問題講評
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英語リスニング

1.総評

【2009年度センター試験の特徴】 

・大問数・解答数・配点とも、2008年度と全く同じであった。
・読まれる英文の総語数は1110語で、分量としてはほぼ昨年並であった(昨年は1087語)。読み上げられる速さは、第1問・第2問で昨年よりやや速くなったが、第3問・第4問で昨年よりややゆっくりとなり、全体としては昨年とほぼ同じであった。
・難易に関しては、第1問・第2問を中心に、聴き取りに注意を要する設問が増加したため、昨年よりやや難化した。


 2009年度は、昨年と同様、形式・設問数・配点に変化がなく、読み上げられる速さは、全体平均では昨年とほぼ同じ約160語/分(約160wpm)程度であった。ただし第1問・第2問では、約170語/分(約170wpm)を超え、昨年より速くなった。ナチュラルスピードではあるが、語と語の音の連結や脱落があり、聴き取りに注意を要する設問が多かった。
 読まれる英文の内容は昨年と同様に情報量が多く、選択肢を含め、知らないと解けない口語的な表現が含まれていた。また、英文を最後まで聴かないと正答を導くことのできない設問や、本文を巧みに言い換えた選択肢が多かった。正答のポイントとなる部分が聴き取りづらい設問もあり、設問によってはやや取り組みにくかった。その結果、難易に関しては昨年よりやや難しくなったと言えよう。
2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数、解答数とも昨年通り。大問数は4、解答数は25であった。
【出題形式】 出題形式はほぼ昨年通りで、出題傾向に大きな変化は見られなかった。第3問Bは、表を完成する出題に戻った。大問配点は昨年通りであった。
【出題分野】 昨年同様、日常的な会話の理解から説明文の内容把握まで幅広く問われた。
【問題量】 ほぼ昨年並。
【難易】 昨年よりやや難化。
3.大問構成

大問 出題分野・大問名 配点 難易 備考(使用素材・テーマなど)
第1問
短会話・Q&A選択
12点
やや難
第2問
短会話・応答文選択
14点
やや難
第3問
会話文・Q&A選択/表完成
12点
標準
A「アパートでペットを飼うための追加料金」、「予約した座席の間違い」、「休暇の申し出」
B「女の子の赤ちゃんの名前人気ランキング」
第4問
モノローグ・Q&A選択
12点
やや難
A「セミの声の印象」、「手袋を探してもらうための伝言」、「水族館のショーの案内」
B「オンライン・マガジンの紹介」
4.大問別分析

第1問「短会話・Q&A選択」(短い会話を聴いて質問に答える形式)

  • 読み上げられる会話の発話数は、昨年と同様、すべての設問で4であった。また、読み上げられる語数は29語〜32語(問1:32語、問2:31語、問3:31語、問4:32語、問5:29語、問6:31語)、読み上げられる速さは平均で約175語/分(約175wpm)となり、昨年よりかなり速くなった(昨年は約140語/分(約140wpm))。
  • イラスト選択問題は、「ユニフォームのデザイン」(問2)、「地下鉄の路線図」(問4)、「時計のデザイン」(問5)の3問が出題された。問2では、the logo on the sleeveが聴き取れたかどうかがポイントであった。問5は最初の男性の発言が聴き取りづらかった。また、a black one with big handsのhandsの意味がわかるかがポイントであった。
  • 数値を聴き取っての計算問題は昨年の1問から2問になった。問1は空港でゲートに行く時間を特定する問題であったが、「飛行機の2時間の遅れ」に加え、「離陸の15分前に来ておく」という2段階の計算が必要であった。問6は「入場料」の計算をする問題であったが、女性のwe can save a dollar on each ticketのsaveを聴き逃すと選択肢3の$55を選んでしまったであろう。
  • 問3は、男性のSo, should I record the game?から判断すると選択肢2を選んでしまっただろうが、男性の発話のあとに情報の更新があり、最後の女性のI’ll record my program.までしっかり聴き取らないと正答を選べない問題であった。

    第2問「短会話・応答文選択」 (会話のあとに続く応答を選ぶ形式)

  • 読み上げられる会話の発話数は、昨年の2〜3から、すべての設問で3となった。また、読み上げられる会話の語数は17語〜32語(問7:17語、問8:18語、問9:22語、問10:19語、問11:26語、問12:29語、問13:32語)で昨年よりやや長めの会話が多かった。読み上げられる速さは昨年と比べてやや速くなり、平均で約175語/分(175wpm)であった(昨年は約165語/分(約165wpm))。
  • 会話の場面や話題としては、「レストランでのテーブルの席数」(問7)、「待ち合わせ」(問8)、「外国語学習の進み具合」(問9)、「外出前の慌しさ」(問10)、「オフィスの場所」(問11)、「新規購入品についての勘違い」(問12)、「動物園の入園口」(問13)が出題された。昨年と同様、日常的な場面や話題が出題されていた。
  • 読み上げられる速さが昨年より速くなったことにより、語と語の連結や否定語の部分の発音などが聴き取りづらく、取り組みにくい設問があった。問7ではthere aren’t enough chairsのaren’t enough、問8ではshe can’t make itのcan’tが正答のポイントとなる部分だったが、いずれもn’tの音が聴き取りづらく、やや難しかった。
  • 問8ではshe can’t make it、問9ではHow do you like it so far?という口語的な表現を理解できたかどうかがポイントであった。選択肢にも口語表現が散見されたが、問10の選択肢3のtake a lookや問13の選択肢3、4のYou’ll be fine.など、文脈上意味が取りにくいものもあった。

    第3問「会話文・Q&A選択/表完成」 (会話を聴いて質問に答える形式/表を完成させる形式)

  • 読み上げられる会話の発話数は、Aが4〜6(昨年は3〜6)、Bが13(昨年は9)であった。読み上げられる会話の語数は、Aが43〜54語(昨年は47〜51語)、Bが149語(昨年は151語)で、いずれもほぼ昨年並であった。読み上げられる速さは、Aが平均で約160語/分(約160wpm)、Bが約150語/分(約150wpm)でいずれも昨年よりややゆっくりになった(昨年はAが約170語/分(約170wpm)、Bが約175語/分(約175wpm))。
  • Aの会話の場面や話題としては、「アパートでペットを飼うための追加料金」(問14)、「予約した座席の間違い」(問15)、「休暇の申し出」(問16)が出題された。
  • Aはいずれの設問も、情報の追加・訂正があり、正答のポイントが最後にあったため、会話を最後まで集中して聴く必要があった。問14は男性の最初の発言with a cat and a dog you’d pay doubleの部分が聴き取りづらかった。また、女性の最後の発言a pet is a petが正答を導く際のポイントとなった。問15は情報の追加・訂正があり、女性のI’ll just sit in the seat you reserved.を聴き取れないと、選択肢1や3を選んでしまったであろう。問16では、女性の最後のI guess that’ll workから男性が土曜日に休暇をとることを許可していることがわかるが、直接的な許可ではないので、全体を聴き取ったうえで、内容を理解し、正答を選ぶ必要があった。
  • Bは、「女の子の赤ちゃんの名前人気ランキング」についての会話を聴き、ランキング表を完成する問題が出題された。会話中に出てくる年代が聴き取れれば表の見るべき箇所が特定できたと思われる。解答に関わる箇所の最初の発話部分がどこかを聴きながら考えていく必要があった。問19は女性の発言中のin one decadeの理解がポイントであった。

    第4問「モノローグ・Q&A選択」(英文を聴いて質問に答える形式)

  • 読み上げられる英文の語数は、Aでは89〜98語(昨年は91〜98語)、Bでは189語(昨年は204語)で、いずれもやや減少した。読み上げられる速さは、Aが平均で約160語/分(約160wpm)で、昨年よりゆっくりになった(昨年は約175語/分(約175wpm))。BはAより遅く、平均で約140語/分(約140wpm)で、昨年よりゆっくりであった(昨年は約155語/分(約155wpm))。
  • Aは、「セミの声の印象」(問20)、「手袋を探してもらうための伝言」(問21)、「水族館のショーの案内」(問22)についての問題であった。読み上げられる速度が遅くなり、全体的に標準的なレベルの問題であった。
  • 問21は、一度can you please call me here?と頼んでいるが、ホテルの部屋にほとんどいないため、I’ll contact you again tomorrow.と訂正している。この展開が聴き取れずに選択肢2を選んでしまった受験生もいたと思われる。
  • Bは、「オンライン・マガジンの紹介」に関する説明文が出題された。設問は「The Global Villageはどのようにして発足したか」(問23)、「なぜ特定の学生が編集アシスタントになったのか」(問24)、「この雑誌の最終目標は何か」(問25)といったものであった。読み上げられる速度が昨年よりも遅くなり、昨年のような2行にわたる選択肢がなくなってすべて1行になった。いずれの設問も、設問文に対応する箇所を正確に聴き取ることと、本文を巧みに言い換えている選択肢を見抜いて正答を選ぶことができるかがポイントであった。問23では、After hosting an international conference …の一文が対応箇所だが、正答の選択肢ではConference organizersやexchange ideasのように、本文の内容を踏まえて言い換えられていることに気づく必要があった。また各選択肢の主語がすべて異なっており、あらかじめ選択肢に目を通せたかどうかで正答率に差がついたと思われる。問24では、the assistant editor is a student with previous experience editing an online journalの部分が対応箇所だが、正答の選択肢では、The student had experience editing on the Web.と言い換えられている。問25では、Our eventual objective is to make world leaders aware of our concerns, especially those of young people.の一文が対応箇所だが、eventual objectiveが質問文ではultimate goalに言い換えられ、正答の選択肢4もmake world leaders … those of young peopleの部分がmake young people’s voices heardという<make+O+過去分詞>の形や、influential peopleに言い換えられていた。
    5.過去3ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

    年度 2008 2007 2006
    平均点
    29.45
    32.47
    36.25
    6.2010年度センター試験攻略のポイント

  • 2009年度は、2008年度と同様の形式・配点であったが、部分的な聴き取りで正答を導くのではなく、すべての情報から総合的に判断するといった、いわば聴解力と同時に思考力を要する設問が多かった。これは単に聴き取る力を見るだけでなく、聴き取った内容から総合的に判断するという、より実践的なリスニング力がついているかどうかを試そうとする出題意図によるものだと推測される。したがって今後の対策としては、常に「実践的な場でのリスニング」を想定し、英語で聴いて英語の質問に答える練習や、英文の書き取り(ディクテーション)・音読などを、日々の学習の中にできるだけ多く取り込んでおくことが必要であろう。
  • 2009年度は第1問・第2問で読み上げられる速度が速くなり、全体を通じて語と語の音の連結や脱落などがあって聴き取りづらく、状況・場面が把握しにくかったり、重要な部分の聴き取りが難しかったりする設問が多かった。日々の学習の中でナチュラルスピードで話される英文を聴く練習も今後は必要だと思われる。
  • 今後は、2回読みだけでなく1回読みの導入や効果音の利用など、より実用的な出題形式・内容の検討がなされる可能性がある。形式が急に変わっても対応できるよう、類題対策のみならず、基本表現の聴き分けから状況判断や要点理解に至るまで、本質的なリスニング力養成を行って、準備を万全にしておくとよいだろう。
  • 実戦的なセンター試験対策を行う時期には、解答に必要な語句を正確に聴き取るだけでなく、印刷されている質問文や選択肢にも事前に目を通し、すばやくそれらの意味を把握したうえで、どんな状況や場面の英文かを予測しながら聴き取る練習もしておきたい。正答に関わる箇所の英文が選択肢では言い換えられることが多いという傾向を熟知したうえで、解答の練習をする必要があるだろう。
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