしやすく、正答のカギとなるキーワードの言いかえも比較的素直であり、いずれの設問も標準的な難易の出題であった。問14は女性の最初の発話にあるstay in bedと正答選択肢4のStay at home.、問15は男性の最初の発話にあるa teddy bearと正答選択肢4のa stuffed animal、問16は男性の最後の発話にあるpoisonous materialと正答選択肢1のbe dangerousの対応関係をそれぞれ把握できたかがポイントであった。
  • Bは、「図書館での文学作品の読者数調査」についての会話を聴き、表を完成する問題が出題された。会話中に出てくる読者層の年代を表す数値表現には35 to 44のような単純なものや、in their late 50s to early 60sといった少し言いかえられたバリエーションがあり、読者数を表す表現も、単純な数ではなく何パーセント増減したのかを表すものが多用されていた。ただし、問17、問18はこれらの数値表現を正確に把握できれば比較的正答は選びやすかったであろう。問19は、Those aged 35 to 44 increased by 9%, as did ... の部分におけるas didが表す内容を踏まえて解答することが求められた。

    第4問「モノローグ・Q&A選択」(英文を聴いて質問に答える形式)

  • 読み上げられる英文の語数は、Aでは80〜106語(昨年は89〜98語)、Bでは192語(昨年は189語)で、ほぼ昨年並であった。読み上げられる速さは、第4問は全体的に他の大問より遅めであり、Aが平均で約140語/分(約140wpm)(昨年は約160語/分(約160wpm))、Bは、約140語/分(約140wpm)であった。
  • Aは、「航空会社の案内」(問20)、「船に紛れ込んで生き延びたネコ」(問21)、「プロの写真家のアドバイス」(問22)についての問題であった。読み上げられる速さはそれほど速かったわけではないが、いくつもの情報を一度に把握したうえで解答する必要があった。
  • 問20は、「子どもたちだけで旅行ができる年齢の組合せ」を問う設問であった。いくつも出てくる数値情報の中からChildren aged 5 and aboveという表現が正答に結びつくことを判断する必要があった。問21は「ネコがどのようにして生き延びたか」を問う設問で、正答選択肢2のcaught and ate rats on the shipという表現は読み上げられる英文中には出てこない。最終文のthe ship, which had previously had a rat problem, was now free of ratsから類推する必要があった。また、問22は、写真家のアドバイスとして正しいものを選ぶ設問だが、You can get familiar with the area ... to visit by reading guidebooks and studying maps ...などの具体的な内容が、正答選択肢1ではDoing background research about the areaと言いかえられており、やや難しかった。
  • Bは、「ハイドンの『告別交響曲』に込められたメッセージ」についての長めの英文が出題された。設問は「『告別交響曲』の結びでは誰が舞台に残っているか」(問23)、「なぜその田舎の宮殿では音楽家たちは不幸せだったのか」(問24)、「ハイドンのこの交響曲に込められたメッセージは何だったか」(問25)といったものであった。読み上げられる速さは昨年並であり、一昨年までのような2行にわたる選択肢はなく、受験生にとっては質問や選択肢に目を通す時間がそれほどかからなかったであろう。しかし、いずれの設問も、設問文に対応する箇所を正確に聴き取ることと、本文を巧みに言いかえている選択肢を見抜いて正答を選ぶことができるかがポイントとなっていた。問23は、Eventually, the two violinists who are left put down…and walk away from the stage …. This ends the performance. の部分より正答選択肢1のNo one.を選べたかどうかがポイントとなっていた。また、問24では、読み上げられた英文のvery unpleasantが正答選択肢4ではuncomfortableに、同じく問25では、missed their familiesが正答選択肢4ではhomesickに言いかえられており、2010年度の出題の中では第4問Bが全体的にやや難しかったと思われる。
    5.過去4ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

    年度 2009 2008 2007 2006
    平均点
    24.03
    29.45
    32.47
    36.25
    6.2011年度センター試験攻略のポイント

  • 2010年度は、例年同様の形式・配点であり、大きな変化はなかったが、昨年に引き続き、部分的な聴き取りで正答を導くのではなく、すべての情報から総合的に判断するといった、いわば聴解力と同時に思考力を要する設問が含まれていた。これは単に聴き取る力を見るだけでなく、聴き取った内容から総合的に判断するという、より実践的なリスニング力がついているかどうかを試そうとする出題意図によるものだと推測される。したがって今後の対策としては、これまでに出題された過去問や模擬試験の問題を利用して類題演習を行うことはもちろん、常に「実践的な場でのリスニング」を想定し、英語で聴いて英語の質問に答える練習や、英文の書き取り(ディクテーション)・音読などを、日々の学習の中にできるだけ多く取り込んでおくことが必要であろう。
  • 2010年度は読み上げられる速さが全体としては遅くなった。ただし、全体を通じて語と語の音の連結や脱落などがあって聴き取りづらく、状況・場面が把握しにくかったり、重要な部分の聴き取りが難しかったりするものもあるため、日々の学習の中で、ナチュラルスピードで話される英文を聴く練習も今後は必要だと思われる。
  • 2010年度はICプレーヤーが新機種となったこともあり、大きな変更はなかったが、今後は第1問などで、2回読みだけでなく1回読みの導入が行われるなど、より実践的な出題形式・内容の検討がなされる可能性がある。2010年度の出題が読み上げられる速さをやや遅くし、複雑な計算を要する設問をなくしたことも、今後の1回読みの導入などを考慮してのことと推測する。形式が急に変わっても対応できるよう、類題対策のみならず、基本表現の聴き分けから状況判断や要点理解に至るまで、本質的なリスニング力養成を行って、準備を万全にしておくとよいだろう。
  • 実戦的なセンター試験対策を行う時期には、解答に必要な語句を正確に聴き取るだけでなく、印刷されている質問文や選択肢にも事前に目を通し、素早くそれらの意味を把握したうえで、どんな状況や場面の英文かを予測しながら聴き取る練習もしておきたい。正答に関わる箇所の英文が選択肢では言いかえられることが多いという傾向を熟知したうえで、解答の練習をする必要があるだろう。