・資料読解重視の傾向は継続。難易は昨年よりやや難化した。
・大問の配列と配点が変更されたほか、解答数が1個増加した。
・組合せ問題(11→12)と、4択問題(25→25)をはじめ、設問形式面での変化は少なかった。
昨年から大問の配列が変更され、「地域調査」が第6問から第2問となった。地理Aとの共通問題は、「地域調査」(18点分、地理Aにはオリジナルで1問追加)である点に変わりはなかった。内容面では、資料読解を伴う問題が昨年並に出題されたほか、地理的技能を要求する設問が散見された。また、正答の判断においてやや細かい知識を要する設問がみられたことに加え、大問の配列変化による受験生の時間配分への影響から、全体的な難易は昨年に比べてやや難化した。 |
【大問数・解答数】 | 大問数は6、解答数は1個増加し37。第2問は地理Aとの共通問題。 |
【出題形式】 | 大問の配点が変更され、昨年とは逆の傾向で前半の大問で配点が高く、後半で低くなった。地図・模式図、写真の読解を伴う出題は昨年に比べ微増、文章選択と組合せ問題は昨年並。なお、地形図の読解を伴う出題は4問あった。 |
【出題分野】 | 「自然環境分野」と「産業分野」中心の出題は昨年通り。人口や宗教、食料、労働など幅広い出題がみられた。 |
【問題量】 | 昨年並。現代世界の諸問題では、配点が5点減少し、解答数も1個減少した。 |
【難易】 | 昨年よりやや難化。 |
大問 | 出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考(使用素材・テーマなど) |
第1問 |
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第2問 |
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第3問 |
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第4問 |
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第5問 |
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第6問 |
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第1問「ヨーロッパとその周辺地域の自然環境」
自然環境を扱った出題。昨年に比べ解答数が2個増加し8設問になった。標準的な設問が多いものの、若干細かい知識が扱われた。 | |
問2はヨーロッパ北部の大陸棚の分布とプレート境界の位置を示した図の選択問題。プレートの境界がアイスランドを通過していることから2つに絞込み、フィヨルドの形状に注意して判断する必要があった。 | |
問3は地形断面図の判別問題。ヨーロッパ地域の地形を立体的にイメージできるかが問われた。地図帳を活用し、しっかり学習しておけば解答は難しくない。スカンディナヴィア山脈が古期造山帯であることを想起し、Dの両端の●○がグラフと対応していないことに注意して判断することが求められた。 | |
問5は文章中の3つの空欄に該当する語句の組合せ問題。フェーン及び山麓の気温と湿度が問われた。フェーンの名称のみならず、メカニズムについての理解が求められた。 | |
問8はケスタ地形の模式図をもとに同地形に関する知識を判断させる文章選択問題であった。模式図からケスタ地形が導きだせても、ケスタ地形に関する特徴を文章で判断するのは受験生には難しかった。「非対称な断面」という表現から、どれだけ立体的なイメージを描けたかがポイント。 |
第2問「境港市とその周辺の地域調査」
境港市とその周辺の地域調査を扱った出題。地域調査は昨年同様に地理Aとの共通問題として出題された。地形図や写真、各種グラフなど様々な資料が扱われ、それらを活用するうえでの技能が幅広く要求された。なお、地形図の読み取りを伴う問題は4問あった。 | |
問2は所与の景観写真が地勢図中の4つの方向のうち、いずれの方向から撮影されたものかを判別させる問題。位置認識の技能が求められた。弓ヶ浜のカーブの手前に写っている江島などから判断は容易である。 | |
問3は地勢図と地形図を複合的に読図しながら判断する文章選択問題。地形図の位置を地勢図のどこに見出せるかがポイントであった。海が近いという点と等高線を読み取ることができれば難しくはない。 |
第3問「農林水産資源とそれを利用した産業」
農林水産資源とそれを利用した産業を扱った出題。地図や図表の読解や背景を考えさせる地理らしいオーソドックスな出題が多く、学習量によって差がつく内容であった。 | |
問2はイギリス、インド、オーストラリア、フランスの小麦カレンダーからインドを判別する問題。各国の気候の違いを踏まえ、春小麦の播種期の有無からインドとオーストラリアに絞り込んで判断することが求められた。 | |
問4は木材の伐採量と輸出入の上位10か国を示した地図の組合せ問題。日本とブラジルを手がかりに判断することがポイント。日本は輸入量が多い点、ブラジルにはアマゾンが広がる点を想起できれば解答は容易であった。センター試験で頻出の問題形式なので慣れておきたい問題である。 |
第4問「村落、都市」
村落、都市を扱った出題。昨年と異なり「村落」がテーマに加えられたが、出題は1設問にとどまった。地図や模式図、統計表、景観写真と様々な資料が扱われたことに加え、現行課程で学習している受験生にはやや細かい知識が求められた設問もあり、やや難しかったと思われる。 | |
問2はキャンベラ、チュニス(旧市街地)、ニューヨークのいずれかの都市における街路形態を示した図の組合せ問題。迷路型は西アジアや北アフリカでみられることからチュニス、放射同心円型は計画的に造営されたキャンベラ、直行路型は「新大陸」や古代都市にみられることからニューヨークと判断したい。頻出事項であり、受験生にとってはおさえておきたい問題であった。 | |
問3はシドニー、デリー、ハーロー、ボローニャの都市整備や地域開発の特徴についての文章選択問題。ボローニャやハーローといった都市は、受験生には馴染みがなく難しかった。ボローニャが「中世からの」歴史的都市でかつ首都ではないことなどから判断できたかどうかがポイント。 | |
問5は仙台市、千葉市、浜松市の銀行本・支店数、第2次産業就業者の割合、昼夜間人口指数から各都市を判別する組合せ問題。銀行のみならず企業の本・支店数の多い地方中枢都市である仙台市をカ、東京近郊に位置する衛星都市で、夜間人口が多い千葉をキ、輸送機器の生産が盛んな工業都市である浜松をクと判断したい。都市の立地や機能に関する基本事項でセンター試験でも頻出の出題形式であることから、取りこぼしたくない問題であった。 |
第5問「カナダの地誌」
カナダの地誌を扱った出題。やや細かい知識を扱う問題も散見された。人やモノの交流や流通をテーマにした設問が多かった。 | |
問3はバンクーバー、エドモントン、トロント、モントリオールの産業についての文章選択問題。カナダにおける人口最大都市がトロントであることがポイントであるが、受験生には難しかった。カナダの都市については受験生にはなじみがなく、苦戦した者も多かったと思われる。 | |
問4はカナダへの移民の出身地域・国別割合の推移を10年ごとに示したグラフ地域・国を判別する組合せ問題。多文化主義政策を背景に、中国をはじめとしたアジア系人種が増加している点を想起できたかがポイント。 |
第6問「現代世界の諸問題」
現代世界の諸問題を扱った出題。人口、発展途上国の問題、食料、民族、宗教など社会的な課題が幅広く扱われた。昨年に比べ設問数が1個減少し、配点も5点減少した。 | |
問1は1人あたりの水資源利用可能量の高低を国・地域別に示した世界地図をもとに、関連して述べた文章中の下線部を判別する問題。降雨のメカニズムを理解できているかが問われた。イギリスやドイツは西岸海洋性気候であることと、ロシアやカナダに比べて人口と国土面積の関係を考えれば解答は容易であった。水資源というテーマが時事的であった。 | |
問4はシンガポール、タイ、ドイツ、フランスの出生率と65歳以上人口の割合を示したグラフからシンガポールを判別する問題。65歳以上の人口の割合に着目し、先進国と発展途上国に区分したうえで、より出生率の高い国をタイと判断することがポイントであった。先進国と発展途上国の人口ピラミッドをイメージできるかを問うており、工夫された出題であった。 | |
問5はカンボジア、パキスタン、メキシコそれぞれにおける、識字率、女性の労働力率、女性労働人口に占める第3次産業の割合を判別する組合せ問題。イスラム教の国であるパキスタンでは女性の社会的地位が高くない点、稲作地帯に位置するカンボジアでは第1次産業が盛んである点を想起できるかがポイントであった。女性の社会進出をテーマに各国の文化的背景や社会経済状況を考察させる点に工夫がみられた。 |
年度 | 2008 | 2007 | 2006 | 2005 | 2004 |
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地図や統計資料の読み取りを絡めた組合せ問題や文章選択問題が出題の中心である点は大きく変わっていないので、過去のセンター試験や模擬試験を繰り返し確認しておくことは有効な対策である。また、オーソドックスで基本知識の定着を確認する出題が多いため、少なくとも過去問で扱われた知識内容については教科書でしっかり確認しておきたい。 | |
地域調査では、日本の地誌についても一定の理解が求められるので、産業・貿易の経年変化なども含めて理解の定着を図りたい。地形図の読み取りに関しても、模擬試験の復習などを通して、慣れておくことが重要である。 | |
統計表やグラフに関しては、数値やグラフの変化や差異が見られる点に着目し、背景を考える習慣をつけておきたい。仮説を想起し、既習の広範な知識を駆使して検証するプロセスが大事である。 | |
制限時間内に解答を完了できるよう時間配分に留意した演習を重ね、各設問に落ち着いて取り組めるようにしておくことが大事である。 | |
各分野において軸となる重要事項、原理原則はしっかりとおさえ、たとえ知らない事項が出てきてもそこから応用して考察するスキルを習得することが大事である。どのような問題や出題形式に遭遇しても攻略の糸口を見つける対応力を培っておきたい。 |