問題講評
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日本史A

1.総評

【2009年度センター試験の特徴】 

・史料、写真、表、絵、地図などさまざまな素材を使った問題が出題された。
・解答数が36個から34個へ減少し、昨年はなかった6択の問題(8問)が出題された。
・昨年よりも難化した。


 大問数、日本史Bとの共通問題(2大問)は昨年と変化はなかったが、解答数は36個から34個へ減少した。現行課程のねらいに沿って近現代史が重視され、また、分野のバランスは昨年とほぼ変化はなかった。さまざまな素材が使用され、その読解を求める問題もみられた。全体的に基本的な問題が多かったが、年代整序問題(8問)がすべて6択の問題で出題され、時代幅が狭く判断に迷うものもあったため、昨年よりも難化した。
2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数は6、解答数34。第4・5問は日本史Bとの共通問題。
【出題形式】 昨年はなかった2行の文章選択問題(2問)や、6択の問題(8問)が出題された。召集令状、史料、表、絵、地図などの資料が用いられた。
【出題分野】 幕末期を含め、近現代史中心の出題。古代・中世の内容は1問のみで、戦後史の出題が6問から3問へ減少。分野は変更なし。
【問題量】 解答数が36個から34個へ減少。
【難易】 昨年より難化。
3.大問構成

大問 出題分野・大問名 配点 難易 備考(使用素材・テーマなど)
第1問
県立文書館での歴史資料見学
8点
やや易
会話文、召集令状の写真
第2問
幕末・明治期の西洋との出会いと文化の導入
18点
標準
A ペリー来航(『ペルリ提督 日本遠征記』、『大日本古文書 幕末外国関係文書』)
B 明治初期の教育(図版)
第3問
明治時代の外交
15点
やや難
A 明治初期の政治と外交(地図)
B 近代の日露国境とアイヌ政策
第4問
近代の政治・社会
12点
やや難
普通選挙制の展開と思想弾圧
第5問
幣原喜重郎と近現代の政治と外交
23点
A 第一次世界大戦前後の外交
B 協調外交の挫折
C 占領政策と講和条約
第6問
近代の政治と社会
24点
標準
A 初期議会と条約改正
B 桂園時代と第一次護憲運動
C 大正デモクラシーと民本主義(「憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず」)
4.大問別分析

第1問「県立文書館での歴史資料見学」

  • 問題本文は県立文書館での会話という設定で、古文書の収集や消失に関連する出来事が政治や文化などの分野から出題された。中世から近代の時代幅の広い設問が1問出題された。
  • 問1は、写真を使用した出題であったが、写真中の「臨時召集令状」という語句をもとに落ち着いて取り組めば難しくない。
  • 問2の年代整序問題は、政治や文化の年代整序問題であったが、応仁の乱・平田篤胤・士族の反乱と時代幅が広いため、取り組みやすい問題であった。

    第2問「幕末・明治期の西洋との出会いと文化の導入」

  • Aはペリー来航とそれ以後の政治、Bは明治初期の教育を中心として出題された。
  • 問1は、ペリー来航時の民衆の反応について史料を読み取る問題であった。内容を丁寧に読めば素直に正答を導ける。
  • 問2は、ペリー来航時の幕府の対応についての出題であった。時代の判断を問うかたちをとっているが、阿部正弘がそれまでの方針を転換させたことをおさえておけば難しくない。
  • 問3は、ペリー来航以後の政治情勢についての年代整序問題であった。時代幅が狭く、薩長同盟と八月十八日の政変の前後関係で迷った受験生がいたかもしれないが、流れをおさえていれば正答を導ける。
  • 問5は、絵を参考に明治初期の教育について出題された。絵から教師がお雇い外国人ではないこと、男女が学んでいたことが読み取れ、容易に正答を導ける。また、「国定教科書」と「教育勅語」の時期判断が問われたが、頻出の内容である。
  • 問6は、学制実施に対する反対運動の背景についての出題であった。学制は国民皆学をめざした制度であることが理解できていれば正答を選ぶことは難しくない。

    第3問「明治時代の外交」

  • Aは明治初期の政治と外交、Bは近代の日露国境とアイヌ政策が出題された。
  • 問1は、琉球漁民殺害事件と江華島事件が起こった位置を地図中から選択させる出題であった。琉球漁民殺害の位置は、台湾出兵の原因をきちんとおさえていれば正答を導ける。江華島事件の位置も問題本文中の日朝修好条規という語句を手がかりに判断したい。
  • 問2は、明治政府成立直後の国内状況についての出題であった。征韓論争の対立構造を正確に理解していたかどうかがポイントであった。
  • 問3は、甲申事変についての出題であった。天津条約の内容をおさえていたかどうかで差がつきやすい。
  • 問4は、幕末から明治時代にかけての日露間の国境に関する年代整序問題であった。基本事項であるが、領土を決定した条約名が出ていないため、内容をきちんとおさえていないとやや難しい。
  • 問5は、アイヌに関する出題であった。蝦夷・北海道史は近年重視されているテーマの一つである。明治政府による同化政策や、北海道旧土人保護法などについて理解できているかどうかで差がつきやすい問題であった。

    第4問「近代の政治・社会」

  • 日本史Aとしては、やや難しい出題。詳細は日本史B第5問参照。

    第5問「幣原喜重郎と近現代の政治と外交」

  • 日本史Aとしては、難しい出題。詳細は日本史B第6問参照。

    第6問「近代の政治と社会」

  • Aは初期議会と条約改正、Bは桂園時代と第一次護憲運動、Cは大正デモクラシーと民本主義に関する出題であった。
  • 問1は、天皇と伊藤博文の語句組合せ問題であった。伊藤博文は、問題本文中の「初期議会で天皇の詔書を出させて」という部分に気がつけば解答しやすい。
  • 問2は、第1回総選挙に関する出題であった。基本事項であるため正答を選ぶことは易しい。また、問題本文中の「政府は、超然主義をかかげ」という部分もヒントになった。
  • 問3は、条約改正についての年代整序問題であったが、外交担当者の名前を出していないため、内容をきちんとおさえていないとやや難しい。
  • 問4は、第一次護憲運動に関する犬養毅と山本権兵衛の語句組合せ問題であった。犬養毅は、問題本文中の「憲政擁護」「閥族打破」から判断できる。山本権兵衛も大正政変後に成立した内閣であることや「軍部大臣の現役武官規定を撤廃」というヒントから正答を導ける。
  • 問5は、桂園時代に起こった出来事についての年代整序問題であった。時代の幅が狭く、日露戦争から韓国併合までの流れを正確におさえていたかどうかで差がつきやすい問題であった。
  • 問6は、軍部大臣現役武官制に関する出題であった。Yは、軍部大臣現役武官制が広田弘毅内閣の時に復活したことと、二・二六事件の後に広田弘毅内閣が成立したことの二つの判断ポイントがあったため、やや難しい。
  • 問7は、大正デモクラシー期の社会動向についての出題であった。選択肢1の「自由教育運動」は細かい事項であり、選択肢3の「友愛会が発展し日本労働総同盟に改称された」は、実際は、友愛会が大日本国労働総同盟友愛会に改称され、その後、日本労働総同盟と改められるため判断に迷った受験生もいたかもしれない。国体明徴声明はファシズムが進展していた1930年代半ば(岡田啓介内閣)であることをおさえられていたかがポイントであった。
  • 問8は、吉野作造の民本主義に関する論文史料の読み取り問題であった。史料を丁寧に読み取って選択肢の内容と照らし合わせれば正答を導ける。
    5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

    年度 2008 2007 2006 2005 2004
    平均点
    55.95
    51.53
    57.55
    54.77
    45.23


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