問題講評
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政治・経済

1.総評

【2009年度センター試験の特徴】 

・政治分野が2大問、経済分野が2大問。国際政治と国際経済の融合問題が1大問出題された。
・正確な知識を必要とする標準的な問題が中心。資料読解における思考力など応用力も問われた。


 多角的・総合的視点のリード文という傾向は、昨年から変更がなかった。大問構成は、昨年同様、国際政治分野と国際経済分野の融合問題が1大問、政治が2大問、経済が2大問出題された。基礎的かつ重要な事項が知識として定着しているかどうかを問う出題を中心に、資料読解の思考力など応用力も求められた。きちんと学習を積み上げてきた受験生にとっては高得点が期待できる出題で、難易は昨年より易化。
2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数5、解答数38個は昨年から変更なし。
【出題形式】 2行の文章選択問題が増加(14→22)、語句選択問題がなくなり、1行の文章選択問題がやや減少した(13→10)。文章選択問題中心の傾向は昨年から変更なし。また、昨年に引き続き、統計資料や図表を用いた問題が4題出題された。
【出題分野】 政治分野が2大問、経済分野が2大問。国際経済分野をテーマとした、国際政治と国際経済の融合問題が1問出題された。
【問題量】 昨年並。
【難易】 昨年より易化。
3.大問構成

大問 出題分野・大問名 配点 難易 備考(使用素材・テーマなど)
第1問
国際社会と南北問題
24点
標準
融合(国際政治、国際経済)
第2問
情報社会と日本の政治
19点
やや易
政治
第3問
国民の政治参加
19点
やや易
政治
第4問
経済活動と労働・社会保障
19点
やや易
経済
第5問
戦後の日本経済
19点
やや難
経済(国際経済分野を1問含む)
4.大問別分析

第1問「国際社会と南北問題」

  • 国際政治と国際経済の融合問題。南北問題への取組みをテーマとし、戦後の国際政治や国際経済の動向について、標準的な知識が問われた。
  • 問1は、1人当たりGNI(国民総所得)と乳児死亡率の関係を示した分布図から、インド、韓国、ブラジルを選ばせる組合せ問題。人口が多いことから1人当たりGNIが低いため、Cがインド。また、先進国に近づきつつある韓国がその他の国々と比べ1人当たりGNIが高いため、Aと判断できた。統計資料の読み取りに際し、背景となる知識を必要とした。
  • 問3は、資本主義を分析した経済学者と彼らの主張した内容について問われた組合せ問題。主張内容にある「有効需要」、「階級対立」、「保護貿易」のキーワードと人物が結びつけば、容易に解答できた。
  • 問4は、安全保障理事会の内容について問われた。正答選択肢2の内容は、平和と安全の維持・回復における安保理の権限は総会より優位にあるという基礎的事項のものであり、誤答選択肢である1・3・4の内容がやや細かかったものの、正答を判断することができただろう。
  • 問5は、先進諸国に対抗するために発展途上国が試みた国際秩序の変革について問われた。「サンフランシスコ平和条約」、「トルーマン・ドクトリン」、「人民の自決権」は国際秩序の変革を試みた発展途上国と直接関係がなく、「NIEO」だけがあることが分かれば、容易に正答を判断できた。
  • 問7は、難民条約およびUNHCRの内容について、問8は、国際機関が行ってきたことについての内容であったが、いずれも基礎的事項であるため、容易に判断できた。
  • 問10は、地球環境問題に対する国際社会の取組みについて問われた。「国連人間環境会議」と「国際環境開発会議」の中身を混同して理解していた受験生は判断がしづらかったかもしれない。しかし、「国連人間環境会議の決議をうけて、国連環境計画(UNEP)が設立された」ことは基礎的事項であり、その他の選択肢の内容が分からなくても、正答を導ける。

    第2問「情報社会と日本の政治」

  • 政治分野からの出題。情報社会を切り口に、人権や国会、裁判など日本国憲法の内容が幅広く問われたが、多くの設問は基礎的事項の内容であり、受験生にとっては比較的取組みやすい大問であった。
  • 問2は、日本の政治制度について問われた。誤答選択肢1・3.4は、憲法改正のためには国民投票は「3分の2」ではないこと、最高裁判所の裁判官の国民審査は参議院議員通常選挙では行われないこと、内閣総理大臣を国民が直接選出するには憲法の改正は不要でないことは、基礎的事項の内容であり、判断は容易にできた。
  • 問3は、日本の情報社会の状況について問われた。選択肢3の「コーポレートガバナンス」以外は、情報社会に関連した用語が登場している。「ユビキタス・ネットワーク社会」、「電子商取引(e-コマース)」など、情報社会の基本的なキーワードの意味を押さえていれば、迷わずに正答を選べる。
  • 問5は、日本における裁判の制度や歴史について問われた。選択肢2の陪審制がこれまで実施されたかどうかはやや細かいが、その他の選択肢の内容はいずれも基礎的事項であるため、容易に正答にたどりつけたであろう。
  • 問6は、国会議員に認められている日本国憲法上の特権について問われた。正答選択肢4にある「弾劾裁判所」の役割を確実に理解していれば、解答できた。
  • 問7は、法律を制定する際の日本国憲法に定められている手続について問われた。選択肢1・2は憲法第63条の規定、選択肢3・4は第59条の規定についてである。正答選択肢3は、基礎的かつ重要な条文であり、また、選択肢の内容と憲法の条文が似通っていたため、判断は容易にできた。

    第3問「国民の政治参加」

  • 政治分野からの出題。国民の政治参加について、国や地方、選挙制度などさまざまな視点から問われたが、この大問も多くの設問が基礎的事項の内容であり、比較的取組みやすい大問であった。
  • 問2は、日本の選挙制度について問われた。選択肢1・4にある「戸別訪問」や「一票の格差」についての内容は基礎的事項であり、容易に誤答と判断できた。また選択肢2の判断ポイントである「重複立候補」は、「衆議院議員選挙においても参議院議員選挙においても」と両方明記されているので間違いが明らかである。
  • 問3は、日本の地方自治について問われた。「団体自治」・「住民自治」の意味、大日本帝国憲法における地方自治制度の位置づけ、「三割自治」の意味をおさえていれば、正答にたどりつけた。
  • 問4は、日本の住民投票について問われた。選択肢2・3はいずれも制度の内容についての記述で、正確な知識が必要であるが、住民投票の具体的事例をおさえていれば正答は選べたはずである。
  • 問5は、ブライスが述べた言葉の意味について、具体的事例を通して問われた。リード文中の下線部の後にある「民主政治の基盤」という言葉と正答選択肢3にある「民主政治の担い手」と結びつけられるかどうかがポイント。
  • 問6は、マス・メディアや世論の内容について問われた。選択肢4の「政治権力による報道の統制に従ったことはない」という内容を現代の日本にあてはめると判断に迷った受験生もいるかもしれないが、第二次世界大戦中の日本を想起すると、正答にたどりつけたであろう。
  • 問7は、統計資料の読み取り問題であった。知識は必要なく、数値を丁寧に読み取れば容易に正答が判断できた。

    第4問「経済活動と労働・社会保障」

  • 経済分野からの出題。国民の生活という視点から、労働や社会保障、その他の経済活動について多岐にわたり出題されたが、多くの設問がやや易しい内容であった。
  • 問1は、景気循環の類型についての説とそれぞれの循環を引き起こす原因について、問2は、日本における賃金・就業形態やそのあり方について問われたが、いずれも基礎的事項の内容で、容易に判断できた。
  • 問3は、日本の中小企業について問われた。正答選択肢2は、中小企業基本法の中身についてであり、やや内容が細かかったといえるが、中小企業の特徴を正確におさえていれば、消去法で解答できた。
  • 問4は、労働三権の法律内容について問われた。労働三権の行使を職種によって区別し理解していれば解答できる、オーソドックスな出題であった。
  • 問6は、日本の社会保障制度について問われた。「公的扶助」、「社会保険」、「社会福祉」、「公衆衛生」は日本の社会保障制度の4分野であり、それらの定義を正確におさえられているかが解答のポイントとなった。

    第5問「戦後の日本経済」

  • 経済分野からの出題。農業政策を切り口に、戦後の日本経済や経済理論などが出題された。問3は、需要供給曲線を用いた設問、問4は為替レートについての計算問題と、思考力を要する設問が出題され、やや難しい大問であった。
  • 問1は、日本の農業政策について問われた。誤答である選択肢1・2・4の内容はいずれも判断に迷うところであるが、正答選択肢3の減反政策の内容が明らかに正しいため、解答できた。
  • 問2は、高度経済成長期以降の産業構造の変化について問われた。選択肢1・3・4はそれぞれ、「軽工業への変化」、「労働集約的」、「第二次産業就業者数が第三次産業就業者数を上回った」ことは明らかな誤りであるため、容易に判断できた。
  • 問3は、政府が管理する農産物の価格を例に、需要・供給曲線の理解が問われた。設問文をふまえて需要・供給曲線のグラフを正確に読み解く必要があり、手こずった受験生も多かったであろう。解法は、政府がP1で農産物を買い上げたとき、供給量はQ1となる。需要量をQ1にするためには、販売価格をP3にしなければならない。よって、その差額であるP1-P3が1単位当たり政府負担額となる。
  • 問4は、為替レートの変動による内外価格差が問われた。設問文をまず理解し、示されたグラフを元にア・イの時点におけるアメリカでの商品A・Bの円換算した額を計算する。すると、アメリカでのアの時点における商品Aは10ドル×250円=2,500円、商品Bは15ドル×250円=3,750円。またイの時点における商品Aは10ドル×150円=1,500円、商品Bは15ドル×150円=2,250円となり、正答にたどりつけた。
  • 問5は、国土や環境の保全を重視する日本の農業政策のあり方について問われた。農業や農業政策のあり方をふまえ、それぞれの選択肢を読めば、選択肢1が明らかな誤りであることがわかった。
  • 問6は、市場の失敗を解決するために政府がとる施策内容が問われた組合せ問題。A・B・Cの内容について具体的にどのようなことを示しているのかを想起することができれば、正答にたどりつけた。
  • 問7は、消費者を保護するための日本の法制度について問われた。選択肢にあるそれぞれの法律内容をおさえておけば、判断できた。
    5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

    年度 2008 2007 2006 2005 2004
    平均点
    63.73
    64.41
    61.05
    64.55
    61.49
    6.2010年度センター試験攻略のポイント

  • 問われている内容は、各分野の基本的な用語の理解と、原理・原則が中心である。まずは、基本的な知識を確実におさえた上で、論理的に考察する応用力を身につけておきたい。
  • 近年、資料問題は4・5問出題されている。単純な読み取り問題だけではなく、その背景にある知識を必要とする問題も出題されている。日頃から、多くの資料にあたり、数値変化の原因などを教科書などで調べ、理解を深めておきたい。
  • 教科書だけではなく、資料集レベルの知識や、時事的な事項についての知識も求められるので、新聞・TVの特集記事・報道には十分な関心をもっておく必要がある。学習して得た知識を具体的な事例に当てはめて理解しておきたい。
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