・例年と同様に、5大問構成で各大問20点であり、解答数は昨年同様26個であった。
・昨年と同様に、基本的な知識問題と科学的思考力を必要とする問題がバランスよく出題された。
・受験生の日常生活において身近な題材を用いて、科学的思考力を問うという出題が目立った。
・理科総合Aにおける選択学習項目である「酸化・還元」が、昨年に引き続き出題された。
昨年に比べて、5択の問題が6問増加し、7択以上の問題は出題されなかった。ただし、ページ数は昨年の21ページから24ページに増加したため、全体の問題量はやや増加した。 一つの大問中で物理の問題と化学の問題が同時に扱われる傾向が高まった。また、探究・考察させる問題設定にも、受験生にとって身近な題材を用いる工夫がみられた。全体的には、知識問題と科学的思考力を必要とする問題とのバランスがとれた出題であった。 |
【大問数・解答数】 | 大問構成は昨年と同じ5大問。解答数も昨年と同じ26個。 |
【出題形式】 | 昨年に比べて、文章選択問題が3問増加して、図・グラフ選択問題が2問減少した。 |
【出題分野】 | 例年同様、特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。 |
【問題量】 | 昨年に比べて、5択の問題が6問増加し、昨年4問あった7択以上の問題は出題されなかった。ページ数は昨年の21ページから24ページに増加した。 |
【難易】 | 昨年より易化。 |
大問 | 出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考(使用素材・テーマなど) |
第1問 |
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第2問 |
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第3問 |
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第4問 |
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第5問 |
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第1問「電動アシスト自転車と消費エネルギー」
電動アシスト自転車を題材として、仕事と力学的エネルギーとの関係について考察させる出題であった。また、リチウムイオン電池についての基本的な知識問題もみられた。会話形式の問題文中に、解答に必要な情報と不要な情報が混在しており、読み取りにやや時間を要する。 | |
問1は、重力による位置エネルギーに関する基本的な問題であった。 | |
問2は、エネルギー変換について、基本的な理解を問う問題であった。 | |
問3は、走行する速さと電動アシスト機能との関連について考察させる問題であった。与えられた複数のグラフを読み取り、比較しながら考察させる点が目新しい。 | |
問4は、リチウム電池イオンの原理とアルカリ金属に関する、基本的な知識問題であった。 | |
問5は、エネルギー消費に関する計算問題であった。解答に必要な情報を読み取り、順序よく整理することが必要で、計算力および科学的思考力が求められた。 |
第2問「水道水の利用と二酸化炭素排出削減」
水道水の利用を題材として、精製・状態変化や、洗濯に用いられるセッケン・合成洗剤の性質を問う出題であった。さらに、節水による二酸化炭素排出量の削減効果まで考察を深めさせる点に、受験生の日常生活にかかわる範囲で、科学的思考力や判断力を測る出題意図が伺える。 | |
問1は、物質の状態変化と蒸留に関する、基本的な知識を問う問題であった。 | |
問2は、加熱時間と水の温度変化との関係について、グラフを選択させる問題であった。沸騰してからは温度変化がなくなることを理解できていれば易しい。 | |
問3aは、セッケンの性質について、基本的な理解を問う問題であった。セッケンが塩基性であることが、問題文中で示されているため易しい。 | |
問3bは、酵素のはたらきに関する基本的な知識問題で、生物Iを履修した受験生にとっては比較的取り組みやすかった。 | |
問4は、節水による二酸化炭素排出量の削減効果について考察させる、総合的な問題であった。問題文とグラフから、水が10パーセント減らせることを読み取った後に計算しなければならず、科学的思考力が要求された。 |
第3問「比熱測定、金属の反応」
断熱容器と電熱線を用いた比熱測定の実験、金属と酸とを反応させる実験、および空気中で金属を加熱する実験と、1大問中で三つの異なる実験を題材とした、幅広い出題であった。 | |
問1は、比熱測定の実験企画・条件制御に関する基本問題であった。観察・実験の方法が身についているかどうかが問われた。 | |
問2は、電熱線を発熱させて温度上昇と熱量との関係を問う、典型的な問題であった。 | |
問3は、異なる2種類の金属を用いて、比熱の比を算出させる問題であった。正確な値を計算しようとすると時間を要するため、実験条件が部分的に異なる二つのグラフをそれぞれ読み取り、比較・考察することがポイントである。 | |
問4は、水素の性質に関する基本的な知識問題で、金属と希塩酸との反応によって生じた気体が水素であることを理解する必要があった。 | |
問5は、金属表面の色の変化から、酸化・還元反応を問う問題であった。 |
第4問「金属の性質とその利用」
金属の製造や性質、およびその利用と文明の発達を題材としてリサイクルについて考察させる、興味深い出題であった。イオン化傾向が小さい金属ほど管理が容易であることから、石器時代、青銅器時代、鉄器時代の順に文明が発達したというストーリーが、最終的には環境問題とリサイクルに関する考察問題に帰結する。 | |
問1は、酸化・還元に関する知識問題であった。ただし、問題文中で金属の酸化・還元について説明されており、知識が不十分であっても、問題文をよく読めば解答することができる。 | |
問2aは、鉄の酸化について、複数の実験結果を比較・考察させる問題であった。 | |
問2bは、アルミニウムの酸化と被膜生成に関する、基本的な知識問題であった。 | |
問3は、与えられたグラフに直線を書き込み、もとのグラフとの交点について考察させる総合的な問題で、作図する力と科学的思考力が要求された。グラフを書いただけでは解答を特定できず、その後に計算が必要となる点が特徴的である。 | |
問4は、日常生活で使用されている合金に関する、基本的な知識問題であった。正答を絞り込みやすく、易しい。 |
第5問「飛び板飛び込みにおける水泳選手の運動」
飛び板飛び込みを題材として、水泳選手がもつ力学的エネルギーの視点から、運動の様子を考察させる出題であった。大問全体を通して、力学的エネルギーの変化と運動の様子を関連付けて考察することがポイントである。 | |
問1は、鉛直投げ上げ運動の初速度を、力学的エネルギー保存の法則から求める、基本的な計算問題であった。 | |
問2は、弾性力による位置エネルギーを、力学的エネルギー保存の法則から求める、計算問題であった。重力による位置エネルギーの減少量を出せばよいことに気がつけばよいが、「板バネ」という見慣れない素材に戸惑った受験生もいたと推測する。 | |
問3は、位置ごとの運動エネルギー変化について、グラフを選択させる問題であった。計算によって解答を導くのではなく、運動エネルギーがゼロになる箇所、すなわちグラフの両端に着目することがポイントであり、高度な判断力が求められた。 | |
問4は、選手の脚力を使わずに、板の反動だけで鉛直方向に運動するときの最高点を問う問題であった。力学的エネルギー保存に関する基本的な内容が扱われており、物理Iを履修した受験生にとっては取り組みやすい問題であった。 | |
問5は、自由落下運動が質量に依存しないことを問う問題であった。 |
年度 | 2008 | 2007 | 2006 |
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受験生にとって身近な題材を用いて、環境問題について実験形式で考察させる出題が多い。これに対する対策として、たとえば身の回りの電化製品の待機電力の節約について考えてみるなど、日常生活でみられる事象も教材として意識するようにつとめたい。 | |
グラフ・表など読み取るべき情報の量が増加傾向にある。特にグラフを扱った問題については、与えられたグラフに補助線などを書き込むことが、解答に必要な情報を読み取るために効果的である。 | |
問題に関する知識がなくとも、設問文をよく読んで問われていることが理解できれば、解ける問題が多い。こういった思考力を問う問題については、参考書や模擬試験の問題でしっかりと演習をしておくことが有効である。 | |
エネルギー・資源に関する問題と環境問題については、教科書によってその内容に差がないので、しっかりと教科書を読むことが有効である。教科書のなかの重要語句については、覚えるだけではなく、その内容や社会とのかかわりを説明できるようにしておきたい。 | |
基本的な知識問題、および公式を当てはめて計算するだけで解ける問題は、確実に得点する必要がある。物理と化学の基礎については、しっかりと学習して身につけておきたい。 |