問題講評
データネット2010
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英語筆記

1.総評

【2010年度センター試験の特徴】 

・第5問で新傾向の問題が出題され、第1問の強調の意図、一文中の音の強弱を問う問題が姿を消した。その他の大問では、2009年度の形式がほぼ踏襲された。
・難易は、ほぼ昨年並であった。


 2010年度は、第5問、第1問で形式変更があったが、大問構成に変更はなかった。第5問を中心に素材文の語数が減少し、配点も大きく変更された。
 ここ数年増加していた素材文の語数が大幅に減少したことから、すべての問題に目を通すことができた受験生が多かったであろう。ただし、第5問や第6問は素材がなじみにくく、取り組みにくい設問があり、難易はほぼ昨年並であったと言える。
2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数は変更がなかったものの、解答数が昨年より1個増え、一昨年の51に戻った。
【出題形式】 第5問は新しい形式となり、ある状況について、2人の人物による証言を読んで、イラストや文章の内容に関する問いに答える出題に変化した。また、第1問は、強調の意図や一文中の音の強弱を問う出題が消え、発音・アクセント問題のみになった。
【出題分野】 昨年同様、発音・アクセントから読解、視覚情報を含む英文理解までの幅広い領域が問われており、出題のジャンル・形式が多岐にわたっていた。
【問題量】 素材文の語数は第3問、第5問を中心に減少し、全体としても昨年よりやや減少した。
【難易】 ほぼ昨年並。
3.大問構成

大問 出題分野・大問名 配点 難易 備考(使用素材・テーマなど)
第1問
発音・アクセント
14点
やや易
第2問
文法・語彙語法・会話・語句整序
41点
標準
第3問
語句類推・発言要約・文補充
46点
やや易
B「地域の公開討論会で行われた高齢者問題についての議論」
C「酢の製法と用途」
第4問
ビジュアル読解(図表/フライト・スケジュール)
33点
標準
A「外国人が日本を訪れる理由の多様化」
B「フライト・スケジュール」
第5問
発言読解(目撃証言)
30点
やや難
「交差点での出来事の目撃証言」
第6問
長文読解
36点
やや難
「幼年期と青年期の概念の歴史的変化」
4.大問別分析

第1問「発音・アクセント」

  • 昨年はA〜Dの構成であったが、2010年度はA・Bの構成となった。昨年まで出題されていたC・Dの文強勢関連の問題がなくなったことで、解答時間は短縮できただろう。配点は2点減り、14点となった。
  • Aの発音問題は、昨年の3問から4問に増え、母音の発音が2問、子音の発音が2問の出題であった。いずれも基本的な出題であった。
  • Bのアクセント問題は、昨年同様、与えられた語と第一アクセントの位置が同じ語を選ぶ形式で出題された。設問数は昨年の2問から3問に増え、単語は2音節、3音節、4音節からの出題であった。

    第2問「文法・語彙語法・会話・語句整序」

  • 昨年の出題形式が踏襲されたが,Bの会話で各設問の配点が4点から3点に減った。
  • Aの空所補充問題では、問3のuntilの用法や、問5の仮定法過去完了といった基礎的な文法事項を問う出題もあったが、ほとんどが語彙・語法の知識を問う出題であった。問2のexpireは昨年も誤答選択肢で出題されていたが、定期乗車券(commuter pass)が「満期になる、期限が切れる」という日常生活の場面であることがとらえられなかった受験生にとっては難しかったと思われる。与えられた文には昨年同様、会話文も含まれており、英文の量が多く、空所の前後の文脈が詳しく示されていた。前後の文脈に合う語(句)を選ばせる出題をより意識したと考えられるが、解答に時間がかかった受験生もいたのではないか。
  • Bの会話問題では、会話の流れや前後関係から空所に入れるべき内容を把握することが求められた。問1では、「夫が誕生日に同じプレゼントをくれた」という発言に対し、「少なくとも誕生日を覚えていた」という選択肢を選ぶという、やや「ひねり」のあるやりとりであった。また、問2ではbetween you and me「ここだけの話」という口語表現が含まれていた。ただし、今年はいずれの設問も昨年に比べて比較的取り組みやすかった。
  • Cの語句整序問題では、昨年同様、並べかえる文についての状況を説明する英文が先に与えられた。問1ではwhatで始まる間接疑問とmake + O + C、問2ではI owe you(owe + O + O)と関係代名詞の省略が問われた。問3は会話形式の第1文の冒頭から並べかえさせる出題で、選択肢の数が7つに増え、whenで始まる疑問文にwhereで始まる間接疑問が組み込まれている文が出題された。あとの発言“I decided yesterday.”を手がかりに、文頭にWhenを置くことができたかどうかがポイント。全体的に標準的な問題であった。

    第3問「語句類推・発言要約・文補充」

  • 昨年の出題形式が踏襲されたが,Aの語句類推で各設問の配点が4点から5点に増えた。
  • Aの語句類推では、問1が単語(makeshift)、問2が熟語表現(have a penchant for)からの出題という組合せは昨年と同様であった。問2では与えられた英文の情報が少なく、選択肢の判別がやや難しかったと思われる。
  • Bの発言要約では、「地域の公開討論会で行われた高齢者問題についての議論」であり、一昨年から続いていた「賛成」と「反対」、「中立」の対比ではなく、純粋に三者の発言を要約させる問題となった。与えられた選択肢は本文が短く言いかえられていたが、発言の内容を正確に読み取れれば、正答を選びやすかったと思われる。
  • Cの文補充では、形式の変更はなく、補充する内容が、一文と語句の両方のパターンが出題された。解答番号32では、そのあとにつづく具体的な内容を手がかりにして段落のトピックセンテンスを選べばよかった。解答番号33でも、あとに続くThe formerとThe latterという対比表現が正答選択肢4のa slow or fast processに対応していることに気づければ、容易に正答を導くことができ、比較的取り組みやすかったと思われる。

    第4問「ビジュアル読解(図表/フライト・スケジュール)」

  • 昨年の出題形式が踏襲されたが,Bのフライト・スケジュールの問題で各設問の配点が6点から5点に減った。
  • Aの図表読取問題では、「外国人が日本を訪れる理由の多様化」に関する英文とグラフが出題された。問1は本文中のtheir reasons for coming to Japan seem to be diversifying … と、正答選択肢3のa wider selection of attractionsとの対応関係を見抜けたかどうかがポイントだった。問2では、グラフの要素を特定する問題が復活し、「外国からの観光客にとっての日本の魅力」の順位の中から“anime characters”に当たるものを選ばせる問題であった。人気上位から順番に情報が出てくるので、本文の流れに沿って読み進めば、比較的取り組みやすかったと思われる。問3は本文中のwebsitesと、正答選択肢4のonline resourcesとの対応関係を見抜けたかどうかがポイントだった。
  • Bでは、与えられた条件をもとに「フライト・スケジュール」を読み取る問題が出題された。問1、問2では乗客の詳しい条件が与えられ、それをもとにフライト・スケジュールの記入内容から乗客の便名を選ぶ問題であった。スケジュールの下の凡例(Explanation of symbols)を先に読み、スケジュールの見方を把握しておくと効率よく解答することができただろう。問3では、Policies regarding petsから必要な条件を読み取り、搭乗が許可されている動物を選ぶ問題であった。昨年見られた計算問題がなくなり、取り組みやすくなった。

    第5問「発言読解(目撃証言)」

  • 昨年の3種類の出題から、1種類のみの新傾向の出題となった。配点も18点から30点となり、12点増えた。
  • 「交差点内における出来事に関する2人の目撃証言」を読み、その状況を正確に表すイラストを選択する問題(問1)と、内容理解問題(問2〜問5)が出題された。問1はA、B二人の目撃者の発言から3つの車の位置や動きを読み取る必要があったが、情報が分散されているので、素早く必要な情報を探す必要があった。また、与えられた4つのイラストのほかに、記号の説明が7つあるので、そのつき合わせに時間がかかった受験生もいたかもしれない。問2は、目撃者Aの発言の“It was getting dark but the heavy rain had just stopped and there were no other cars around.”と、正答選択肢2の“evening and the road was wet”との対応関係を見抜けたかどうかがポイントであった。問3は、目撃者Aの “I’m not sure”という発言を素早く見つけ、 “the truck may have moved slightly to stay away from the car”が正答選択肢3で“tried to avoid”と言いかえられていることに気づけたかどうかがポイントであった。問4、問5はA、Bそれぞれの目撃者の「事故が起こりそうになったと考えた理由」を発言から読み取る問題であった。

    第6問「長文読解」

  • 昨年の出題形式が踏襲されたが,設問数が7問から6問に減り、全体として配点が6点減った。
  • 素材文は「幼年期と青年期の概念の歴史的変化」についての論説文が出題された。設問数は1問減り、6問になった。受験生にとって比較的なじみのない話題であり、読みにくかった受験生もいたのではないか。ただし、第5問までの総語数が減ったため、昨年に比べて第6問にかける時間は確保しやすかっただろう。
  • 問2〜問4では該当する段落が指定され、それぞれの段落の内容について、内容を把握する問題が出題された。問1、問5も段落の指定はないものの、それぞれ(2)、(7)の段落の内容把握問題であり、本文の該当箇所を的確にとらえられれば、正答を導けただろう。
  • 問6の段落構成を問う出題は、昨年同様、素材文すべての段落の構成を問う形式であった。第1段落と第6・第7段落の対応、中世から現在までの「時系列に沿った説明」、(3)One important factor、(4)another important change of attitude、(5)A final factorといった「分類」など、段落の展開がわかりやすい文章だったので、問6は解きやすかっただろう。第3段落の冒頭のHow did modern perceptions of childhood and youth develop?に対する答えとなっている(3)(4)(5)を、上記のone、another、finalのような「分類」を示す語に注意しながら、ひとまとまりととらえることができたかどうかがカギであった。
    5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

    年度 2009 2008 2007 2006 2005
    平均点
    115.02
    125.26
    131.08
    127.52
    116.18
    6.2011年度センター試験攻略のポイント

  • 2010年度は、第1問の文強勢関連の問題がなくなり、第5問に新傾向の問題が出題される形式変更があった。また、昨年までの素材文の語数の増加に歯止めがかかり、昨年より約450語減少した。ただし、第5問や第6問を中心にしっかりと読み進めなければならない題材もあったため、問題量が少ない割には取り組みにくく感じた受験生もいたであろう。センター試験では、今後もさまざまな出題形式の問題を通して英語コミュニケーション能力を測ることを目指していくことと思われるので、引き続き、どのように出題されても対応できるように、幅広い英語力を身につけさせておきたい。
  • 2008年度から出題されてきた強調の意図に加え、昨年新たに追加された文中の強弱についての問題が姿を消した。音声を伴わない筆記試験で音声技能を適切に測定することが難しいことからの判断とも考えられるが、反対に発音・アクセントに関する設問数が増えたことから、しばらくは引き続き発音・アクセント問題は出題されるだろうと予想される。日ごろから、新出単語の発音・アクセントの練習や、教科書の音読などを通して、正しい英語の発音を身につける音声学習を心がけたい。
  • 第2問Aではより日常な場面で使用する語彙・語法の問題が増えてきている。また、与えられる英文の分量も多く、文脈をしっかり把握したうえで語(句)を選ばせる出題を意図していると推測される。語彙学習の際には、英和辞書で複数の意味やそれぞれの例文を確認したり、英英辞書を使って、その語の持つイメージを思い浮かべたりしながら習得する習慣をつけさせたい。また、日常的な場面でよく使われるコロケーションや、フレーズについても、文法の基本事項とともに低学年からの定着を徹底させたい。
  • 出題形式が多様化するセンター試験の問題に対応するためには、逐語読みや精読的な読み方だけでなく、必要な情報をピックアップしながら読んだり、段落ごとに大意を把握しながら読んだりして、短時間で効率よく読むスキルも身につけることが一層求められている。日ごろから様々なジャンル・テーマ・形式の英文に触れ、必要に応じて時間を計って英文を読み、その内容をまとめる演習などを積んでおきたい。また、本文中の英文が設問の選択肢で言いかえられている問題が多く見られた。正確な読解に加えて、英文の言いかえに対応する力もつけておきたい。