問題講評
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数学II

1.総評

【2009年度センター試験の特徴】 

・大問構成、配点ともに昨年と変更なし。
・昨年同様、問題量・計算量ともに多かった。
・第2問で微分法・積分法と図形と方程式、第3問で図形と方程式と三角関数が出題されるなど、融合問題がいくつか見られた。


 昨年同様、問題量・計算量が多く、60分以内で全問解答することはなかなか困難であった。各大問とも前半は基本的な問題であるが、後半は計算力、思考力を問う問題であった。また、第2問、第3問などで、入り口や設定の目新しい問題が見られた。
2.全体概況

【大問数・解答数】 昨年同様、大問数4ですべて必答。第1問、第2問は数学II・Bとの共通問題。
【出題形式】 例年通り。
【出題分野】 数学II全般からの幅広い出題であった。また、三角関数の出題が増え、図形と方程式は、第1問〔1〕、第2問、第3問に分散されて出題された。
【問題量】 昨年同様、問題量・計算量ともに多かった。
【難易】 昨年同様、難しい。
3.大問構成

大問 出題分野・大問名 配点 難易 備考(使用素材・テーマなど)
第1問
対数関数、三角関数
30点
やや難
〔1〕2変数で表された対数関数の最大値
〔2〕三角関数を含む方程式と角の大小関係
第2問
微分法・積分法、図形と方程式
30点
標準
軌跡としての放物線と面積
第3問
図形と方程式、三角関数
20点
やや難
円上を動く2点の内分点の軌跡
第4問
複素数と方程式
20点
やや難
3次方程式の解
4.大問別分析

第1問〔1〕「対数関数」

  • 対数関数のとりうる値の範囲と最大値の問題。
  • 前半のzをs、tで表すところまでは、対数の基礎知識を用いた基本的な問題。
  • 後半の2変数関数の最大値を求めるところは、領域における最大・最小を用いた解き方や式を変形していく解き方などがあるが、どちらの解法にせよ、自分で解法を選択し解き進めていく力が問われた。
  • 問題量・計算量はやや少なめである。対数の計算の確実な定着が求められた。

    第1問〔2〕「三角関数」

  • 三角関数で表された方程式の解と角の大小関係についての問題。
  • 前半は誘導に乗って、2次方程式に帰着し、三角関数の基礎知識を用いて解き進めていけばよい。
  • 後半の角の大小関係を求めるところは、目新しく難しい。具体的な角がわからないため、図をイメージして、問題文にあるように角の大小関係を考えていくが、何から考えていけばよいかがわかりにくく差がついたと思われる。単に定理・公式の暗記ではなく、三角関数の意味や本質を理解することが求められた。
  • 問題量・計算量は少なく、思考力が問われた問題である。

    第2問「微分法・積分法、図形と方程式」

  • 微分法・積分法と図形と方程式の融合問題。3次関数の最大・最小や面積を求めていくが、対称点や軌跡から始まるところが目新しい。
  • 誘導に乗れば流れは一本道で、基本的な知識を幅広く問うている。
  • 放物線や直線が複数出てくるため、丁寧に図をかいて、状況を把握することが必要である。
  • 軌跡としての放物線Dの方程式を求める部分、直線HRと放物線Dの交点のx座標を求める部分の計算ができるかで差がついたと思われる。
  • 問題量・計算量は、例年通り多く、最後まで解ききるには時間がかかる。

    第3問「図形と方程式、三角関数」

  • 図形と方程式、三角関数の融合問題。(1)では内分点の座標、三角関数の加法定理、cos(α−β)の値域を問うており、(2)は軌跡としての円に関する問題である。
  • 内分点の公式や、加法定理などの三角関数の公式を状況に応じて使いこなす力が問われた。また、後半の軌跡では1点を固定し、もう1点を動かすなどの思考力が問われた。
  • (1)において、−1≦cos(α−β)≦1となることに気づけるかどうかでまず差がついたと思われる。
  • 後半は誘導があるものの「固定する」ことの意味をとるのが難しかった。
  • 問題量・計算量は標準的であるが、α、βなど文字が多く出てくるので、やや煩雑である。

    第4問「複素数と方程式」

  • 多項式の割り算と解と係数の関係を用いる問題。1次式と2次式の積に因数分解し、2次方程式の解と係数の関係を用いて考えていく。
  • 因数定理、剰余の定理、解と係数の関係などが問われており、基本的な知識を状況に応じて使いこなす力が求められた。
  • 「余り2x−4」に「因数x−2」が含まれていることに気づくかが最初のポイント。見慣れない設定なので、戸惑った受験生もいたのではないか。
  • (2)の逆数の和を求める部分では、解答として要求されている形まで式を変形することが難しい。上手く式変形を進めていかなくてはならない。
  • 問題量・計算量はやや多く、効率よく工夫して式変形を行い、処理していく力が求められた。
    5.過去5ヵ年の平均点(大学入試センター公表値)

    年度 2008 2007 2006 2005 2004
    平均点
    30.25
    30.73
    35.67
    39.52
    32.94
    6.2010年度センター試験攻略のポイント

  • 解答時間に対して問題量・計算量が多いので、日ごろの演習で計算力を鍛えておきたい。時間を測って問題を解く練習も大切である。また、計算力だけでなく、複数の解法を身につけて効率よく解けるようにしておきたい。
  • 今年度は複数の分野の知識を活用しなければ解けない問題が多く出題された。問題演習に多く取り組み、幅広く問題にあたることで、解答に何を用いるかをすばやく判断できるようにしておきたい。
  • 図を用いて考える問題が多く、自分で図をかいて考えていく必要がある。日ごろから図をかいて問題を解く習慣をつけておきたい。
  • 一部ではかなり難しい問題も出題されるので、教科書等で基本事項をおさえた上でレベルの高い問題にも取り組み、うまく誘導に乗る力を磨く必要がある。与えられた条件や前設問をうまく使うことを意識して問題に取り組みたい。
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