問題講評
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英語筆記

1.総評

【2009年度センター試験の特徴】 

・一部の問題で出題形式の変更があったが、2007年、2008年に変更された形式はほぼ踏襲された。
・第1問Dで文中の強弱を問う新傾向の問題が出題された。
・全体として、昨年よりやや難化した。


 2009年度は、第1問Dで一文中の音の強弱を問う新傾向の問題が出題されるなど、いくつかの大問で部分的な形式変更があったが、昨年までのような大きな変更はなく、大問構成・配点はすべて昨年と同じであった。
 全体として、読む英文の量が引き続き増加し、すべての問題を読みきれなかった受験生もいたかもしれない。
2.全体概況

【大問数・解答数】 大問数は変更がなかったものの、解答数が昨年より1個減り、50となった。
【出題形式】 第1問Bのアクセント問題で多少の形式変更があった。また、Dで新傾向の問題が出題された。第2問Cの語句整序問題で多少の形式変更があった。第3問Bは一昨年のディスカッションでの発言を要約する形式に戻った。第4問〜第6問は昨年の形式がほぼ踏襲された。
【出題分野】 昨年同様、発音・アクセントから、読解、視覚情報を含む英文理解までの幅広い領域が問われており、多岐にわたるジャンル・形式の出題であった。
【問題量】 素材文の語数は第5問を中心に全体的に増加した。
【難易】 昨年よりやや難化。
3.大問構成

大問 出題分野・大問名 配点 難易 備考(使用素材・テーマなど)
第1問
発音・アクセント・強調の意図・文中の強弱
16点
標準
第2問
文法・語彙語法・会話・語句整序
44点
やや難
第3問
語句類推・発言要約・文補充
44点
標準
B「友人関係(友人の質と量)」
C「フェアトレード」
第4問
ビジュアル読解(図表・調査票)
36点
標準
A「熱帯雨林の保護」
B「病院の問診表」
第5問
イラストの説明
18点
やや難
A「マーチングバンドの指揮者」
B「橋の構造」
C「引っ越し中の不注意な出来事」
第6問
長文読解
42点
やや難
「辞書の使用目的の違い」
4.大問別分析

第1問「発音・アクセント・強調の意図・文中の強弱」

  • 昨年はA〜Cの構成であったが、2009年度はA〜Dの構成となった。
  • Aの発音問題は、母音の発音が1問、子音の発音が2問の出題であった。問1では第一アクセントのない母音の発音(comfortの-or-の部分の発音)が問われた。
  • Bのアクセント問題は、昨年は、音の強弱を黒丸の大小で提示し、それと同じ強勢型を持つ語を選ぶ形式だったが、2009年度は、与えられた語と第一アクセントの位置が同じ語を選ぶ形式になった。音節が示されていないため、与えられた語と選択肢の語の音節を対応させることが困難であった。単語は3音節、4音節からの出題であった。
  • Cの強調の意図を問う設問が昨年までの3問から1問に減った。昨年同様、それぞれの選択肢の意図の違いが明確であり、取り組みやすかったと思われる。
  • Dでは、一文中の音の強弱を問う新傾向の問題が出題された。取り組みながら、つい発音したくなるような出題であり、単語の発音・アクセントに加えて、普段から英文の読み方についても意識しておく必要があった。

    第2問「文法・語彙語法・会話・語句整序」

  • Aの空所補充問題では、問1の時制や、問2のremember 〜ingといった基礎的な文法事項を問う出題もあったが、ほとんどが語彙・語法の知識を問う出題であった。問10のIt runs in the family.「親譲りです。」という意味でのrun「(〜に)伝わる、遺伝する」の用法は難しかったと思われる。与えられた文には会話文も含まれ、英文の量が全体的に増加し、空所の前後の文脈が昨年に比べて詳しくなっていた。文脈に合う語句を選ばせる出題をより意識したと考えられるが、読む量が増えて、解答に時間がかかった受験生もいたのではないか。
  • Bの会話問題は、会話の流れや前後関係から空所に入れるべき内容を把握することに加え、問2ではI’ll tell you what.「いい考えがあります。」という口語表現や、問3ではI can’t agree with that.とI couldn’t agree more.という紛らわしい表現の違いがそれぞれ問われており、昨年に比べてやや難しかった。
  • Cの語句整序問題では、並べかえる文についての状況を説明する英文が先に与えられ、選択肢の数が昨年までの5つから6つに増えた。問3の仮定法過去完了における条件節のifを省略する場合の倒置がやや難しかったと思われるが、その他は標準的な問題であったと思われる。

    第3問「語句類推・発言要約・文補充」

  • Aの語句類推では、問1で与えられる文が会話文となった。問1が熟語表現(a real can of worms)、問2が単語(sporadic)からの出題という組合せは昨年と同様であった。
  • Bは、新聞記事に掲載された意見の要約文を選ぶ形式から、一昨年のディスカッションでの発言を要約する形式に戻った。「友人関係」という身近な話題であり、「量」と「質」の対比が明白で、発言の中で使われている語句も平易であったため、取り組みやすかった。
  • Cの文補充では、形式の変更はなかったものの、補充する内容が、一文と語句の両方のパターンが出題された。解答番号32では、第1段落から第2段落にかけて話題の橋渡しとなる一文を選ぶ設問が出題されたが、one small townやthis situationといった語句が何に対応するかを考えれば、正答を導ける問題であった。

    第4問「ビジュアル読解(図表・調査票)」

  • Aの図表読取問題では、「熱帯雨林の保護」に関する英文とグラフが出題された。問1は本文中のless than one percentと、正答選択肢4のnot even one percentの対応関係がポイントであった。問2は、本文の stronger rainforest protection laws at the beginning of this centuryと、「ブラジルの熱帯雨林の年間減少量」を示すグラフを参照して解く問題であった。正答選択肢2中のdeforestationという語がやや難しかったかもしれない。
  • Bでは昨年までの広告文ではなく、「病院の問診表」を読み取る問題が出題された。広告の文章ではなく、問診表の各項目のチェックや記入内容から読み取ればよいので、必要な情報をより検索しやすくなったと思われる。問2では、症状が見られた期間について問われたが、7月20日に始まり、7月26日までの「6日間」が答えになる単純な計算問題であり、複数の条件を考慮して計算しなければならなかった昨年の計算問題に比べると、取り組みやすくなった。

    第5問「イラストの説明」

  • Aは「マーチングバンドの指揮者」について、イラストにふさわしい文章を選ぶ問題であった。選択肢の総語数が150語以上増加した。
  • Bは「橋の構造」について説明した文章にふさわしいイラストを選ぶ問題であった。昨年の文章は、単純にイラストの内容を、形や位置関係を示す語句を使って説明していただけであったが、2009年度はmade up of multiple connected sectionsや、The size of the components in each section is small、 encloses the space above the roadway などの橋の構造の説明から、実際の橋の様子を想像しなければならなかった。
  • Cは「引っ越し中の不注意な出来事」を描写した4コマ漫画の内容としてふさわしい英文を選ぶ問題であった。昨年は1コマが英文1文と対応していたが、今年は各選択肢が5文ずつで書かれており、また、オチの部分はどの選択肢もほぼ共通していたため、それぞれの違いを判断するのがやや難しくなった。

    第6問「長文読解」

  • 素材文は「辞書の使用目的の違い」についての説明的なエッセイが出題された。辞書という受験生にとって非常に身近な話題であり、bilingual dictionary と monolingual dictionaryとの対比を意識し、それぞれの特徴を把握しながら読み進めればよかったので、読みやすかった。ただし、第5問までの総語数が増えていたため第6問に取り組む時間を十分に取れなかった受験生もいたであろう。
  • 問2では複数の段落が示され、それぞれの段落の内容を比較して、正答を選ぶ問題が出題された。
  • 問3では本文中に書かれた内容をもとに、本文にない具体例についてその条件に合うものを選ぶ問題が出題されたため、とまどった受験生もいたと思われる。
  • 問6の段落構成を問う出題は、昨年の一部の段落の構成を問う形式から、素材文すべての段落の構成を問う形式になった。対比に着眼して、(2)・(3)・(4)がbilingual dictionary、(5)・(6)・(7)が monolingual dictionaryの話だと気づければ正答を導くことができたであろう。
    5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

    年度 2008 2007 2006 2005 2004
    平均点
    125.26
    131.08
    127.52
    116.18
    130.11
    6.2010年度センター試験攻略のポイント

  • 2009年度は、昨年まで2年にわたって行われた形式変更の内容がほぼ踏襲されたが、今後も英語能力を正確に測ることを目指していくことと思われる。引き続き、どのように出題されても対応できるように、幅広い英語力を身につけさせておきたい。
  • 昨年までの発音・アクセント・強調の意図に加え、2009年度は文中の強弱についての問題が出題された。日ごろから、新出単語の発音・アクセントの練習や、教科書の音読などを通して、正しい英語のリズムを身につける音声学習を心がけたい。
  • 第2問Aでは与えられる文脈が詳しくなり、文脈をしっかり把握したうえで語句を選ばせる出題を意図したと推測される。語彙学習の際には、英和辞書で複数の意味やそれぞれの例文を確認したり、英英辞書を使ってその語の持つイメージを思い浮かべたりしながら習得する習慣をつけさせたい。また、口語表現についても、文法の基本事項とともに低学年からの定着を徹底させたい。
  • 出題形式が多様化し、長文化が進むセンター試験の問題に対応するためには、逐語読みや精読的な読み方だけでなく、必要な情報をピックアップしながら読んだり、段落ごとに大意を把握しながら読んだりして、短時間で効率よく読むスキルも身につけることが一層求められている。日ごろから様々なジャンル・テーマ・形式の英文に触れ、必要に応じて時間を計って英文を読み、その内容をまとめる演習などを積ませておきたい。
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