地理A
1.総評
【2009年度センター試験の特徴】
・大問の配列が変更され、例年、第5問であった「地域調査」が第2問に移動した。
・地図の読み取りを伴う問題と、グラフの読解を必要とする問題が増加し、受験生の負担は増加した。
・昨年と比較して、生活文化に関する扱いが薄くなった。
昨年と同様に、大問数5・解答数36の構成で、「地域調査」の大問は1設問を除き地理Bとの共通問題であった。昨年と比較して、地図やグラフの読み取りを必要とする問題が増加し、受験生の負担は増加した。
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2.全体概況
【大問数・解答数】 |
昨年同様、大問数は5、解答数が36。第2問が1設問を除き地理Bとの共通問題。例年、第1問は8設問、第2問以降は各7設問であったが、昨年に引き続き、2009年も地誌分野が8設問、課題分野が6設問となっている。 |
【出題形式】 |
文章選択中心で、次いで組合せや図表中から選ぶ出題が多いという傾向は例年通り。昨年に比べ、地図やグラフの読み取りを必要とする問題が増加した。 |
【出題分野】 |
大問の配列は変更されたが、出題分野は変わらなかった。外国との関係を問う出題は例年通りだが、生活文化に関する扱いはやや薄まった。昨年に引き続き、地形図を用いた地域調査の問題が地理Bとの共通問題として出題された。 |
【問題量】 |
昨年と比較して、地図の読み取りを伴う問題と、グラフの読解を必要とする問題が増加し、受験生の負担は増加したと思われる。 |
【難易】 |
昨年並。 |
3.大問構成
大問 |
出題分野・大問名 |
配点 |
難易 |
備考(使用素材・テーマなど) |
第1問 |
- 地理の基礎的事項
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- 16点
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- やや難
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- 時差、自然環境、日本の領土、世界遺産、地球上の位置関係
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第2問 |
- 境港市とその周辺の地域調査
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- 21点
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- やや難
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- 地域調査
※問7以外は地理Bとの共通問題
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第3問 |
- 現代世界における地域の結びつきとその変化
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- 21点
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- 標準
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- 人・モノ・情報の移動、国家の結びつき
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第4問 |
- 中国の自然環境、生活文化、産業
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- 24点
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- 標準
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- 自然環境、産業、生活文化、都市、日本との関係
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第5問 |
- 食料にかかわる地球的課題
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- 18点
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- 標準
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- 食物摂取の状況、食料品の輸出入、農地・水・食料の確保、食の安全
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4.大問別分析
第1問「地理の基礎的事項」
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昨年同様、出題分野を網羅した小問集合であった。基礎的事項の出題ではあるが、全問が見慣れない正射図法の地図を用いて問われているうえ、細かい知識が求められる問題もあり、受験生にとっては判断が難しかったと考えられる。
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問1は、日付変更線がベーリング海を通っていることを思い浮かべることができれば正答が選べる。
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問2は、地球上での大地形の分布が理解できているかが問われた。正射図法のため、Cの位置がわかりにくかったかもしれない。
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問3は、自然環境と人間生活に関する出題で、文章中に「ステップ」「遊牧民」「木の骨組みと羊の毛のフェルトから作られる住居」などヒントが多く、選択肢の地点も離れているため、判断はしやすかったであろう。
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問4は、日本の領土の範囲を正確に理解しているかが問われた。地図中に北回帰線が示されていないため、正答の選択肢を図から判断することは難しいが、消去法で正答を導くことができる。
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問5は、世界文化遺産となっている宗教施設の写真だが、あまりなじみのない施設であり、宗教名が示されていないので、迷ったかもしれない。Mの位置がフィリピンのルソン島であることから、イスラム教ではなくキリスト教と判断できる。
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問6は、設問の意味が読み取れず、迷った受験生が多かったのではないだろうか。ツが対蹠点であるから、ツを通る大円上で、ツから最も離れている地点が、明石市から最も近い地点となる。
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問7は、地球上の気候分布を大観できているかが問われた。
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第2問「境港市とその周辺の地域調査」
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境港市とその周辺の地域調査を扱った出題。地勢図・地形図・写真を複合的にみながら位置認識することが求められた。グラフが多用され、時間を要した受験生もいたと思われる。問7以外の詳細は地理B第2問参照。
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問7は、境港と中国・ロシア・韓国の貨物貿易に関する出題。日本との貿易ではなく、境港に限って問うているため、判断の決め手を見つけることは難しかったであろう。
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第3問「現代世界における地域の結びつきとその変化」
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現代世界の結びつきをテーマに、人・モノ・情報の移動、国家の結びつきなど幅広く出題された。知識と考察力、時事的な興味・関心を含めて、総合的な力が問われた。
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問1は、日本の輸入先の変化を表で問う出題で、2005年には中国とアメリカ合衆国の順位が逆転していることが理解できていれば正答が選べる。
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問3は、「日本に滞在する外国人の国別人口の推移」と「外国に滞在する日本人の国別人口の推移」の2つのグラフからアメリカ合衆国・中国・ブラジルを判断する問題。日本国内では、日系人の入国が緩和された1990年以降のブラジルからの増加、近年の中国からの激増、また外国では、日本からアメリカ合衆国への増加が判断のポイントである。時事的な社会の動きへの理解度が問われた。
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問4は、模式図で同じ線種の1と2が所要時間の短い航空機とわかる。航空機の飛行距離が短い時代の給油基地であったアンカレジを知っていれば正答が選べるが、冷戦期にソビエト連邦上空を航行できなかったこともヒントとなる。
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問7は、1990年代以降の国家の形態や国家間結合について、地図と選択肢を結び付けて考える出題で、ソビエト連邦・ワルシャワ条約機構などの歴史的な知識も必要であり、判断が難しかったであろう。
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第4問「中国の自然環境、生活文化、産業」
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中国について、自然環境、産業、生活文化、都市、日本との関係など幅広く出題された。全体を通して、正確な知識・理解が必要とされた。
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問1は、標高の範囲を示した3つの地図の組合せではあるが、臨海地域は標高が低いことと、チベット高原・ヒマラヤ山脈の位置が理解できていれば判断は容易である。
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問2は、年降水量と年平均気温の関係を示したグラフで、見慣れないため戸惑った受験生もいたかもしれないが、内陸部は年降水量が少ないという基本的な知識を当てはめて判断できる。
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問3は、アモイ・シャンハイ・ホンコンの3つの都市の景観写真を組み合わせた形式で、昨年に引き続いて出題された。写真の下の説明から、経済特区=アモイ、中継貿易=ホンコンと判断する。
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問4は、中国国内の少数民族の多く居住する地域と民族の組合せで、それぞれの自治区の正確な位置を知らなくても、チベット高原やモンゴル国の位置がわかれば判断できる。
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問5は、中国各地域の食文化を扱った定番の出題だが、選択肢の文章中に、背景となる自然環境や農業の記述が少なく、正答を判断しにくかったのではないだろうか。
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問6は、中国における穀類・肉類・野菜の生産量の推移のグラフから、それぞれの作物名の組合せを選ぶ出題。1985年から2005年にかけて急増しているYを、肉類と誤って判断した受験生も多かったと思われる。中国では輸出向けを含め、野菜生産の増加が著しいことを理解しておきたい。
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問7は、ウーハン・シェンチェン・テンチン・ランチョウの工業の特色の文章からシェンチェンを選ぶ出題。シェンチェン以外の都市はなじみがなく、経済特区という用語に着目できたかが正答へのポイントとなった。
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第5問「食料にかかわる地球的課題」
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現代世界の諸課題の中でも、食料に関する課題を中心とした出題。正確な地域的・時事的知識をもとに判断する力が問われた。
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問1は、アジアとアフリカの「年齢のわりに低体重である子どもの割合」を示した図をもとに判断する出題。アフリカは分布が複雑なので、アジアに着目して考えれば、インドから正答を導きやすい。
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問2は、「1人1日当たり供給栄養量」と「動物性食料の割合」の関係を読み取る出題。選択肢の内容に沿って、一つ一つ丁寧に判断していくことで正答が得られる。
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問3は、「輸入額に占める食料品の割合」と「輸出額に占める食料品の割合」の関係から国名を判断する出題。食料品には、穀物や野菜だけではなく、嗜好作物も含まれていることに留意する。選択肢1と4はともに輸入額に占める食料品の割合が高く、アルジェリアとコートジボワールのどちらかだが、コートジボワールのカカオ豆が想起できれば正答を導くことができる。
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問4は、3地点の農地や水を確保する取り組みで、アは海水の淡水化から西アジアのY、イは干潮時に現れる陸地に築かれた堤防からポルダーを想起してX、ウは山脈を貫く導水路からスノーウィーマウンテンズ計画のZと判断する。
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問5・問6はともに時事的な理解と、正確に文章を読み取る力が問われた。
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5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)
年度 |
2008 |
2007 |
2006 |
2005 |
2004 |
- 平均点
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- 56.83
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- 53.91
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- 62.67
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- 65.68
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- 59.97
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