問題講評
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理科総合B

1.総評

【2009年度センター試験の特徴】 

・例年と同様に、実験・観察の結果や、与えられた資料を読み取って考察させる問題が多数出題されており、科学的思考力が必要とされた。
・科学的に探究する方法について、多面的に問われた。
・全大問において地学分野と生物分野が別々の中問として出題された2008年度に比べて、地学分野と生物分野が融合的に出題された。


 形式面においては、8択問題や9択問題が増加した。また、組合せ問題の出題割合が増加した。生物とそれを取り巻く環境、人間と自然のかかわりを題材として、自然に対する総合的な見方や考え方が問われた。全体の傾向としては、昨年と比べて大きな変化はみられず、特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。
2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数は昨年と同じ4大問。解答数は昨年より1個多い28個。
【出題形式】 昨年に比べて、組合せ問題の出題割合が増加した。
【出題分野】 例年通り、特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。
【問題量】 昨年に比べて、4択の問題が減少し、9択の問題が増加した。
【難易】 昨年並。
3.大問構成

大問 出題分野・大問名 配点 難易 備考(使用素材・テーマなど)
第1問
自然の探究
24点
やや難
太陽放射と地球の環境
第2問
生命と地球の移り変わり
26点
標準
地層や地質時代の生物の変遷
第3問
多様な生物と自然のつり合い
25点
標準
A 生物の多様性
B 地球の大地形、惑星としての地球
第4問
人間の活動と地球環境の変化
25点
標準
A 大気中の二酸化炭素濃度の変化
B 地層や化石による過去環境の考察
4.大問別分析

第1問「自然の探究」

  • 太陽放射に関する実験・調査方法や実験結果の考察について問われた。ほとんどの問いが知識だけで解答できず、正解するには、与えられた条件を深く読み取り、考察する必要があった。
  • 問1aは、銅板の受け取るエネルギーと失うエネルギーの大小関係と温度変化について問う設問であった。bは、水の蒸発による熱の出入りについて考察させるグラフ選択形式の問題で、問題文をよく読めば、実験終了時には、実線と破線が重なることがわかるように出題されていたが、やや難しかったのではないかと推測する。
  • 問2は、地球放射と温室効果についての基本的な知識に関する設問であった。
  • 問3は、物質の種類と光の波長による、透過率の違いに関する設問であった。2種類の資料を読み取って考察する必要があり、やや難しかったのではないかと推測する。
  • 問4は、太陽放射をバナナに当てる実験に関する問題であった。aは対照実験で確かめようとした事柄と実験結果からの考察について考えさせる設問、bは実験が成り立つための仮定を考察させる設問であり、いずれも目新しい出題であった。実験方法や実験結果をよく理解して考察する必要があり、難しい。

    第2問「生命と地球の移り変わり」

  • 地層や地質時代の生物の変遷に関する知識を問う基本的な問題であった。岩石や地質構造、植物や動物の進化に関しての基本知識が問われた。
  • 問1aは、岩石について基本的な知識を問う設問で、比較的正解が容易であったと推測する。bは、露頭の写真から推定できる地質構造について考察する設問で、地学分野の知識と思考力を要するが、問われている内容自体は基本的であった。
  • 問2は、大地の変動についての3つの文の正誤組合せ問題であった。それぞれの文の正誤の判断は、比較的容易である。
  • 問3は生物の陸上進出の条件について、問4は植物の進化について、問5は人類の進化について、いずれも生物分野の基本的な知識を問う設問であった。
  • 問6は、地質時代における生物の絶滅に関する設問で、グラフの詳細な読み取りを要する問題であった。5つの文の正誤の組合せを考えさせる形式で、見慣れない形の出題であった。

    第3問「多様な生物と自然のつり合い」

  • 多様な生物と自然のつり合いに関する問題であった。
  • Aは、生物の多様性に関する問題であった。フラスコ内の生物どうしの相互作用を題材にして、グラフを読み取る力やいろいろな生物に関する知識が問われた。
  • 問1aは、生物の食う食われるの関係に関する4つの文の正誤の組合せ問題であった。グラフから考察させる形式であるが、クロレラやラン藻が他の生物を食べないことを知っているかどうかがポイントであった。bは、フラスコ内の栄養分と生物の増加の仕方に関する設問で、6つの選択肢から順不同で2つを選ぶ問題であった。
  • 問2は、微生物の分類に関する基本的な知識を問う設問であった。
  • 問3は、真核生物の細胞小器官の特徴とはたらきについて問う設問であった。9択問題であったが、基本的な知識があれば比較的容易に正解できたと推測する。
  • Bは、地球の大地形、惑星としての地球に関する問題であった。グラフを読み取る力や、地球の大地形などに関する知識が問われた。
  • 問4は、海洋地形に関する基本的な知識を問う設問であった。
  • 問5は、地球表面の高度分布に関する設問で、グラフを詳細に読み取る力を必要とする問題であった。グラフを読み取れれば解答可能な問題であるが、各選択肢の文章が長く、理解力を要するため、解答には時間がかかる。
  • 問6は、太陽系の惑星の特徴に関する3つの文の正誤の組合せ問題であった。基本的な知識を問う設問で、それぞれの文の正誤の判断は難しくない。

    第4問「人間の活動と地球環境の変化」

  • 生物とそれを取り巻く環境の変化に関する問題であった。
  • Aは、大気中の二酸化炭素濃度の変化に関し、グラフから考察・計算させる問題であった。
  • 問1は、与えられたグラフの3つの線それぞれに関して、測定された地点を考察する設問であった。陸上植物の生産量の季節変化に関する知識を必要とする問題だった。
  • 問2は、北半球と南半球の二酸化炭素濃度の変化の違いについて、主要な原因を考察させる設問であった。
  • 問3は、グラフから二酸化炭素濃度の変化の割合を求め、将来の二酸化炭素濃度を計算させる問題であった。グラフからの読み取りの力と計算力を必要とするため、やや難しい。グラフから読み取る数値によって、計算結果には多少差が生じるが、選択肢の数値の間には十分な差がつけられており、正解を選択するのには支障はなかったと推測する。
  • Bは、地層や化石から過去の環境に関して、科学的に考察させる問題であった。
  • 問4は、気候と海面の変化について考察させる設問であった。与えられた資料の理解だけで解答できるが、それぞれの資料から得られる情報を組み合わせて考えなければならないため、解答に時間を要する。
  • 問5aは、地震に関する知識を問う設問であった。9択問題であったが、誤答であることが明らかなものが多いため、正解を選択することは比較的容易である。bは、地震による災害に関する設問であった。なお、地学Iでは、第1問問1で浅発地震の震源分布について問われていた。
  • 問6は、課題研究におけるレポートのまとめ方に関する設問であった。目新しい出題であったが、常識的な知識で正答を導くことは可能である。
    5.過去3ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

    年度 2008 2007 2006
    平均点
    61.31
    62.35
    66.71
    6.2010年度センター試験攻略のポイント

  • 知識を身につけるだけでなく、探究的なものの見方や考え方、科学的な思考力を普段の学習の場面で繰り返し体験し、慣れておくことが重要である。
  • 2009年度は、例年と同様に、学習指導要領で定められた項目ごと、(1)自然の探究、(2)生命と地球の移り変わり、(3)多様な生物と自然のつり合い、(4)人間の活動と地球環境の変化、の順で大問が構成されていた。2010年度も同じ構成になることが予想されるので、項目ごとに対策を立てることも有効である。
  • 全大問において地学分野と生物分野が別々の中問として出題された2008年度に比べて、2009年度は地学分野、生物分野が融合的に出題された。地球の形成過程と生物の進化のかかわり、生物の活動と環境の変化の関係など、地学分野、生物分野の融合的な出題について対策を講じておきたい。
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