・昨年に比べて、戦後史の出題が減少し、近世・近代の出題がやや増加した。戦後史では、21世紀に関する出来事についても出題された。
・西欧史の出題が大幅に増加し、一方東アジアに関する出題が減少した。
・昨年はみられなかった年代整序や6択問題の出題がみられ、地図問題は出題されなかった。
大問構成、解答数は昨年通り。戦後史の出題が減少し、近世・近代の出題が増加した。現代史の中でも、21世紀に関する時事的な内容が出題された。地域、時代は幅広く、バランスよく出題された。特に、地域では西欧史の出題が増加し、東アジアに関する出題が昨年より減少した。分野については、政治史中心という点は変更ないが、文化史の出題がやや増加し、社会経済史は減少した。難易は昨年並。 |
【大問数・解答数】 | 昨年通り大問数は3、解答数は33個であった。 |
【出題形式】 | 昨年出題されなかった年代整序と6択問題がそれぞれ2問出題された。2文の正誤判別問題は昨年よりも増加した(4→6)。なお、地図を用いた問題はみられなかった。 |
【出題分野】 | 時代では、戦後史の出題が昨年に比べて減少し、近世・近代の出題が増加した。地域については、欧米の中でも西欧史が大幅に増加した。アジアにおいては、東アジアに関する出題が大幅に減少し、昨年みられなかった南アジアに関する出題がみられた。分野については、社会経済史が減少し、文化史が増加した。 |
【問題量】 | 昨年並。 |
【難易】 | 昨年並。 |
大問 | 出題分野・大問名 | 配点 | 難易 | 備考(使用素材・テーマなど) |
第1問 |
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第2問 |
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第3問 |
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第1問「モニュメントや歴史的建造物」
Aはパルテノン神殿、Bはドイツの国会議事堂、Cはタイのモニュメントを題材として、それぞれの建造物に関わる歴史的事件などについて出題された。西欧史、特にドイツに関する設問を中心に、前近代〜戦後まで幅広い時代からの出題がみられた。 | |
問1は、古代ローマの建築物についての基本的事項が問われた。問題文中の写真のアーチの形状からコロッセウムを想起させるユニークな出題であった。 | |
問4は、ギリシアについて、長いスパンで問う出題であった。正確な年代を知らなくても、ギリシアが西ローマではなく、東ローマの支配下であったことが想起できれば解答できただろう。 | |
問5は、ドイツ帝国の政治についての2文の正誤判定問題で、高度な時期判断が求められた。特にbの「スパルタクス団」は、主要な教科書にも記載がない用語であり、第一次世界大戦「前に」結成されたのではなく、大戦「中に」結成されたという知識が求められているため、生徒は判断に迷っただろう。 | |
問8は、ベルリンの壁の建設と崩壊の間に起こった出来事について、時期判断をさせる問題であった。ただし、ベルリンの壁が何年に建設されたかまでは細かい事項であるため、生徒には難しかっただろう。 | |
問10は、1930年代の出来事を選ぶ問題であった。1930年代がどういう時代であったかを把握できていれば解答できる問題であった。1929年の世界恐慌を想起し、ブロック経済化をおさえていれば、正答の「オタワ会議」を選べただろう。 | |
問11は、第二次世界大戦後のアジア・アフリカの国々の成立過程についての下線部の正誤判別問題であった。誤答の「光州事件」が「中国」でなく「韓国」という判断はやや細かいが、正答の「イラン・イラク戦争」は十分解答が可能である。 |
第2問「人々の移動や離散」
Aはアフリカ人奴隷、Bは華僑、Cは近代以降のユダヤ人などの民族問題をテーマに出題された。近現代史の国際関係に関わる政治史を中心として、革命・改革などについても出題された。歴史の正解な事項把握を求める問題が多く出題された。 | |
問2は、アフリカに関する年代整序問題であった。マリ王国、ヴァスコ=ダ=ガマ、オレンジ自由国と時代の幅が広いので難しくはない。ただし、周辺地域からの出題であったため、学習が行き届いていたかどうかで差がついただろう。 | |
問4では、差別や人権をめぐる動きについて出題された。現代にも残る課題について、第二次世界大戦の前後でどう変化してきたかという歴史的経緯を、正確に理解しているかが問われた。 | |
問6は、中国同盟会に関する基本的な問題であり、中国同盟会が東京で結成されたことは必ずおさえておきたい基本事項である。ただし、「孫文は、清朝と交渉し、宣統帝を退位させた」という記述に関しては、正確な知識を持っているとかえって迷った可能性もある。 | |
問8は、20世紀のシンガポールの歴史について問われた。19世紀にイギリス領となり海峡植民地に組み込まれたことと、太平洋戦争期に日本の支配下に入っていたことを想起し、問題文中の「ある国の植民地」がイギリスと判断できたかどうかがポイントである。 |
第3問「世界史における伝統と変革」
Aはイスラーム世界、Bはインド、Cはヨーロッパを題材に、各地域における伝統と変革をめぐる出来事について、政治・文化・社会経済など幅広い分野から問われた。前近代からの出題が多くみられ、分野では文化史の問題が目立ち、地域ではアジアからの出題が多かった。 | |
問4では、湾岸戦争と同時多発テロに関する出題があり、時事的内容にまで目を向けられているかどうかが問われた。 | |
問8は、インドの近現代史に関する基本的な事項を扱う問題であった。19世紀の出来事から、戦後まで幅広くインド史について問われた。「第一次世界大戦で、インド人兵士が戦線に動員された」かどうかを判断させるのはやや細かい内容であるが、インドはイギリスの植民地であること、秘密外交を結んだことを想起すれば、正文と判断できるであろう。 | |
問9は、1923年よりも前に起こった出来事として、「デパートの出現」を選ぶ問題であった。近代以降の社会経済から国際政治まで幅広い視点から出題された。「クローン羊」や「世界恐慌」などの誤答が判断しやすいため、消去法でも正答を導けたであろう。 | |
問10ではヨーロッパ統合の経緯について年表を用いて出題された。ヨーロッパ統合の理念から実現までの流れをしっかりと理解できている生徒は、正答を選ぶのは難しくなかっただろう。マーストリヒト条約でEUが成立したことをおさえていれば、年表をもとにECC→EC→EUという流れから正答を導けただろう。 |
年度 | 2008 | 2007 | 2006 | 2005 | 2004 |
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