問題講評
データネット2010
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数学I

1.総評

【2010年度センター試験の特徴】 

・大問数や配点、数学I・Aとの共通問題は昨年と変更はなかった。
・無理数を含む式の計算や、昨年は出題されなかった絶対値を含む不等式が出題された。
・第3問では、昨年挿入された参考図が今年は挿入されなかった。
・第1問と第4問では、整数に関する問題が出題された。
・昨年より難化。


  出題分野の大きな変更は見られなかったが、昨年より難化した。問題量や計算量は昨年から大きな変化はなかった。第1問では、昨年出題されなかった絶対値を含む不等式が出題された。第3問では、三角形の形状がつかみにくい問題や立体についての問題が出題されたため、正しく図形を把握することが解答をする上で重要であった。また、第1問と第4問では、整数や自然数について問う目新しい問題が出題された。
2.全体概況

【大問数・解答数】 昨年同様、大問数4ですべて必答。第1問〔1〕と第2問は数学I・Aとの共通問題。
【出題形式】 昨年、第3問で挿入された参考図が今年は挿入されなかった。
【出題分野】 数学Iの全分野から出題。第1問と第4問で整数についての問題が出題された。
【問題量】 昨年並。
【難易】 昨年より難化。
3.大問構成

大問 出題分野・大問名 配点 難易 備考(使用素材・テーマなど)
第1問
方程式と不等式、2次不等式
25点
標準
〔1〕無理数の有理化、数の大小比較
〔2〕整数nを係数に含む不等式
第2問
2次関数
25点
やや易
2次関数のグラフ
第3問
図形と計量
30点
やや難
三角形と外接円、立体図形
第4問
数と式
20点
やや難
式の計算と自然数
4.大問別分析

第1問〔1〕「方程式と不等式」

  • 〔1〕は無理数の分母の有理化と2次方程式の問題で、最後に数の大小比較を行う。
  • 最後の無理数と2次方程式の解の大小を比較する設問では、与えられた選択肢の中から、正答の候補を素早く絞りこまなければならない。そのためには、無理数の評価がポイントとなる。普段の学習から、無理数がどれくらいの値であるかの評価を行っておきたい。

    第1問〔2〕「2次不等式」

  • 〔2〕は整数nを係数に含む2次不等式と、絶対値を含む不等式の連立不等式の問題。
  • 不等式を4回解くため、やや計算量が多かった。
  • 途中、整数nの不等式を解くところで差がついたと思われる。
  • 昨年出題されなかった絶対値の問題が今年は出題された。絶対値を含む不等式を素早く処理できるよう、日ごろから十分対策をしておきたい。

    第2問「2次関数」

  • 放物線の頂点と軸、x軸との交点、平行移動と最小値に関する問題。
  • 最大・最小を問う設問は1つのみで場合分けもなかった。基本的事項が重視された問題であり、計算量も少なく取り組みやすかった。
  • x軸の交点を求める部分など多少計算が煩雑な部分はあるが、落ち着いて取り組めば難しくはなかったであろう。
  • 最後の平行移動を問う設問は誘導がなく問い方が見慣れないものであったため、解答の方針を立てられるかどうかがポイントであった。

    第3問「図形と計量」

  • (1)は三角形とその外接円を用いた問題。(2)は立体の辺の長さや高さを問う問題。
  • 昨年挿入された参考図が今年は挿入されなかったため、自分で図をかいて考える必要があった。
  • (1)では、△ABCが鈍角三角形になることに注意して図をかき、STが直径であることに気づいたかどうかで差がついたと思われる。
  • (2)の前半では、直角になる部分を意識して立体をかき、三平方の定理を利用することに気づくかどうかがポイント。後半は立方体の体積を用いることに気づけば、比較的簡単な計算で立体の高さを求めることができる。

    第4問「数と式」

  • 式の計算に関する問題。新課程で扱われる整数に関する内容も出題された。
  • (1)は分母の有理化による式の計算の問題。Sを積の形に変形することに気づいたかどうかで、計算量に差が出たと思われる。与えられた誘導をうまく使えるかどうかがポイント。
  • (2)では、(1)の積の形を利用することに気づけば、mnの値は求められる。m、nが自然数であることと、m、nの大小関係にも気をつけたい。素因数分解を利用してm、nの候補を絞り込むと、効率的に問題を解くことができる。
  • (3)では、(1)(2)の考え方を用いながらm、nの方程式を導き、自然数m、nを求める。この問題は誘導なしで方程式を導かなければならないので、やや解きづらい問題であった。
    5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

    年度 2009 2008 2007 2006 2005
    平均点
    49.34
    47.51
    44.10
    54.34
    48.03
    6.2011年度センター試験攻略のポイント

  • 例年、数学Tの各分野から幅広く問題が出題されている。まずは教科書を用いて各分野の基礎学力を定着させ、基本的な問題で確実に点数を取れるようにしたい。
  • 絶対値や無理数を含む式の計算を苦手とする受験生も多いが、センター試験では頻出項目なので、正しく計算できるよう、日ごろから十分練習を重ねておきたい。
  • 図形の問題では、日ごろから図を丁寧にかき、どの公式を用いればよいかを図を用いて考察する習慣をつけておきたい。辺の長さや角度などの情報も問題の後半になるにつれて増えてくるので、効率的に問題を解くために、しっかりと情報を整理しながら図をかくことも大切である。
  • 第4問では、目新しい問題が出題される傾向がある。限られた時間の中で、落ち着いて題意を正しく読み取り、与えられた誘導をうまく使いながら、立式や式計算ができるよう練習を積んでおきたい。