問題講評
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化学I

1.総評

【2009年度センター試験の特徴】

・例年と同様に、全範囲から幅広く出題され、小問形式で問われた。
・グラフ選択問題が出題されなかった。
・8択の正誤組合せ問題は今年も出題されなかった。


 昨年同様、4大問構成であり、小問形式で問われた。昨年に比べて、文章選択問題が増加した一方で、例年出題されているグラフ選択問題、昨年出題された模式図やモデル図の出題はなかった。また、昨年に引き続き、正誤8択の組合せ問題はなかった。特定の分野に偏ることなく出題され、身近な素材や実験を扱った問題、高分子を扱った問題が出題された。全体的に、融合問題を減らし、内容を単純化して問う傾向があり、標準的な知識や思考力が問われた。
2.全体概況

【大問数・解答数】 大問構成は昨年と同じ4大問。解答数は第1問で昨年より1個減少し、全体として一昨年と同じ28個。
【出題形式】 昨年に比べて、文章選択問題が増加した。一方、例年出題されているグラフ選択問題、昨年出題された模式図やモデル図の出題はなかった。
【出題分野】 例年同様、特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。
【問題量】 昨年に比べて、計算問題の5択が減少し、6択が増加した。昨年に引き続き、正誤8択の組合せ問題はなかった。選択肢はすべて5択か6択であった。ページ数は、昨年に比べて2ページ増えた。
【難易】 昨年より易化。
3.大問構成

大問 出題分野・大問名 配点 難易 備考(使用素材・テーマなど)
第1問
物質の構成
25点
第2問
物質の変化
25点
標準
第3問
無機物質
25点
やや易
第4問
有機化合物
25点
やや易
4.大問別分析

第1問「物質の構成」

  • 問1aは、分子からなる物質に関する出題であった。塩化水素が分子であることがポイントであった。bは、二重結合をもたない分子に関する出題であった。基本的な問題であり、構造式がわかれば正答できる。
  • 問2は、同位体の定義を問う典型的な基本問題であった。
  • 問3は、イオンに関する文章選択問題であった。
  • 問4は、標準状態における気体の体積に関する計算問題であった。いずれの選択肢も、物質量に換算できれば正答できる。
  • 問5は、溶液中に溶けている溶質の物質量を求めさせる計算問題であった。水溶液の密度を考慮しなければならならず、密度の扱いが苦手な受験生は、解答に戸惑ったと推測する。
  • 問6は、身の回りの現象や物質・製品に関する文章選択問題であった。身の回りの化学についての知識量が少ない受験生はやや戸惑うか。硬水に関しては、2007年度の化学I本試験や1995年度の化学本試験で類題あり。

    第2問「物質の変化」

  • 問1は、中和熱測定の実験(水酸化ナトリウムと塩酸)についての出題であった。aは反応熱から温度の上昇を求める計算問題であり、2000年度の化学IB追試験でグラフ問題が出題された。kJではなくJで表示されているのは珍しい。bは、ヘスの法則についての計算問題であった。中和熱の値を覚えていた受験生もいたのではないだろうか。いずれも計算条件を正しく読みとれれば正答できる、基本的な問題であった。
  • 問2は、炭素の同素体間の燃焼熱に関する出題であった。黒鉛、ダイヤモンド、フラーレンを題材にして、物質のもつエネルギーの大小関係を同素体で問うところが目新しかった。教科書に記載されていない熱化学方程式を用いているため戸惑った受験生もいたと推測するが、エネルギー図に慣れていればできただろう。
  • 問3は、中和反応、中和滴定曲線に関する出題であった。aは、滴定曲線からの読み取り問題であったが、滴定曲線の意味を理解していれば、誤りを見つけやすい問題であった。bは、滴定曲線から塩基の強弱と、濃度を求めさせる単純な計算を含む問題であった。
  • 問4は、硫酸銅(II)水溶液の電気分解についての出題であった。bは、文字式の計算問題で、銅の質量から銅の物質量、さらに電子の物質量を求め、流れた電気量との関係をファラデー定数を用いずに問うており難しい。

    第3問「無機物質」

  • 問1は、地殻中に含まれる金属元素6種類(Al、Fe、Ca、Mg、Na、K)に関する問題であった。aで3価の陽イオン、bで炎色反応について問われた。
  • 問2は、酸化剤の反応に関する出題であった。無機物質の反応に関する知識が定着していないと判断に迷う内容であったと推測する。
  • 問3は、ケイ素、リン、硫黄に関する基本問題であった。知識がないと間違えやすい問題ではあるが、易しい。
  • 問4は、オキソ酸に関する出題であった。酸化数から推定されるオキソ酸の性質を問うており目新しい。オキソ酸を取り扱っていない教科書もあるので、知識のなかった受験生は、問題文からオキソ酸を具体的にイメージしなければならなかった。
  • 問5は、しょうゆ中の塩化ナトリウムの濃度計算に関する出題であった。しょうゆという身近な素材で、無機物質の知識と計算を融合させるという工夫された問題であった。
  • 問6は、硫化水素の発生、捕集法、性質を問う実験操作に関する出題であった。典型的な問題であり、上方置換でないことがわかれば、正答できる。

    第4問「有機化合物」

  • 問1は、アルカンの性質に関する正誤問題であり、基本的な内容が問われた。
  • 問2は、ポリエチレンテレフタラートの構造式に関する出題であった。化合物の構造式のみを問うた素直な内容であった。
  • 問3は、2-ブタノールの性質に関する出題であった。構造式が与えてあり考えやすい。
  • 問4は、アセチレンとエチレンの反応経路について問うており,工業的内容を含む有機合成に関する出題であった。
  • 問5は、芳香族化合物の分離に関する出題であった。構造式が与えてあり考えやすい。多岐にわたる設問が可能な題材でありながら、1つの事柄のみを問うており、端的で素直な問題であった。
  • 問6は、元素分析装置で二酸化炭素と水の吸収剤を問う典型的な出題であった。問5同様、多岐にわたる設問が可能な題材でありながら、1つの事柄のみを問うており、端的で素直な問題であった。
  • 問7は、鎖式不飽和炭化水素に付加する水素の量を求めさせる計算問題であった。演習問題で考え方を身につけていた受験生は正答できたと推測する。
    5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値) ※2005年以前は化学IBの平均点です。

    年度 2008 2007 2006 2005 2004
    平均点
    64.21
    61.35
    64.13
    66.06
    54.30
    6.2010年度センター試験攻略のポイント

  • 例年、化学Iでは分野ごとに大問が構成されており、各大問の配点は等しい。よって、幅広い学力が必要とされ、苦手分野を作らないようにすることが重要である。教科書に記載されている基本的な内容をしっかりと身につけたい。
  • 実験や観察に基づいて化学現象を把握する問題は頻出である。実験やレポート作成などを通して,思考力・考察力を身につけたい。また、模擬試験や問題集などでみられる様々な傾向の問題に多く当たることで応用力を身につけておきたい。
  • 日常生活や化学の成果など、物質と人間の生活を関連づけた問題は例年出題されているが、苦手とする受験生も多い問題である。普段から幅広く知見を得るように心がけ、暗記的な学習が中心とならないようにしたい。
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