問題講評
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地学I

1.総評

【2009年度センター試験の特徴】

・例年通り、地学Iの全範囲からの幅広く、正確な知識が要求された。
・6択以上の問題がやや増加し、組合せ問題も増加した。
・図・グラフを正確に読み取る力が必要とされた。


 大問数、解答数とも昨年と同じであった。例年通り、地学Iの全範囲からの幅広く、正確な知識が必要とされた。昨年に比べて、6択以上の問題が3問増加し、組合せ問題も増加した。一方、昨年に比べて、図・グラフ選択問題は減少したが、図・グラフを正確に読み取る力が必要となる問題は例年通り出題された。難易は昨年より難化した。
2.全体概況

【大問数・解答数】 大問構成は昨年と同じ5大問。解答数も昨年と同じ30個。
【出題形式】 昨年に比べて、図・グラフ選択問題が減少した。一方、組合せ問題は増加した。
【出題分野】 例年同様、特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。
【問題量】 昨年に比べて、6択の問題が増加し、新たに8択の問題が1問出題された。
【難易】 昨年より難化。
3.大問構成

大問 出題分野・大問名 配点 難易 備考(使用素材・テーマなど)
第1問
固体地球
20点
標準
A 地球の活動
B アイソスタシー
C 大地の変形
第2問
岩石・鉱物
20点
標準
A 変成作用と変成岩
B 深成岩とその構成鉱物
C 火成岩
第3問
地質・地史
20点
やや難
A 河岸段丘を含む地質図
B 地質断面図
第4問
大気・海洋
20点
やや難
A 海面付近の水温の年変化
B ジェット気流
C 大気の安定性
第5問
天文
20点
やや難
A ケプラーの法則
B 食連星
C 銀河系の構造
4.大問別分析

第1問「固体地球」

  • Aは地球の活動に関する問題、Bはアイソスタシーに関する問題、Cは大地の変形に関する問題であった。知識問題と計算問題を含む考察問題がバランスよく出題されていた。
  • 問1は、震源の浅い地震の分布に関する問題であった。基本的な知識問題だが、火山分布と混同しやすく戸惑った受験生もいたと推測する。なお、理科総合B第4問の問5aでは、日本列島における内陸型の震源が浅い地震について問われていた。
  • 問2は、造山帯に関する基本的な知識問題であった。
  • 問3は、モホロビチッチ不連続面(モホ不連続面)とアイソスタシーに関する典型的な問題であった。選択肢中のモホロビチッチ不連続面と和達−ベニオフ帯は、2008年度地学I本試験第1問でも取り扱われていた。
  • 問4は、アイソスタシーに関する計算問題であった。圧力が等しい面を考える典型的な計算問題であるが、このような計算問題を苦手とする受験生は少なからずいたと推測する。
  • 問5は、力の向きと大地の変形に関する基本的な知識問題であった。
  • 問6は、力の向きと断層のずれの向きに関する問題であった。断層面にはたらく力を図から正確に読み取る力が必要であった。

    第2問「岩石・鉱物」

  • Aは変成作用と変成岩に関する問題、Bは深成岩とその構成鉱物に関する問題、Cは火成岩に関する問題であった。基礎を重視した設問であったが、6択、8択の設問があわせて3問あった。
  • 問1は、接触変成岩と広域変成岩に関する基本的な知識問題であった。
  • 問2は、変成岩と多形に関する問題であった。接触変成岩と広域変成岩が形成される条件に関する知識と二つの図を見比べて読み取る力が必要であった。
  • 問3は、深成岩と色指数に関する問題で、2004年度地学IB本試験以来の8択の問題であった。無色鉱物と有色鉱物の分類、色指数の意味など複数の知識が必要であった。
  • 問4は、斜長石に関する問題であった。斜長石は、晶出する温度により、その中に含まれるNaとCaの割合が異なるという基本的な知識が問われた。
  • 問5は、火成岩に関する問題であった。底盤(バソリス)についての知識がなくても、消去法的に他の選択肢が正しいと判断できれば正答を得ることができる。
  • 問6は、中性岩に関する基本的な知識問題であった。

    第3問「地質・地史」

  • Aは、河岸段丘を含む地質図に関する問題、Bは地質断面図に関する問題であった。図を読み取る力を必要とする問題が、6問中4問と多かった。
  • 問1は、示準化石に関する問題であった。示準化石の知識に加え、地質図を読み取る力が必要であった。
  • 問2は、堆積構造に関する基本的な知識を問う出題であった。堆積構造とそれを示す図の関係が整理できていれば易しかったと推測する。なお、堆積構造については、2008年度地学I本試験第3問で、斜交層理(斜交葉理)が問われた。
  • 問3は、地質図から読み取れることに関する問題であった。化石に関する知識も必要であった。
  • 問4は、河岸段丘に関する問題であった。河岸段丘の形成に対する正確な理解が必要であった。
  • 問5は、地層や鉱物の形成順序を総合的に問う出題であった。
  • 問6は、地質時代に関する問題であった。地質図を読み取る力、地質時代と絶対年代に関する知識が必要であった。

    第4問「大気・海洋」

  • Aは海面付近の水温の年変化に関する問題、Bはジェット気流に関する問題、Cは大気の安定性に関する問題であった。6問中5問が組合せ問題であった。
  • 問1は、水温の年変化に関する問題であった。図を読み取る力、読み取った内容から結果を考察する力が必要であり、やや難しかったと推測する。
  • 問2は、海洋での熱エネルギーに関する問題であった。熱エネルギーに関する総合的な知識が問われた。なお、2008年度地学I本試験第4問では、地球の熱収支の緯度変化について問われた。
  • 問3は、気圧傾度力とコリオリの力(転向力)に関する問題であった。飛行機にはたらくコリオリの力を問うなど、目新しい出題であった。
  • 問4は、圏界面(対流圏界面)とジェット気流に関する問題であった。問われている知識は典型的だが、正しい文章の組合せ問題という出題形式は目新しかった。
  • 問5は、大気の安定性に関する基本的な知識問題であった。
  • 問6は、雲が生じる高度の範囲に関する問題であった。問題文や図を読み取る力が必要であった。

    第5問「天文」

  • Aはケプラーの法則に関する問題、Bは食連星に関する問題、Cは銀河系の構造に関する問題であった。各素材の基礎概念が丁寧に問われた。
  • 問1は、ケプラーの第2法則に関する基本的な知識問題であった。
  • 問2は、ケプラーの第3法則に関する問題であった。公式をおさえていれば解くことができるが、土星の半径を基準としていたため、立式に戸惑った受験生もいたと推測する。また、計算はやや複雑であった。なお、ケプラーの第3法則は、2008年度地学I本試験第5問でも取り扱われていた。
  • 問3は、食連星に関する問題であった。変光曲線の変化と主星・伴星の位置の変化の関係に関する標準的な問題であった。
  • 問4は、伴星のHR図上での位置に関する問題であった。図1から主星と伴星の明るさの比を読み取る力、明るさの比を絶対等級に換算する力が必要で、やや難しかったと推測する。
  • 問5は、遠くの恒星をみることができない理由に関する問題であった。固体微粒子という言葉に戸惑った受験生がいたと推測する。
  • 問6は、球状星団に関する基本的な知識問題であった。
    5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値) ※2005年以前は地学IBの平均点です。

    年度 2008 2007 2006 2005 2004
    平均点
    59.68
    62.42
    59.29
    64.05
    63.68
    6.2010年度センター試験攻略のポイント

  • 全範囲からの幅広い知識が必要となるので、基本事項は確実におさえておきたい。特に近年は、大問をさらにA、B、Cのように中問に分けて、全範囲からもれなく出題される傾向にあるので、苦手分野をつくらないようにしておきたい。
  • 2009年度では、2008年度に比べて図・グラフ選択問題は減少したが、図・グラフを正確に読み取る力を必要とする問題は例年通りに出題された。図を読み取る力を身につけるには、練習が必要となるので、模試を活用して図・グラフを用いた問題の演習を積んでおきたい。
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