問題講評要約
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科目 分析内容
国語
― 全大問で問題文分量が増加し、時間との勝負に。全体としてやや難化 ―
大問構成・配点に変更なし。今年度はすべての大問で問題文の字数が増加したことが特徴。設問そのものは、おおむねオーソドックスな出題であったが、一部で選択肢が紛らわしいものや難度の高いものが見られた。そのため、限られた時間の中では、うまく正答が選べなかった受験生も多かったであろう。全体としてはやや難化。
数学I・A
― 出題形式、出題分野ともに昨年と大きな変化なし ―
大問数や配点、分野構成においては昨年と大きな変化は見られず、数学Aの配点も昨年同様高かった。典型的な問題が出題され、第3問では参考図が挿入された。また、昨年に比べ計算量が減ったこともあり、今年も取り組みやすい内容となっている。絶対値の問題は今年も出題されなかった。
数学I
― 形式・問題量ともに昨年と大きな変化なし。一部、問い方の目新しい問題が出題 ―
大問構成や配点、出題分野、数学I・Aとの共通問題は昨年と変更なし。問題量や難易は昨年と同程度であるが、平面の図形に参考図が挿入されるなど、取り組みやすい内容であった。第4問では、分数や無理数の整数部分を玉の数で求めさせるなど、問い方の目新しい問題が出題された。
数学II・B
― 問題量、計算量が多い傾向は変わらず ―
大問構成、配点ともに昨年と変更なし。昨年同様、全体的に問題量、計算量ともに多く、限られた時間内で正確に処理する力が求められる傾向は定着してきたといえる。難易は昨年並。第2問で「微分法・積分法」と「図形と方程式」が分野融合問題として出題されていた。また、第4問「ベクトル」では3年連続で空間ベクトルが出題され、この分野への対応力も求められた。
数学II
― 例年通り、問題量・計算量ともに多い ―
大問構成、配点ともに昨年と変更なし。昨年同様、全体的に問題量、計算量ともに多く、数学II・Bと同様、限られた時間内で正確に処理する力が求められる傾向は定着してきたといえる。難易は昨年並。昨年よりも融合色が強まり、また第2問、第3問などで問題の入り口や設定が目新しい問題が見られた。
英語
(筆記)
― 一部の問題で出題形式に変更があったが、昨年までの変更がほぼ踏襲された ―
第1問Dで一文中の音の強弱を問う新傾向の問題が出題されるなど、いくつかの大問で部分的な形式変更があったが、昨年までのような大きな変更はなく、大問構成・配点はすべて昨年と同じであった。2007年、2008年に行われた変更はほぼそのまま踏襲された。全体として、読む英文の量が引き続き増加し、難易は昨年よりやや難化した。
英語
(リスニング)
― 大問構成・出題形式はほぼ昨年通り ―
大問数・解答数・配点とも、2008年度とまったく同じであった。読まれる英文の総語数は1110語で、分量としては昨年とほぼ同じであった。読み上げられる速度は、第1問・第2問では昨年より速くなったが、全体としては昨年(約160語/分(約160wpm))とほぼ同じであった。難易に関しては、第1問・第2問を中心に聴き取りづらい設問が増え、情報の更新や本文の言い換え表現など聴き取りに注意を要する設問も多かったため、全体として昨年よりやや難化した。
世界史B
― 時代縦断的に、周辺地域を含めた幅広い出題。事項の時期・地域の正確な理解が要求される ―
時代縦断的、地域横断的に幅広く扱う傾向が踏襲された。地域は、アフリカ、オセアニア、北欧、東南アジアなどの周辺地域に特化した出題、1設問中で幅広い地域を扱う傾向が昨年に続いて多く見られた。分野のバランスは例年並だが、社会史的な観点や「接触と交流」を反映した大問のテーマに即した出題が例年より増加し、その設問中で融合的に扱う傾向が顕著であった。難易は昨年よりやや易化した。
日本史B
― 外交史が増加。選択肢の文章量が増加し、正確な判断が求められた ―
大問数や解答数は変化なし。現行課程で重視されている「主題学習による歴史的考察」の要素を反映した地方行政区画の歴史的変遷をテーマとする問題がみられた。図版や史料が多用され、史資料の読み取り問題も出題された。分野別では、昨年と同様に政治史に比重がおかれたが、一方で外交史の出題割合が増加しており、近年は増加傾向にある。語句組合せ問題が減少し、2行の文章選択問題が増加したことや、年代整序問題がすべて6択で出題されたことなどから昨年より難化した。
地理B
― 資料読解重視の傾向は変わらず、大問の配列と配点が変更された ―
大問数は6、解答数は昨年より1個増えて37。第2問が1設問を除き地理Aとの共通問題であった。大問の配点が変更され、昨年とは逆の傾向で前半の大問で配点が高く、後半で低くなった。内容面では、昨年と同様に資料が多く利用され、地理的技能が求められた。また、やや細かい知識を求める問題や、解答を絞り込みにくい問題が散見されたことを受け、難易は昨年に比べるとやや難化した。
現代社会
― 分野融合的に出題され、国際分野は減少。6択・8択の組合せ問題が増加 ―
大問数6、解答数36は昨年同様。第2問では経済分野と政治分野、第5問では国際経済・国際政治・国際化などが融合的に出題された。国際分野の出題が昨年より減少した一方、環境、青年期、課題追究(調べ学習)など各分野からバランスよく問われた。形式面では、6択や8択の組合せ問題が昨年より増加。教科書・資料集レベルで学習できていれば対応可能な問題が多く、難易は昨年並。
倫理
― 資料問題が増加し、読解力が求められる ―
大問構成や出題分野、解答数などは昨年と同じ。基本事項を中心に内容理解や思考力を求める設問が多く、日ごろの学習成果が表れる出題であった。現代の諸課題については近年出題のなかった生命倫理からの出題が見られた。文章資料の読み取りを求める問題が昨年の3問から6問に増加したほか、昨年同様時事的な出題も見られた。難易は昨年よりやや易化。
政治・経済
― 正確な知識と思考力を必要とする標準的な問題 ―
大問数は5、解答数は38と昨年から変更なし。多角的・総合的視点のリード文という傾向は、昨年から変更がなかった。大問構成は、国際政治分野と国際経済分野の融合問題が1大問、政治が2大問、経済が2大問出題された。基礎的かつ重要な事項が知識として定着しているかどうかを問う出題を中心に、資料読解や計算問題など応用力も求められた。きちんと学習を積み上げてきた受験生にとっては高得点が期待できる出題で、難易は昨年より易化。
物理I
― 全分野からバランスよく出題。気体の状態変化が現行課程ではじめて出題された ―
大問数は4で昨年と同様。解答数は24で2個減少した。例年と同様、全分野からバランスよく出題された。グラフ選択問題や4択の問題が出題されなかったなど、形式面で大きな変更がみられた。内容面では、オーソドックスな素材を用いながら、見慣れない考え方や答え方を求められる問題が目立った。また、観測者が動く場合のドップラー効果など、教科書の発展項目からも出題された。難易は昨年並。
化学I
― グラフ選択問題が出題されなかった。8択の正誤組合せ問題は今年も出題されず ―
大問数は4で昨年と同様。解答数は28で1個減少した。例年と同様、全分野からバランスよく出題された。形式面では、昨年増加した計算問題が減少し、文章選択問題が増加した。内容面では、昨年に引き続き、身の回りの化学に関する出題があった。全体的に、融合問題を減らし、内容を単純化して問うた典型的な出題が多く、標準的な知識や思考力が問われた。難易は昨年より易化。
生物I
― 大問数、大問分野ともに昨年から変更なし。実験考察問題の割合が増加 ―
大問数は5で昨年と同様。解答数は28で4個減少した。全分野からまんべんなく出題された。実験考察問題の割合が増加し、知識問題と半々になった。実験考察問題は複数の実験条件と結果から情報を正確に読み取る必要があり、時間のかかる内容であった。知識問題は基本的な内容だが、複数の項目にわたる正確な知識が求められた。2007年度の教科書改訂で充実した内容の出題があった。難易は昨年並。
地学I
― 大問数、大問分野ともに昨年と同様。難易は昨年より難化 ―
大問数は5、解答数は30で、大問配点も含めてすべて昨年と同様。形式面では、6択以上の問題や組合せの問題が増加した。一方、図・グラフの選択問題は減少したが、図・グラフを正確に読み取る力を必要とする問題については例年通りに出題された。大問が細かい中問に分かれて出題されており、全範囲の幅広い知識を身につけていることが求められた。難易は昨年より難化。
理科総合A
― 知識問題と科学的思考力を必要とする問題が、バランスよく出題された ―
大問数は5、解答数は26で、いずれも昨年と同様。各分野から幅広く出題され、理科総合Aにおける選択学習項目である「酸化・還元」も、昨年に引き続き出題された。実験を取り上げた問題では、受験生にとって身近な題材が目立った。また、グラフを扱った問題では、与えられたグラフに書き込むことが、解答に必要な情報を読み取るために効果的であった。難易は昨年より易化。
理科総合B
― 実験・観察やデータの読み取りなど、科学的思考力が問われた ―
大問数は4で昨年と同じ、解答数は昨年より1個増加して28個であった。生物分野と地学分野の融合を意識した総合的な問題が出題されており、題材や出題形式にも工夫がみられた。また、実験・観察の結果の解釈や、資料の読み取りを要する出題が昨年と同様に目立ち、全体を通して科学的な思考力が求められた出題であった。難易は昨年並。